限界を突破する4つのステップ 「目標が持てない時代」のキャリアデザイン 』(片岡裕司、阿由葉隆、北村祐三 著、日本経済新聞出版)では、激変したいまの時代を、目標が消える・持てない「目標喪失時代」と表現しています。

「目標喪失時代」といわれるとネガティブなイメージを持ちたくもなりますが、決して悪いことばかりではないようです。

その本質は、社会が規定し、私たちが「当たり前」と考えていた目標がどんどん失われる代わりに、新しい目標を自分自身で生み出せる時代に変わるということ。

もちろん目標を失うのはショッキングなことですが、それは「目標を失った先にいる、想像すらしなかった新しい自分と出会えるチャンス」でもあるということ。

ただし、そのチャンスを活かすには、新たな目標を生み出す方法論が必要。そこで本書では、時代を切り拓く新しいキャリアデザインの方法論を明らかにしているのです。

なお、目標喪失時代のキャリアデザインにおいては、プロセスのなかで次々と目標を生み出していくことになるそう。そして、目標を生み出す土壌としてもっとも重要になるのが、キャリアの目的(パーパス)を育むこと。

具体的には、

【目標喪失時代のキャリアデザインの4ステップ】

[ステップ1] キャリアの目的(パーパス)を育てる

[ステップ2] 体質改善に取り組む

[ステップ3] 目標をたくさんつくる

[ステップ4] キャリアを楽しく実践する(「はじめに」より)

これら4つを循環させることで、目標を次々と生み出し、現時点では思いもつかないような、想像以上の自分になれるというのです。

4つのステップを確認してみることにしましょう。

[ステップ1]キャリアの目的(パーパス)を育てる

このステップのポイントは、目的を決めるのではなく、「育てる」ということばを使っていること。

通常、キャリアの「目標」は「私は〜になりたい」「私は〜になるぞ」というような表現で表されます。英語でいうと「becoming」であり、「現在はAという状態ではなく、今後の努力を通じてAになっていくぞ」という構図。

これに対して「目的」は、「私はいつも〜でありたい」「私は〜な存在でありたい」といった表現で表されます。英語で表現すると「being」で、現在Bという状態で、未来もBという状態であり続けたいという構図です。(54ページより)

キャリアの目的を大切にしつつ、目標をたくさん展開することにチャレンジするのが目標喪失時代のキャリアデザイン。一度決めたら決してブレないようにするのではなく、どんどん変えていく。その過程で目的が育ってきていると信じる。

最終的に、いろいろな経験を通じ、自分らしいキャリアの目的が完成するということ。そこで、ここでは「目的を育てる」といういいかたをしているわけです。(54ページより)

[ステップ2]体質改善に取り組む

このステップで改善するのは、「ネットワーカー体質」「成長体質」

ネットワーカー体質とは、つながりをどんどん広げていくというもの。たとえば、毎月、毎週、毎日、新しい人、出会いたい人に出会っていくという行動パターンを自分に定着させていくことがそれにあたるようです。

対する成長体質は、なにか新しいことに取り組み続けることや、自分が初心者あるいは入門者の立ち位置になれる場を持ち続けるというもの。

なにかを自分で読んだり、工夫したり、努力しながら上手になっていくサイクルを人生に埋め込むわけです(もちろん、仕事と関係ないことでもOK)。

長期のキャリア開発においては、偶発性の確率が高まっていく駆動を自然に積み上げていけるように、日常の行動レベルを刷新する「体質改善」が重要になるということです。(55ページより)

[ステップ3]目標をたくさんつくる

目標は1つに絞り込んだほうが集中できるという考え方もあるでしょうが、ここでいう目標は、一般的なキャリアデザインにおける目標とは少し違うのだとか。著者はそれを、「目標のたまごのようなもの」と表現しています。

[ステップ1]でキャリアの軸になる「目的」を考え、[ステップ2]で体質改善に取り組み、自分のネットワークやつながる世界を増やしていくのに続き、ここでは「ちょっとやってみよう」という目標、テーマをたくさんつくっていくということ。

しかも、「挑戦しよう!」と大上段に構えるのではなく、「実験」「お試し」といった感覚でクイックに実践してみることが大切だそうです。(56ページより)

[ステップ4]キャリアを楽しく実践する

そしてこの最終ステップは、決めた目標のお試しを少し実践してみる段階。さまざまな実験を通じて可能性を広げていき、自分にとってその目標に意味があるのかを判断するステップになるということです。

ただし、できるまでがんばる必要はなし。実験が終われば、そのテーマが自分に合うか合わないかがわかることになります。また、キャリアの目的に修正がかかったり、新たな体質改善法が見つかったりすることもあるでしょう。

こうしたことを繰り返しながら、「自分のライフテーマ」だと思えるものが見つかり、1つの大きな目標が見つかったとします。

この場合の目標と、たくさんつくる目標をもし分けるとすれば、たくさんつくる[ステップ3]の目標は「目標(たまご)」で、自分のライフテーマに育った目標は「目標(にわとり)」となります。

ただ通常であれば、目標(にわとり)が見つかれば、目標(たまご)の探索は終了しそうですが、目標喪失時代のキャリアデザインでは、適切な実験を繰り返しながら、新たな自分の目標(たまご)を育てると共に、キャリアの目的(パーパス)を育んでいくことも続けていくことになります。(57〜58ページより)

つまり重要なのは、体質改善、広げ続ける行為をやめないこと。それが、いままでのキャリアデザインとは大きく異なる点だということです。(57ページより)

大切なのは、社会が用意したレールではなく、自ら新しいレールをつくり出し、走っていける力を身につけること。著者によればそれは、激変の時代を味方につける方法だそうです。本書を参考にしながら、そんな力を身につけるべきかもしれません。

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Source: 日本経済新聞出版