人は生きている限り、いま起きている問題や、これから起きるかもしれない問題を不安に思い、ついつい悩んでしまうもの。
しかし『心配ごとや不安が消える 「心の整理術」を1冊にまとめてみた』(松原正樹 著、アスコム)の著者は、いろいろなことを不安に思ったり、悩んだりしてしまうのはいたって当たり前なのだと述べています。
禅僧でありながら拠点をアメリカに置き、大学生を相手に宗教学者として日本仏教について教えているという人物。グーグルが社員研修に取り入れたことでも知られるマインドフルネスの活動にも携わり、グーグルを筆頭とする企業に出向いて禅についての講義もしているそうです。
仏教では、すべての物事には「原因」があって「結果」があるとしています。
「原因」がさまざまな「縁」によって姿を変えて、「結果」につながります。あなたの抱えている心配ごとにも、必ず「原因」があります。そう、現実的に対処できる問題ではなく、「あなたの心模様しだい」なのです。
心配を生み出す環境を変えることは難しくても、心配という感情を手放すことは、ちょっとした思考のクセや生活の習慣を変えるだけで簡単にできるのです。(「はじめに」より)
ちなみに著者の根底にあるのは、同じく禅僧だった祖父の「みんなが心配といっているのは、心を痛める心痛である。本来、心配とは他者を気にかけて心配すること。心痛ではなく、たくさん心配をするといい」ということばなのだとか。
さらにはそこに自身の解釈を加え、「もっと、自分にも心を配っていい」「もっと、自分を大切にしていい」と主張したいのだそうです。
そうした考え方を軸とした本書のなかから、きょうは第4章「心配ごとに振り回されない、後悔しない」に焦点を当ててみたいと思います。
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ハタラク(働く)ことは、“ハタ(傍)”を“ラク(楽)”にすると報われる
日々の仕事に追われて忙しく働きながらも、「もっと違う仕事をしていたら、いまよりいい人生があったのではないだろうか?」「このまま一生を終えていいのだろうか?」というような不安に苛まれた経験は、誰にでもあるのではないでしょうか?
また同じように、家事や育児に専念している方の心のなかに、「このまま社会と切り離されてしまうのでは?」というような不安があったとしても不思議ではありません。
とはいえ私たちは、仕事や家事、育児などに人生の大半の時間を費やしているわけです。したがってそこに不安を感じてしまうと、人生そのものがつらくなってしまいます。
では、そこから脱出するためにはどうしたらいいのでしょうか?
そう考えた結果、転職や独立、就職、資格の取得、あるいは離婚など、大きく環境を変える手段を選ぶ方も少なくないでしょう。しかし、環境を変えたところでその先の幸せが約束されているわけではなく、結局はまた大きな不安を抱え込んでしまうというスパイラルに陥りがちだと著者は指摘しています。
問題はひとっ飛びには解決しません。大事なことは、今できることをする。今、自分がいる場所からはじめることです。
一切唯心造(いっさいゆいしんぞう)。すべては心がつくり出すのですから、心の持ちようで変えられることがたくさんあります。今いる場所でできることが、たくさんあります。(178ページより)
そもそも人はなんのために働くのでしょうか?
こう問われたときには、「お金のため」「生きるため」「自分のため」などいろいろな目的が思い浮かぶかもしれません。しかし、それでは幸せを感じられなかったのだとすれば、当然ながら、なにかを変えていく必要があります。そこで著者は、次のように考えてみてはどうかと提案しています。
“ハタ(傍)”を“ラク(楽)”にするから、働く。
この視点に立って、今いる場所で、自分のためよりも誰かのために役に立つ、そんな働き方を模索してみます。
このプレゼン資料はここのグラフを色分けしたら伝わりやすいだろうか。共有のものは、使い終わったらもとあった場所にすぐ戻す。次に使う誰かのために。(178ページより)
たとえ小さなことであっても、こうした視点を持つこと自体に意味があるわけです。
もちろん、それがすぐに結果につながるわけではないかもしれませんが、このように考えられるようになった時点で、自分自身の変化はもう始まっているのだと著者は記しています。
“ハタ”で働く人からの感謝のことばが自分へのギフトであることに、やがて気づくだろうとも。(176ページより)
毎日、やりたいことを10個書く
いろいろなことが心配になるのは、「心配に費やす時間があるから」だとも考えられるはず。いまを精いっぱい生きることで、心配する時間をなくしてしまうという対処法もあるわけです。
そして自分の時間を精いっぱい生きるために、著者は「やりたいことノート」を書くことをすすめています。
[やりたいことノート]
用意するものは、ノートとペン。
期間は、1ヵ月。
毎日、自分がやりたいと思うことを10個書く。
(186ページより)
実現可能・不可能は問わず、頭にパッと思い浮かんだものを10個、毎日ただ書いていくというシンプルなメソッド。
どうしても書けない日もあるでしょうが、大切なのは「あるがままの自分」を受け止め、とにかく1ヵ月続けること。それだけで気持ちが整理されていき、自分のやりたかったことが自然に見えてくるというのです。
1ヵ月も後半になると、本当にやりたいことが2つ3つだけ残るはず。そして、そこから本当に大切な1つが見つかるわけです。自分の心と向き合っていくうち、最後には本心だけが残るということ。
それは、1ヵ月間きちんと続けた人にだけ与えられる、ご褒美のようなものだと著者は表現しています。(184ページより)
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心配症な人は、まだ起きていないことを気にしすぎるあまり振り回されてしまい、心を痛めてしまいがち。しかし、たとえ現在の環境や状況を変えられないとしても、心模様が変わるだけで自分自身にも心を配れるようになると著者はいいます。
そうなれば当然、心の痛みも消えていくことでしょう。そんな境地にたどり着くための手段として、本書を手にとってみてはいかがでしょうか?
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Source: アスコム