長きにわたり、忙しいと言い続けることが美徳と考えられてきました。ノンストップで働くことが称賛される文化の根底には、やればやっただけお金を稼げるという考え方があったのです

しかし、そのようなマインドセットには犠牲が伴います。人生のその他のこと、たとえば自身の健康、あるいは家族や恋人との関係を犠牲にしてまで手にしたその成功は、果たして真の成功といえるのでしょうか。

連日の20時間労働を何年続けても燃え尽きることがないような人は、いないわけではありません。でも、それ以外の大多数の人にとっては、そのような状態が長続きすることはないのです。The Mental Health Foundationはこう指摘します。

長時間労働の影響が蓄積すると、多くの人のライフスタイルに重大な影響を及ぼします。多くの場合、心の健康を害することになるでしょう。

では、仕事の質も心の健康も犠牲にしない、真の意味での成功を収める方法はないのでしょうか。そう思うあなたは、「スローワーク」のムーブメントに乗ってみては? スローワークとは、マインドフルネス、クリエイティビティ、バランスの取れた労働環境を目指すムーブメントです

スローワークは、私たちがこれまでに教えられてきた成功の方法とは正反対の考え方です。しかし、その原則を取り入れ、リフレッシュの時間を取ることで、その後の仕事の質が高まります。その意味で、寒い年末年始のシーズンは、歩みを緩め、ひと休みし、気持ちを切り替えるのに適した季節なのです。

ゆっくり時間をかけて、2022年の仕事への向き合い方を考えてみてはいかがでしょう。そうすることで、以下の5つのメリットが生まれるはずです。

1. 「ハムスターの車輪」から抜け出せる

常に忙しいサイクルにはまってしまうと、そこから抜け出すことが容易ではなくなります。動けば動くほど新たな懸念が生じ、常に注意を払わなければなりません。そうなると、重要事項よりも目先の仕事を優先するしかなくなります

重要事項は長い目で見れば目標達成のために有用でありながら、短期的には至急の仕事を優先せざるをえず、先延ばしにされてしまいがちです。ところが皮肉なことに、重要事項に注力するためのゆとりを持つと、至急の問題は減少します。なぜなら、やるべきことをじっくり考えてから動くので、仕事の効率が高まり、そもそも問題が生じにくくなるからです

忙しさの罠から抜け出すことを意識すれば、ゆとりが生まれ、仕事のやり方を変える方法を考えられるようになるはずです。

2. 1つの仕事に注力できる

集中は、仕事の質の向上につながります。人々が誇らしげにひけらかす「マルチタスク」などというものは、実際は存在しないのです。このことは、複数の研究結果からも明らかになっています。

同時に複数のタスクをこなしているつもりでも、実際は個別のタスクを切り替えながら取り組んでいるだけに過ぎません。1回の切り替え作業はほんの数秒でも、塵も積もれば山となります。その結果、非効率で非生産的なパターンに陥り、エネルギーが奪われるばかりになるでしょう

実は、いちばん効率のよい働き方とは、専用の時間を割り当てて、1つのタスクに集中することなのです。複雑なタスクや、クリエイティビティを必要とするタスクの場合はなおさらです。結果的に、より早く、より質の高い仕事ができるようになるでしょう。

中断の入らない状況で仕事をしていると、「フロー状態」に入る確率が高まります。フロー状態は心理学者Mihaly Csikszentmihalyi氏が提唱した言葉で、次のように定義されています。

ある活動に集中して取り組んでいるため、それ以外のことが気にならなくなる状態。とても楽しい体験となるため、人々は犠牲を払ってでもそれを続けたいと考えるようになる。

3. ひらめきが促進される

スローワークは、クリエイティビティも高めてくれます。素晴らしいアイデアって、散歩中や入浴中に思いつくことが多くありませんか? 何週間も考えていた複雑な問題の答えがひらめく瞬間はどうでしょうか?

その理由は、リラックスしているときは脳内で「アルファ波」が出ているからこの状態のときは、クリエイティブなアイデアが浮かびやすいと言われています。このことからも、定期的に休憩を取ることの重要性をおわかりいただけるでしょう。

脳がベータ状態(通常の状態)のときは、「ラット思考」に陥りがちです。この状態は、複雑な問題解決やイノベーションには向きません。同様に、ストレスや不安があるときは、広がりのある思考が完全にシャットダウンされてしまいます

4. 「最適な」活動に時間をさける

パレートの法則によれば、私たちの活動のうち、20%が結果の80%を生み出しているそうです。つまり、インプットとアウトプットは、いつでも比例するわけではありません。いかに「最適な」活動に時間をさけるかが肝なのです。しかし、多くの人にとって、その20%の「最適な」活動が何なのかさえわかりません。

忙しいメンタリティを抜け出してスローワークのメンタリティを得るには、どの活動が最大の効果を生み出すのか、時間をかけて理解することが必要です

効果の少ない活動は誰かに任せるかやめてしまい、重要なことに集中して取り組めば、時間に余裕が生まれ、パフォーマンスを犠牲にすることなく、よりバランスの取れた方法で仕事ができるようになるでしょう。

5. 持続的な成功につながる

キャリアは短距離走ではなく、マラソンのようなもの。命を削ってまで、忙しい仕事に耐える意味などあるのでしょうか。長期的な成功を目指すのであれば、自らが成功を生み出すプラットフォームとなるべく、心と体を育成しなければなりません

1日は誰にとっても24時間です。適度な運動をする、健康的な食生活をする、よく眠る。そんな時間を、決して惜しんではいけません。それらがあなたの脳の糧となり、健康を損ねることなく、レベルの高いパフォーマンスを維持できるようになるでしょう。自分自身をおろそかにして、持続的な成功を収めることなどできないのです。

Image: Shutterstock

Source: the Mental Health Foundation

Originally published by Fast Company [原文

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