新しいことを学ぼうとする時は、インターネット検索だけでは十分とは言えません。

価値ある記事は、マーケティング目的のブログ記事に埋もれてしまっていて、見つけ出すことはまったく不可能な状態でした。

企業が運営するブログは、得てして内容が薄く、SEOに焦点が置かれ、隠された宣伝の意図があるものです。

信頼性が高く、濃い情報をどう見つける?

ということで、新しい知識を身につけるなら、まずはネット検索からもう一段掘り下げてみましょう。あなたが持つ人的ネットワークの中で、学びたい分野に精通している人を探し、その人に連絡を取るのです。

これが、「スパイラル・メソッド」と私が名付けた方法の最初のステップになります。

スパイラル・メソッドは、15~20人の専門知識を持つ人と対面で対話をし、そのセッションの過程で、より深い知識を次第に身につけていくというやり方です。

このメソッドのミソは、「Google検索から完全に離れるわけではない」という点です。

学ぶ上で自分の座標となる主要な知識を身につけたら、Googleを知識の補完用ツールとして使い、対人のセッションで得た情報にさらに磨きをかけていくのです。

では、スパイラル・メソッドで知識を身につける仕組みを説明しましょう。

スパイラル・メソッドの5つのステップ

ステップ1:学びたいトピックを見定め、自分の人的ネットワークの中で知識のある人に声をかける。

「自分が学びたいトピックはこれだ」と特定できたら、Googleではなく、知り合いのグループか、LinkedInに向かいましょう。

そのトピックについて自分より詳しい人が、個人的な知り合いの中で50人は見つかる可能性があります(もちろん、これに、知り合いの知り合いを加えれば、5000人ほどに広がるはずです)。

その分野に精通している人を数人、特定できたなら、それらの人たちに連絡を取ります。

「私には学びたい分野があり、それについてあなたと話がしたいと思っています。短時間でかまわないのでお願いできますか?」と頼んでみましょう。

ステップ2:最初のセッションでは、知識の概要を知ることに集中する。

ステップ1で連絡を取った人物との最初のセッションの主な目的は、スパイラル・メソッドで今後掘り下げていく主要な概念を知ることです。

あなたの目標は、より賢くなり、情報を身につけることです。最初のセッションでは、すべての内容が頭に入らないかもしれません。それでも心配は無用です。

最初からすべての情報を消化することが目標ではないからです。

私の場合、音声テキスト変換に関する最初のセッションでは、「単語誤り率(Word Error Rate:WER)」という概念に初めて触れることができました。

これは、機械翻訳の質を評価する際の主要な指標です。こうした概念を知ったことで、より知識を身につけた状態で、2回目以降のセッションに臨むことができました。

ステップ3:セッションの話し手に、ほかに話を聞くべき人を紹介してもらう。

これは、あらゆる人脈作りのプロセスに当てはまる話ですが、スパイラル・メソッドも、ある人とのコネクションを足がかりに、多くの人と関係を作ることが肝要です。

セッション中の会話の自然な流れで、ほかの人の名前が出てくることがあるはずです。

話をしてくれている相手に失礼にならないように気をつけながら、そうした人への紹介をお願いしてみましょう。ためらう必要はありません。

ステップ4:15~20人の専門家と話をするまで、このプロセスを繰り返す。

次のセッションまでの時間を利用して、Googleを活用し、前のセッションで学んだ概念についてさらなる知識を身につけましょう。

私の場合、単語誤り率という概念を知ったあとは、この用語に絞った検索を行い、その仕組みや、「良い」結果を判定するために必要な要素などについて学びました。

さらに、音声テキスト変換技術に関して、当時主要な概念とされていた「音響モデル(acoustic model)」などについても、同じように検索を利用して理解を深めました。

当初の知り合いには、業界の専門家は含まれていないことが多いでしょう。でも、セッションを重ねる中で、本当に詳しい専門家にたどり着くことができるはずです。

そのころには、あなたも主要な専門用語や課題、市場認識について、かなり詳しく理解できているでしょう。そうなれば、専門家の人たちとも、より突っ込んだ会話ができます。

インターネットを使った独学では得られない、専門家から対面で学べることの1つが、市場や、学ぶ対象となっている技術の方向性に関する情報です。

インターネットで調べられる情報には、過去、現在、そしてあらゆる未来の選択肢に関する情報が混在しています。

しかし、その分野に精通している専門家であれば、現在その分野が向かっている方向がわかっているはずです。専門家といえども、その視点は主観的なものではありますが、そこから全体的な方向性を察知することができるでしょう。

ステップ5:各セッションでどれだけ新しい情報を身につけたかを振り返り、学習の進み具合を検証する。

順調に学習が進むと、セッションを重ねるごとに、新しく身につく知識の割合は自然と減っていきます。

5回目のセッションあたりでは、話題の6割ほどは初めて聞くもので、残りの4割については、それまでに身につけた知識をもとに会話ができる状況でしょう。

私の音声テキスト変換に関するスパイラルでは、15回目のセッションのあたりで、話題のうち新しい情報が占める割合が2割、あとの8割はすでに知っている概念になりました。

20回目のセッションになると、新しく知った知識はゼロになりました。

21回目のセッションでも同じように感じられたところで、専門家ではないレベルとしては、学べることをすべて学んだと悟りました。

このテーマについて、学位を得る手前の範囲で、行けるところまで行ったわけです。この時には、自分たちが向かうべき目標、そしてこのケースでは一番大切な、目標を実現するために雇うべき人が、私にははっきりと見えていました。

スパイラル・メソッドを成功に導くために心がけたい4つのポイント

スパイラル・メソッドでは、そこで得られる知識と同じくらい、セッションを「どう実施するか」が重要です。

このメソッドは、周囲の人、それもたくさんの人にお願いを聞き入れてもらうことで成り立っています。そのため、スパイラルの成否は、相手に敬意を払い、プロとして尊重するアプローチをとれるかどうかにかかっています。

1:相手に貴重な時間を割いてもらっていることを意識する(セッションは短時間に抑える)。

情報収集のためのセッションは、どんなに長くても30分までとすべきです。

15~20回のセッションで徐々に知識を身につけることを頭に置き、1回のセッションで新しいことをいくつか学べればよしとしましょう。

これにより、各セッションで顔を合わせた人たちとのつながりを維持できる、適切な距離感を保てます。

2. 具体的で意味のある質問をする。

私の場合は、「音声テキスト変換技術について教えてくれませんか」といったざっくりとした質問を投げかけるのではなく、相手が詳しい知識を持つ事柄について、具体的な質問をしました。

最近になって、起業家からアドバイスを求められる機会が増えました。そうした時に、私の専門知識の範囲内にある質問をもらえば、その後の会話も内容の濃いものになります。

一方、私の仕事上の経験とかけ離れた質問を受けた場合は、相手が前もって私のことを調べていないことが明白になり、そのあとの会話は時間の無駄のように思えてしまいます。

3. 礼儀を忘れず、感謝の念を示す。

「ありがとうございます」と感謝を示し、お礼のメッセージを送りましょう。そうするのが適切だと思えるなら、プレゼントを贈ることを考えても良いでしょう。感謝の気持ちを表せば、相手、特に、あなたの依頼に応えてくれた人たちは、あなたに対してポジティブな印象を抱き、その印象は長く残るでしょう。

このプロセスを終えたところで、あなたは以下のような大きな成果を手に入れているはずです。

  • 新たなトピックへの深い知識を得る
  • 賢明で知識に基づいたビジネス上の判断が可能になる
  • 必要な知識を持つプロフェッショナルとの人脈が強化される

ここで大切なのは、あなたがほかの人から得た恩を、ほかの人に親切にすることで返すことです。かなり遠いツテを頼りに連絡を取ってきた人の依頼にも、きちんと対応しましょう。

相手を見て、「自分がスパイラル・メソッドを成功させた時と同じだ」と思ったら、彼らのメソッドにも手を貸してあげるべきです。人類の進歩は、助け合いと、つながり合う無数のスパイラルを通じて成し遂げられたものなのですから。

4:仕事以外の場でも、積極的にスパイラル・メソッドを使う。

私は仕事だけでなく、個人的なプロジェクトにも、このスパイラル・メソッドを活用してきました。

例えば、Gongを立ち上げる以前の私は、地元に新たな公立小学校を開校するプロジェクトに関わっていました。

ほかの保護者と一緒にグループを結成し、この学校の指導方針がより21世紀に合ったものになるよう働きかけたいと考えたのです。

しかし、私たちは公的教育について何の知識もありませんでした。

そこで、まずは教師、さらには学校の校長、教育行政に関わる職員、学術界の専門家と、段階を踏んでさまざまな立場の人に話を聞きました。

これらの人たちの話から、私たちは、この地域には問題解決型学習(PBL)が適切な教育法だという結論にたどり着きました。

そして、市当局に働きかけて、この方針をとるよう導くことができました。

行政に影響を及ぼすことができたのは、当初は何の知識もなかったトピックについて、専門知識を身につける能力があったおかげです。

ですから、次に新たなトピックやアイデアに関心を持ったら、インターネットでのリサーチだけに頼るのではなく、このスパイラル・メソッドを試してみてください。

自分でも驚くような成果が生まれるかもしれませんよ。


Originally published by Fast Company [原文

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