数値化の鬼 ーー 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(安藤広大 著、ダイヤモンド社)の著者は、「株式会社識学(しきがく)」という変わった名前の会社の代表。「識学」という意識構造学を通じ、多くの組織の問題を解決してきたのだそうです。

が、そう聞いただけでは理解しづらいのも事実。果たしてどういうことなのでしょうか?

「識学」とは、組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どうすれば解決できるか、その方法を明らかにする学問です。

2022年3月時点で、約2700社の会社が識学を導入しています。

識学を導入した会社からは、急成長するプレーヤーが多く出てきます。

彼らには、1つの共通点が表れます。

それは、「数字と向き合う回数が増える」ということです。

この本は、そんな識学のメソッドを元に、「結果を出したいプレーヤー」に向けて、仕事の型になる「数値化」のノウハウを伝えます。

(「はじめにーーいったん数字で考える思考法」より)

とはいえプレーヤーのみならず、部下を持つプレイングマネジャーや、現場で直接コミュニケーションをとるリーダー層にも役立つメソッドなのだとか。

その理由にを著者は、「自分を数字でマネジメントできない人が、部下やチームをマネジメントできるとは到底思えないから」だと述べています。

つまり「仕事ができる人」には、「数字の大切さを知っている」という共通点があるということなのでしょう。

たしかに、数字嫌いの人にも数字はずっとついて回るものであり、数字に向き合わずに成長することは不可能。だからこそ、できるだけ若く、柔軟な考え方ができるうちに「数値化」のスキルを身につけておかなければならないということです。

そのためのメソッドである本書のなかから、きょうは第1章「数を打つところから始まるーー『行動量』の話」中の「数値化とは『PDCA』を回すことである」に注目してみることにしましょう。

数値化とは「PDCA」を回すこと

著者はここで、「自分の1日の行動を数字で考えること」を勧めています。

多くのビジネスパーソンは、半年や1年で目標を設定しているのではないでしょうか? しかし、ゴールを漠然と目指している状態だと中だるみしてしまい、あとから焦ってがんばるようなことになってしまうもの。それを防ぐために、大きな目標を「1日ごと」に分解するべきだというのです。

なお、それは「PDCA」という有名なフレームワークを使って以下のように説明することができるそう。

「P(プラン):計画」数値化された目標

→例「400ページの本を読み切る」など

「D(ドゥ):行動」計画を基にした具体的なプロセスや行動

→例「1日20ページずつを読む」など

「C(チェック):評価」上司が与える評価、あるいは自らによる振り返り

→例「1日の終わりに、読んだページ数を確認する」など

「A(アクション):改善」評価を基にした反省と次の改善点

→例「明日はどうやって20ページを読むかを決める」

(79ページより)

このように、数値化を受け入れて不足を満たすことと、「PDCA」を考えることには共通する部分があるわけです。

そこで「PDCA」のフレームワークを土台として、識学オリジナルの考え方を加えつつ、体系的に説明することの重要性を著者は説いているのです。(78ページより)

識学流PDCAの考え方とは

上記にもあるとおり「PDCA」の「P」は「計画」を意味していますが、識学においてはこの「P」に時間をかけないことが重要なのだといいます。

人間は、「計画を立てるとき」にもっともテンションが上がるもの。たとえば旅行の予定を考えたり、お小遣いの使い道を考えるなど、まだなにも実行していないときは気持ちだけが上がるわけです。しかし、そこには「計画を立てるだけで安心してしまう」という落とし穴があるのも事実。

「400ページの本を読み切る」を「P」とした上記の例でいえば、大切なのはその最初の日に「D」20ページを読むことであるはず。にもかかわらず計画を立てただけで満足してしまい、「明日からがんばろう」と思う人が多すぎるということです。

計画は、実際に行動が伴ってこそ意味を持つもの。計画での数字と、実際にやってみた数字とを比較し、素早く不足を埋めるアクションに移ることがなによりも大事なのです。(80ページより)

数値化は「なんとなく」を許さない

ある商品を週に50個売ることを「P(計画)」としたとしましょう。そのとき重要な意味を持つのが、日常的に数値化をしておくこと。そうすれば、「今年はなにか変化が起こっているぞ」というような違和感にいち早く気づけるからです。

たとえば最初の週に40個しか売れず、10個が売れ残ったことを数値化しようとしたら、「店頭での見せ方が悪かったのかもしれない」「商品について聞かれたときの説明がよくなかった可能性がある」など問題点が見えてくるはず。

消費者の行動が変わったり、他の商品に人が流れていたりなど、原因を探る行動をとることができるのです。

ところが、「先週より今週のほうがなんとなく売れ残っているな…」「そういえば今年は売れ行きが落ちている気がするな…」というように、なんとなく“感覚”で売っていたとしたら、変化に気づきにくくなってしまうでしょう。

しかも、すぐに動かずに問題を放置しておくと、とてつもなく大きな機会損失を生んでしまうことになるかもしれません。そうならないためには、1日の売上を数値化し、週の目標の数字を把握しておく必要があるわけです。

もちろんこれはひとつの例に過ぎませんが、こうしたところに「数値化」の意義があるということです。(81ページより)

プレーヤーであってもマネジャーであっても、まずは「数字で評価される人」になってほしいと著者は訴えています。そこからさらに進んでいくために本書を活用してみれば、新たなポテンシャルを伸ばすことができるかもしれません。

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Source: ダイヤモンド社