口げんかがはじまりそうな時、自分でもその予兆を感じられるものです。感情は高ぶり、体は熱くなり、取り返しのつかない言葉がのどまで出かかっています。
激しい言い争いは(たとえそれほど激しくなくても)、あらゆる人間関係に取り返しのつかないダメージを与える可能性があります。
口論の相手が見知らぬ人であっても、あるいは同僚、友人であっても、その結果が何をもたらすかは定かではありません。一度はじまってしまえば、あとは暴力沙汰にならないことを祈るのみです。
とはいえ、戦いがはじまる前の数秒間に、できることがあります。必ずしも状況をコントロールできるとはかぎりませんが、少なくとも、自分自身を沈静化させることは可能です。
この記事では、事態がヒートアップした時に冷静さを保つためのヒントを紹介します。
なぜ戦いたい衝動に駆られるのか理解する
戦いたくなる衝動は突然やってくるものではありません。それは、あなたの気質、過去の経験、個人的な好み、およびその場の状況によって生み出されるものです。
これらの要素が絡み合うことで、脅威を感じたり、ばかにされたと感じたり、相手の口調が激しくなったと感じた時に、戦いを挑みたくなります。
自然と湧きおこる衝動を抑えることは難しいかもしれませんが、自分自身について学んでおくことで、いざという時に、自分の衝動を冷静に見つめられるようになります。
サクセスコーチのRonnie Bloom氏は、次のように説明しています。
脅威を感じた時に生じる、アドレナリンに満たされた反応状態「戦う」か「逃げるか」については、多くの人がご存知のはず。この2つは、4つの生存反応のうちの1つです。
ほかの2つは「固まる」と「媚びる」です。4つとも本能的な反応であり、感情的、身体的な脅威を生き延びるために自らの能力を最大限に発揮しようとするものです。
「戦う」本能は攻撃的な姿勢をとらせます。「逃げる」本能は完全な離脱へと導きます。「固まる」本能は、認識した脅威に対して全く反応できない状態にします。「媚びる」本能は、衝突を避けるために相手を喜ばせようとします。
これまで緊迫した状況に置かれた時に、自分がどのように対処してきたか思い返してみてください。相手の機嫌をとったり、その場から逃げることが多かったでしょうか?
過去の経験が、未来の行動に大きな影響を与えます。強く主張したり、攻撃的な態度をとったことで事態が悪化した経験がある人は、そうならないようにすることを学んできたかもしれません。
もっとも、過去の経験に影響されない人もいれば、緊迫した場面に出会ったことがない人もいることでしょう。
自分の動機や行動を問い直し、自分自身を理解することに時間を使うことで、少なくとも、自分の攻撃性を相手にぶつけ、問題を悪化させるような状況を避けられるようになります。
「多くの場合、『戦う』反応は、状況を悪化させ、被害を大きくする」とBloom氏は警告しています。
「戦う」モードの再現で、エスカレートを未然に防ぐ
自己理解が深まれば、緊迫した状況から攻撃的な戦いにエスカレートしつつある時に、それと気づけるようになります。
とはいえ、戦う、逃げる、固まる、媚びる、といった反応は、ほとんど無意識のうちに発動することを忘れてはいけません。
エスカレートを防ぐ行為は、戦いがはじまるずっと前に行なわれなければなりません。
「まず知っておくべきなのは、『戦う』モードになっていると、脳の理性や熟慮を司る部分がオフになっている可能性が高いということです」とBloom氏は言います。
脳がそうするのは、熊に追いかけられた時に分析麻痺に陥らないようにするためです。このことを理解しておくのは重要だと思います。こうした状況でまずやるべきなのは、論理や理性を働かせることではないことを教えてくれるからです。第一にしなければならないのは、「戦う」モードになっている心と体を落ち着かせることです。
なによりもまず、自分が「戦う」モードになっていることに気づくことが重要であり、そのためにはそのことを「感じ」とらなければなりません。このモードの最中は理性や論理に頼ることはできません。
同氏は、実際には戦っていない時に、「戦う」モードを再現してみて、それがどのような感覚なのかを調べてみることを提案しています。
その感覚は体のどこにあるのか、色や形はあるのか、重いのか、ヒリヒリするのか、それとも無感覚なのか、自分に問いかけてみてください。
「戦う」反応がどのような感覚なのかを、自分なりの言葉で表現して、それを覚えておきましょう。
「それが戦うモードです」と同氏。
次にその状態になった時に、いち早く気づいて、沈静化のプロセスをはじめやすくなります。
戦いのなかで冷静さを保つ方法
戦う反応が起きる理由を理解することは重要ですが、理論を実践に移す際に、知っておくべきこと、その場でやるべきことがほかにもあります。
Bloom氏は、可能であれば、緊迫した現場から離れるようにと言っています。たとえば、自分の部屋に戻る、外を歩く、トイレの個室に逃げ込む、などが考えられます。
「ポイントは、本能を安全に表現できる場所に移動し、沈静化することです」と同氏。
枕を叩いたり、枕に顔をうずめて叫ぶなど、攻撃性を表現する方法を探してください。または、メモアプリを開いて、相手に向かって言いたいことをすべてタイプするのでもいいでしょう。ただし、それを実際に送ってはいけません。
攻撃的な状態から抜け出せたら、少し時間を取って自分を落ち着かせてください。
ヨガをしたり、御馳走を食べたり、好きな音楽を聴くなど、何でもいいので心地がよくなることをしましょう。
「攻撃性を安全に表現したり、沈静化することで、理性と論理が機能する状態に戻り、意思決定と熟考のためにそれらを使えるようになります」とBloom氏は言っています。
もっとも、一人っきりになれる場所に逃げ込めない状況もあるかもしれない、と同氏は言います。
そんな時は、深呼吸をして、出口が見つかるまで、できるかぎりの自制心を働かせてください。
そして、能力の限りを尽くして、その状態を維持し、戦いをはじめることが、深刻で長期的な結果をもたらすことを思い出すようにしてください。
「トンネルの先にある光に目を向けてください」と同氏。諦めず、その状況から抜け出すチャンスが訪れることを信じて。
Source: Coach Ronnie Bloom