朝起き上がれないほどの慢性疲労や、万病のもととして注目される「副腎疲労アドレナル・ファティーグ)」。

前編に続き、後編では、副腎を疲れさせる習慣や食事、その解決策をピックアップ。忙しくてもはじめられる副腎ケアをご紹介します。

おすすめはグルテンフリー、カゼインフリー、シュガーフリー

副腎ケアは生活習慣の見直しから。前編の診断テストで副腎疲労の度合いが高かった人は、まず食生活から改善してほしいと本間先生は話します。

「食べ物を消化吸収する腸内環境の改善を心がけ、デトックス工場ともいわれる肝臓の負担を減らしていきましょう。

肝臓に負担をかけるコーヒーやアルコールは控えめに。添加物が多い加工食品や外食はなるべく避け、家で簡単な調理をすること。難しい料理でなくても、塩や醤油をちょっとふって食べるくらいのイメージで十分です。

また、副腎疲労の人はグルテン(小麦)とカゼイン(乳製品)がアレルギーや腸の炎症をもたらすことが多いため、私たちのクリニックではグルテンフリー、カゼインフリーを心がけていただいています。

また白砂糖も控えましょう。まずは3週間試してみると、体調の変化を感じると思います」(本間先生)


そして、副腎ケアには良質なたんぱく質脂質が必須。肉なら鶏や豚がおすすめ。魚なら食物連鎖で重金属などの毒素を蓄積しやすいマグロなどの大型魚を避けて。

良質なたんぱく質と脂質は、できれば3食、難しいなら昼と夜だけでも食べてほしいとのこと。

「副腎疲労の人は腸の消化・吸収が悪いので、3大栄養素のなかでもとくに消化・吸収しにくいたんぱく質が苦手で、消化しやすいパンが大好きというケースが目立ちます。

卵や肉は意識して食べていただきたいですし、主食には玄米十割そばがおすすめ。白米は玄米と混ぜたり、五穀米のほうがよいでしょう」(本間先生)

昼寝も積極的に。夜は0時までに眠りましょう

次なる改善ポイントは睡眠です。最近“寝だめ”はできないという話も聞きますが、副腎疲労の人には効果があります。

寝ている間だけでも精神的ストレスをシャットダウンできるため、副腎の休憩になるからです。

昼寝も積極的にできるといいですね。ただし昼寝に罪悪感を感じると逆効果なので、自分の体のため、大切な人に元気な顔をみせるためと考えて、楽しんで積極的に取り入れてみてください。

また、体内の炎症を抑えるものとしてはコルチゾールが代表的ですが、夜に分泌される成長ホルモンやメラトニンなどのホルモンも含まれます。それらがしっかり分泌されるように、夜はなるべく0時までに寝ることが大切です」(本間先生)

忙しくて睡眠時間が不足気味の人は、寝室の環境を整え睡眠の質を上げていくことが効果的。

薄暗いとメラトニンが光分解されてしまうので、メラトニンの働きが高まる真っ暗な部屋で眠るといいとのこと。

スマホは寝室に持ち込まない、寝る前に使わないこともぐっすり眠って副腎の疲労をとるコツです。

入浴でデトックス。エプソムソルトも効果的

夏場はついシャワーで済ませがちですが、副腎ケアしたいならぜひ入浴を習慣に。毛細血管を拡張して血流をアップし、体内の毒素を排出してくれます。

入浴の効果をより高めるエプソムソルトもいいとのこと。ソルトとついていますが、エプソムソルトは塩ではなく硫酸マグネシウム。浴槽も傷つけません。

「エプソムソルトは発汗作用で毒素の排出を助けマグネシウムが神経の興奮をおさめてくれる作用もあります。ジムで泳ぐ人は塩素対策としてもおすすめです」(本間先生)

ちなみにエプソムソルトを入れたお風呂は、家族で使いまわしても大丈夫だそう。あきらかに見た目が汚れていなければ、毒素が溶け出して次の人が吸収してしまうといった心配はありません。

副腎疲労Q&A

そのほか、副腎ケアでよくある質問は下記のとおり。ぜひ参考にしてみてください。

Q. 毎日の食事は何を意識するといいですか?

A. 副腎疲労があるとビタミンB群が不足しがちになります。次のものを積極的に摂りましょう。

  • ビタミンB1(チアミン):豚肉、豆類、胚芽米や玄米
  • ビタミンB2(リボフラビン):納豆、卵、葉物野菜
  • ビタミンB3(ナイアシン):レバー、魚介類、肉類
  • ビタミンB5(パントテン酸):サケ・イワシなど魚介類、肉類、卵
  • ビタミンB6(ピリドキシン):魚介類、肉類、バナナ
  • ビタミンB12(コバラミン):シジミ・アサリなど貝類、魚類、肉類
  • 葉酸:緑黄色野菜、イチゴ
  • ビオチン:レバー、卵黄、魚介類、キノコ類、ナッツ類

そのほか、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などミネラルの摂取も忘れずに。

また肝臓の解毒作用をサポートする玉ねぎしょうがニンニクニラといった薬味やハーブ類も摂り入れましょう。ただし嫌いなものは無理して食べなくてOKです。

Q. 副腎ケアにいいとされる食べ物は塩分が気になります。摂りすぎませんか?

A. 副腎はミネラルの調整を担っています。副腎疲労の人は塩分の貯留がうまくいかず不足しがちに。塩分を控えすぎると副腎疲労が促進される可能性があります。また人によって必要とする塩分量も違います。

無性に塩分の多いものを食べたくなるときは塩分不足。そういうときは、コップ1杯のお水に耳かき1杯程度の塩を入れて飲むのがおすすめ。塩だけで漬けた(添加物を使用していない)梅干しもグッド。

Q. 食事中は水分をしっかり摂取したほうがいいですか?

A. 副腎疲労の人は胃酸の働きが悪いため、食事中に水をたくさん飲むとうまく消化できなくなってしまいます。

食事中は水は控えめに、胃酸と食べ物がしっかり交わるようによく咀嚼して食べて食後に水を飲むとよいでしょう。

Q. 腸内環境にいいと言われる「玄米」や「ぬか漬け」を食べるとお腹が張ります。食べ続けて大丈夫ですか?

A. 副腎ケアでは腸内環境を整えることが大切ですが、自分の体に合ったオーダーメイドのものであるべき。一般的によいとされる食べ物でも、おなかが張るなら「自分の腸内環境や体質に合っていない」ということなので、無理して食べる必要はありません。

日本人は副腎疲労になりやすい

アメリカ発祥の副腎疲労対策。本間先生たちが、師であるウィルソン博士の書籍の翻訳をはじめたころは、「アメリカ人向きの治療法では?」と思えるものもあり手探りだったとか。

なかでも、来日したウィルソン博士が、日本人のメンタル面について話した内容が興味深かったと本間先生は話します。

「『日本人のもてなしの心や気配りはすばらしいと思う。しかし、一生涯に副腎疲労を経験するアメリカ人は8割といわれるが、つらさや苦しみに耐えることを美徳とする日本人は、もっと多くの人が副腎疲労になっているのではないか』と仰っていたんです。日本人はもう少し、自分をほめるべきだと」(本間先生)


休憩するときも、「自分は怠け癖がある」「体力がない」なんて卑下しないで、副腎のパフォーマンスを上げるために必要不可欠なことなのだと体を労わりましょう。

「食生活もそうですが、人と一緒じゃなくていい。自分の心と体の声を聴く習慣が、副腎疲労対策にはなによりも重要。ぜひ意識してみてください」(本間先生)


本間良子(ほんま・りょうこ)先生

スクエアクリニック院長。アドレナル・ファティーグ(副腎疲労)の提唱者、ジェームズ・L・ウィルソン博士に師事。副腎疲労の夫をサポートした経験から、副院長の夫・本間龍介氏と共に日本初の副腎疲労外来を設置。家庭医として従事する一方、抗加齢医学外来、副腎疲労外来で治療効果を上げている。近年はホルモン補充療法、ブレインマネージメントまで診療の幅を広げる。

MYLOHAS(2018.09.04公開記事)より転載

著者:田邉愛理