本当に大切なことに集中するための 頭の"よはく"のつくり方』(鈴木進介 著、日本実業出版社)の著者は、“思考の整理家”。

「人や企業の思考をシンプルにし、持っている可能性を最大限に引き出す」という理想を掲げ、20年以上にわたって人材育成やコンサルタント業、講演などに携わってきたのだそうです。

そんな著者は、頭のなかに“よはく(余白)”が残っていることの重要性を強調しています。もし“よはく”がない状態でがむしゃらにがんばるような忙しい日々を過ごしていたなら、“脳内キャパ”は限界に近づき、「自分らしさ」を失ってしまうかもしれないというのです。

余裕がない張りつめた状態で「あれもこれも」と手を出し、全力で頑張っているだけでは、頭の中に“よはく”がなくなってしまいます。

だからこそ、モチベーションを上げて、ひたすら全速力で突っ走るようなスタイルをこの辺でいったん見直してみませんか? もっとラクに、もっと余裕をもって本当に大切なことに集中できる毎日に変えてみませんか?

この本を手にした、今このときこそが、グッドタイミングです。(「はじめに」より)

つまり本書は、頭のなかの“よはく”を失い、本来持っている力を最大限発揮できていないと感じている方に向けて書かれているわけです。具体的には、頭のなかをシンプルにし、自分らしさを取り戻すためのメソッドを紹介しているのだとか。

きょうはそのなかから、第3章「人生をシンプルにする『頭の使い方』」に目を向けてみたいと思います。

はじめに決めた目標は気軽に修正していい

著者によれば、人間のモチベーションがいちばん高くなるのは目標を設定した瞬間。それがどれだけ現実離れしていても、はじめだけはできそうな気がして、意気揚々とした気分になるというのです。

「楽観主義バイアス」という、実際の自分の能力に対する難易度を過小評価してしまう認知の歪みによるもの。

これは非常に厄介で、やり始めてみたあとで、「あれ? せっかく立てた目標だけど、どう考えても現実性がなさすぎるんじゃないの?」と、その人を失意のどん底に突き落とすこともあるのだそうです。

本当はもう少しだけ現実的な目標へと修正したいのに、時間が経つにつれて「いまさら目標を下げるなんて、敗北者みたいで恥ずかしい…」というようなことを考えてしまい、やがて高すぎる目標がトラウマになって打ちひしがれてしまうことにもなりかねないわけです。

だからこそ、ちょっと上を目指すくらいがちょうどいいのだと著者はいいます。もし、高すぎる目標や難しすぎるタスクに捉われすぎているのなら、一度立ち止まって「ふりかえり」をしてみるべきだということ。その結果、ストレスによって余裕がなくなっていたと感じるのであれば、目標を再設定してもかまわないそう。

自分の能力では少しだけ難しいけれど、現実的に挑戦しようと思える「ちょっと上」。このあたりを基準に、再度、目標を考え直してみるのです。(76ページより)

当初の目標から基準を下げたとしても、それは敗北ではありません。「次のジャンプのために、いったん、しゃがんだだけ」と思えばいいだけの話なのです。(72ページより)

ゴールを見ずにプロセスを見る

「なかなか結果が出ない」というようにゴールに達していない状況では、さまざまな感情が入り混じってマイナスのことも考えてしまいがち。そのため、頭がいっぱいいっぱいになってしまったりもすることでしょう。

そんなときは、視点を切り替えることであたまのよはくを取り戻すことが可能。ゴールそのものではなくプロセスにフォーカスするということです。

「ゴール」とは、「〇〇の試験に△△までに合格する」「売り上げ目標○○円を達成する」というような最終地点。対する「プロセス」は、ゴールに到達するために必要な「行動過程」。「売り上げ目標達成のために顧客への訪問回数を1日10件にする」などがそれにあたるわけです。

もちろん、「ゴール」を明確にして頭のなかにセッテイングしておくことは大切です。が、いくら念じてみたところでゴールには近づかないのも事実。

遠くにあるゴールのことばかりを気にしすぎ、「この先、本当に自分ががんばれるのだろうか?」などと浮き沈みしていても前進することはできないわけです。そこで、視点を変えてみるのです。

たとえば、ゴールに向けてなにかに取り組み始めたとき、「本当にこのまま続けても大丈夫なのかな?」と先々のことが不安になったとします。そんなとき、ゴールを見ずに、プロセスに視点を切り替えるということ。

なお、プロセスで見るべきポイントは次の2つだそうです。

① 前を見ずに後ろを振り返る……行動してきたプロセスを見る

② 結果を考えずに目先の行動を考える……これからの行動プロセスだけを見る

(78ページより)

重要なポイントは、先々のことを考えて一喜一憂したところで、未来のことは誰にもはっきりとはわからないという点。だとすれば、思い悩んでみたところであまり意味はないということになります。

しかし、これまでの振り返りをすれば、たどってきた行動プロセスを確実に見ることができます。しかも遠くにあるゴールではなく、目先の行動プロセスであれば、手が届く範囲ではっきり目に見える形にすることも可能。

目に見えないことを悲観的に妄想してしまうと、当然のことながらどんどん不安になっていってしまうものです。けれども視点をプロセスに切り替えて書き出してみれば、結果的に余裕を取り戻すことができるはず。

目に見えない先のことまで考えず、まずは目に見えて手が届く範囲に焦点を絞り「ここまできたら自分をほめる」という頭の切り替えもときには大切になるのです。(80ページより)

そこで、頭がいっぱいいっぱいのときには、“灯台下暗し”になっていないか振り返ってみるべき。著者はそう主張しています。(77ページより)

本書からコツをつかみ、がんばり方を少し変えてみるだけで、頭のなかに“よはく”を取り戻すことができると著者は断言しています。余計なことを省いて大切なことに集中するために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

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Source: 日本実業出版社