社長も社員も給料が安すぎる

2021年10月の総選挙は、実につまらない選挙だった。岸田文雄首相は、自民党総裁になったあと「分配と成長の好循環」を目指すと表明し、他の政党も選挙前に「消費税を5%に下げる」「10万円を配る」など、「分配」政策ばかりを掲げた。

しかし、日本は新たな分配政策を打つまでもない。そもそも日本は、稀に見る“分配が行き届いた国”だからだ。上位1%世帯の資産が全体に占める割合は、日本はG7のなかで最も小さい。

アメリカは上位1%の金持ちが、国民全体の約40%にあたる資産を所有しているのだから、腰が抜けるほどの格差がある。それに対して、日本は約10%でしかない。特に2010年代は、日本の所得格差を示すジニ係数と相対的貧困率はともに下がり、所得格差は縮小傾向にある。

日本の資産家は、ブルームバーグによれば、現在1位がキーエンス創業者の滝崎武光氏、2位がファーストリテイリングの柳井正氏、3位が孫正義氏だ。滝崎さんの個人資産は4兆円強、柳井さんが4兆円弱、孫さんが約3兆円と言われるが、世界的に見れば大資産家というほどではない。アマゾンのジェフ・ベゾス氏やテスラのイーロン・マスク氏は20兆円以上の資産があるから、5倍以上の開きがある。