今のビジネスパーソンはみな多忙です。特にこの時期、年末は仕事で自分を追い込み、正月は普段と違う生活リズムや食生活で逆に疲れてしまったというのもよく聞く話です。

「睡眠負債」という言葉がありますが、もっと広い意味でいえば、「疲れ」そのものが自分の体の負債といえるのではないでしょうか。

ためればためるほど利息がついて体の状態はより悪化し、栄養ドリンクでごまかして自転車操業。気づけばどうしようもないほど悪化してしまって手のほどこしようがなくなってしまっている…。

そんなことにならないよう、本特集では、疲労という負債をためこまないマネジメント術についてご紹介します。

日常的な食べ過ぎで疲れた体を休ませる「空腹の力」に着目した第3回。今回は後編として空腹マネジメントをして「16時間断食」実践編をお届けします。

どうしてもお腹が空いたときに口にすると良いものや、空腹時間をさらに効果的にするためのコツなど、初心者から断食経験者まで要チェックのヒントが満載です!

▶︎前編はこちら

疲れた体をリセットする「空腹マネジメント」の驚きの力とは? | ライフハッカー[日本版]

疲れた体をリセットする「空腹マネジメント」の驚きの力とは? | ライフハッカー[日本版]


青木 厚(あおき・あつし)

医学博士。あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長。自治医科大学附属さいたま医療センター内分泌代謝科などを経て、2015年、青木内科・リハビリテーション科(2019年に現名称に)を開設。糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病が専門。著書『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)がある。

まずは週1スタート、短時間でもOK

ウィークリースケジュール

青木先生が提唱する、空腹の力を活用し、食べ過ぎて疲れた体を休める食事法「16時間断食」。

忙しい日々の中でルーティンに組み込み、毎日フル稼働している胃腸や肝臓を休め、疲れた体をリセット、体質改善するためには、どう実践していけばいいでしょうか。

空腹の効用(前編参照)はよく理解できたものの、毎日の食生活をガラリと変えて、いきなり毎日16時間断食をするのはハードルが高い…。そんな方はまず週1からはじめてみましょう。

断食を取り入れる頻度は、もちろん毎日が理想ですが、週1でも大丈夫。16時間断食が難しければ最初は12時間などから、できる範囲からのスタートでOKですよ。

時間の長さや頻度はできるかぎりハードルを低く設定しましょう。

例えば、土曜や日曜など週末に朝寝坊してしまった、そんなときこそ「空腹マネジメント」チャンス。いつもより長い睡眠時間をうまく利用し、起きている空腹の時間を短くすれば、意外と16時間は無理なく生み出せるのかもしれません。

青木先生がオススメする働く世代向けモデルスケジュールは以下の2パターン

まずはこれをベースに出社 or リモートワーク、その日の仕事内容などに応じて継続しやすいパターンを模索していくのが良さそうです。

モデルスケジュール1:働き世代の基本形(朝食抜き)

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資料提供:青木 厚

モデルスケジュール2:働き世代の応用形(昼食抜き)

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資料提供:青木 厚

さらに「体内時計に合致した16時間断食はもっと効果的」なのだとか。簡潔にいうと「活動量の多い昼間に食事をとり、休息に入る夜間は食べるのを控える」だけ。

先生の患者さんにもこのリズムをうまく活用し、効果が出ている方がいるのだとか。

腎臓が悪く透析間近だった50歳の男性の患者さん。14時以降に食べないようにしたところ、みるみる数値が良くなり、私自身びっくりしています。

患者さんを見ていると、体内時計にあわせて16時間断食を行なう効果の高さを実感します。

私の1日のスケジュールでは、だいたい食事時間は13時〜21時の間。これでは少し遅いと感じています。理想の食事時間は8時〜16時、16時くらいまでには食べ終われたらいいですね。

16時間の間にどうしてもお腹が減ったら?

ナッツをつまむ

スケジュールの立て方のコツや生活に取り入れるイメージが掴めてきたところで次に気になるのが「どうしてもお腹が減ってガマンできない!」というときの対処法も聞きました。

断食中の16時間でも、もしお腹が減ったらナッツを食べてください。

なぜナッツなのかというと、1週間に7回以上ナッツを食べる人はまったく食べない人と比較して20%以上死亡率が減少するという結果が出ており、ほかにも健康にとって良いエビデンスがたくさんあるから。

もちろん、ナッツを食べたら空腹ではなくなります。

体はケトン体代謝ではなくブドウ糖代謝に戻ってしまいますが、それでいいんですよ。

まずは空腹に慣れるのが大事。きついルールで縛ったりせず、垣根は低くしておいてください。

16時間断食を取り入れて1カ月くらいで空腹に耐えられるようになってくると思います。

ちなみにナッツは無塩の素焼きを推奨、種類は好みのものでOK、一回に食べる量は手のひら一杯分28g程度がオススメとのこと。カリッとした食感で食べ応えがあり、少量で空腹感を和らげてくれるだけでなく、良質な油や、食物繊維が取れるので空腹のお供にはぴったりです。

ナッツが苦手な方は、生野菜サラダチーズヨーグルトゼロカロリーの飲み物でも代替可能とのことで、自分の好みに合うものを用意しておくと安心です。

ちなみに16時間断食をすると栄養不足になるのでは…と若干不安がよぎりましたが、先生曰く今の時代日本で栄養失調になることはないでしょう、とのこと。

ちなみに空腹以外の8時間はしばりなく普段通りの食事で問題ないそうで、このあたりは自分の体と相談しながら食事をとっていきましょう。

16時間断食のデメリットとその対処法

メリットばかりの16時間断食には、実はひとつだけデメリットがあります。それが筋力の低下

前編でお伝えした通り、空腹の時間を長く設けることで、体は脂肪だけでなく筋肉も燃やしてエネルギーに変換してしまいます。その結果、筋肉量が落ちてしまうため、そこを補うトレーニングが必要なのだとか。

青木先生曰く、特別なことを行なう必要はなく、階段の上り下りを意識して行ない、腕立て、腹筋やスクワットをできる範囲だけやる、といった程度で十分だそう。これもポイントは無理なく取り組めること。

毎日過酷な筋トレメニューをルール化したりすると続かないからと、青木先生自身は、腹筋と腕立てをそれぞれ朝晩1分間ずつ。1分で自分を極限まで追い込んで実践しているそう。

「1分でも集中してやれば、だいたい30回くらいできますよ」とさすがのコメント。最近はそれにプラスして懸垂もはじめたのだとか。

また16時間断食や、筋トレをすることにより「健康的で引き締まった体型」となり、この体型を維持したいということがモチベーションになり、長年継続できていると言います。

多忙な方は、このように短時間集中型で、どこでもできることから意識的に「筋トレ」を取り組んでみるのも良さそうですね。

継続は力なり。ストレスのないスモールステップから

腹筋

著書でも、とにかく継続することの大切さを説く青木先生。最後にこんなアドバイスをしてくださいました。

あらゆる健康法が続かなくなるのは、無理があるから…辛いから…失敗すると。

だからこそ、最初は12時間断食を週に1度。そこから少しずつ時間を伸ばして、頻度を変えていくと始めやすいと思います。

日によって感じ方は違いますからね、食べなくても平気な日もあるし、お腹が減ってダメだな、というときはとにかくナッツを食べてください。

体質改善もダイエットも、少しずつ成功体験を積んでいくことが大切です。「今日だめだったな、あはは」でOK。 厳しいルールでは絶対続きませんよ。

個人的には空腹明けのドカ食いを心配していましたが、続けるほどにそうした衝動も自然となくなっていくそう。

断食やダイエットと聞くとどれも「キツイ」「我慢」とネガティブなワードを連想しがちですが、自然に体が順応していき、無理なく取り組める人が多いようです。

また、仮に途中で食べてしまったときも落ち込んだりする必要はありません。気負わずにストレスなく、自分のペースで取り入れてみて、良いと感じたらもう少し本格的に空腹の力を借りてみてはいかがでしょうか。

2回にわたって空腹の力についてお届けしてきましたが、まず手始めとして、次の食事の時間前に「お腹が空いているかどうか」を冷静に観察してみるのもひとつかも。お腹が空いたら食べることを実践するだけでも体の変化は感じられるかもしれません。

自分の体に耳を傾け、ときには無理なく空腹の力を活用して健康をマネジメントしていきましょう。

▶︎前編はこちら

疲れた体をリセットする「空腹マネジメント」の驚きの力とは? | ライフハッカー[日本版]

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Source:「空腹」こそ最強のクスリ

Image: Shutterstock