2020年後半に発売されたM1 MacBook Airは、Apple製のシリコンチップを搭載した初のMacです。

11万5280円(税込/256GB)という低価格で、Windowsラップトップには決してまねのできない、信じられないほど高いコスパを実現しました。

それから2年、今度はiPad AirにもM1チップが組み込まれました。

しかも、その価格はMacBook Airのおよそ半分です。

このM1 iPad Airの登場により、M1 MacBook Airは過去の遺物になってしまったのでしょうか?

それとも、M1 iPad Airのパワーはそこで動作するソフトウェアと釣り合わず、宝の持ち腐れになっているのでしょうか?

というわけで今回は、どちらを選べばいいのかよくわからないというみなさんのために、M1 MacBook AirとM1 iPad Airを、それぞれのベースモデルを使って徹底比較します。

価格

まずは、ほとんどの人にとっては購入の決め手となる価格から見ていきましょう。先ほどもさらっと触れましたが、iPad AirはMacBook Airのおよそ半分の値段です。

しかし、これで話は終わりません。

とくに、iPad Airをラップトップ代わりにしようと思っている人は要注意です。

たしかに、7万4800円出せば、64GB/Wi-FiモデルのiPad Airが手に入ります。しかし、これだけではラップトップの代わりは務まりません。

この金額で手に入るのは、iPad Air本体だけです。ラップトップと同じような使い方をしようと思ったら、最低でもキーボードが必要になります

しかも、Apple製品の中からベストなものを選ぶとなると、正解はMagic Keyboardになるわけですが、その価格は3万4980円。

つまり、iPad Air本体価格のおよそ半分なのです。

これを踏まえると、iPad Airの総額は一気に10万9780円まで跳ね上がります。となると、もう少しお金を足してMacBook Airを買ってしまったほうがいいのではないか…と疑問がわいてきます。

さらに、絵を描くつもりなら、1万5950円のApple Pencilも必要になります。

一方、MacBook Airなら、11万5280円ですべてが手に入ります。アクセサリーに余分な出費を強いられることなく、理想的なラップトップ体験を楽しむことができます。

またストレージに関しても、MacBook Airの256GBはiPad Airの64GBの4倍です。

OS

MacBook AirとiPad Air
Image: MakeUseOf

MacBook AirとiPad Airの大きな相違点のひとつはOSでしょう。

けれども、どちらのOSが適しているのかを決めるのは、最終的には好みと言えるかもしれません。本格的なデスクトップOSと、モバイルベースの軽めのOS――。

どちらがお好みですか?

MacBook Airが実行するmacOSは、デスクトップ/ラップトップ用に基礎から設計されたOSです。一方、iPad Airが実行するiPadOSは、その大きなスクリーンを生かすための、いわば強化型iOSです。

そのため、iPad Airについては、使えるソフトウェアがApp Storeで入手できるものに限られます。

それに対して、MacBook Airにはどんなデスクトップ用アプリでもインストールが可能です。そればかりか、サポートされているiPhone/iPad用アプリもMac App Storeからインストールできます

Macユーザーの目には、iPadOSにはできないことが多いように映るかもしれません。

でも、Macを持ったことも使ったこともない人なら、iPhoneと同じ使用感をずっと大きなスクリーンで楽しめるiPadOSで満足できるのではないでしょうか。

ソフトウェアに関しては、MacBook Airのほうが使い道は多いと思います。「LumaFusion」などの便利なiPad用アプリの中には、MacBook Airでも普通に使えるものもあるからです。

性能

閉じられたMacBook AirとiPad Air
Image: MakeUseOf

すでにお伝えしたとおり、どちらのデバイスにもApple製高性能チップのM1が組み込まれています。

ということは、どちらも同じ性能を発揮してくれるのでしょうか?

理論的にはそうです。とはいえ、OSが違いますから、比べるのは簡単ではありません。

MacBook Airのベースモデルには、7コアGPUを搭載したM1が組み込まれています。

一方、iPad AirのM1には、本格的な8コアGPUが組み込まれています。この点は、特筆に値するでしょう。

もちろん理論上は、わずかながら両者のGPUの性能に差はありますが、実際に使っていてその差を感じることはほとんどないでしょう。

MacBook AirもiPad Airも、お値段以上の高い性能を発揮してくれます。

しかしながら、「Final Cut Pro」や「DaVinci Resolve」などの映像編集ソフトを使って、CPUとGPUへの負荷が大きい作業を行うつもりなら、もっとハイエンドなモデル、たとえば「M1 Pro」チップが組み込まれた14インチMacBook Proを買ったほうがいいでしょう。

MacBook AirとiPad Airのどちらを選ぶにせよ、RAMは同じ8GBなので、その点については両者とも問題になることはまずありません。

ただし、どうしても必要であれば、MacBook AirのRAMを16GBに増設することができます。

iPadOSとmacOSでは、システムリソースの管理方法が違う点も覚えておいてください。iPadOSの場合、アプリが使えるのは使用可能なRAMのうちの6GBまでで、残りはコアシステム機能に託されます。

それに対して、macOSにはこのようなアプリのメモリ使用制限はありません。

カメラ

iPad Airのカメラ
Image: MakeUseOf

つい最近まで、ラップトップには高性能カメラが搭載されていませんでした(MacBookシリーズも例外ではありません)。タブレットやスマホと比較すると、その性能の違いは歴然としていました。

しかし、コロナ禍が始まってからというもの、ビデオ通話への需要は高まる一方で、多くのユーザーにとってカメラの性能は最優先項目のひとつになっています。

MacBook Airにも、FaceTime通話用の720p HDカメラが搭載されていますが、その性能はせいぜい並みといったところでしょうか。

なので、MacBook Airをビデオ通話やオンライン会議に多用するつもりなら、このカメラでは物足りないかもしれません。

一方、iPad Airに搭載されているのは、12MPの超広角カメラです。最大1080p/60fps対応のカメラなので、ビデオ通話もとても滑らかです。

それだけではありません。iPad Airは「センターフレーム」機能もサポートしているので、あなたが動き回っても、フレームから外れることはありません。

iPad Airはあくまでもタブレットであることをお忘れなく。

ほかのタブレットと同じように、iPad Airにもパワフルな12MPのメインカメラが組み込まれていますから、美しい写真と4K/60fpsの動画が撮影できます。

タブレットで写真を撮る人はそう多くないかもしれませんが、書類などをスキャンするときにはとても便利です。

バッテリー駆動時間

MacBook Airのデザイン
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MacBook AirとiPad Airはともに、どこにでも持ち運べるマシンです。なので、旅行などに携帯した際には、バッテリーがなるべく長もちしてほしいと願うのは無理からぬことです。

ありがたいことに、M1チップの優れたエネルギー効率のおかげで、新しいMacBookシリーズのバッテリー性能は前世代を大きく上回っています。

iPad Airは、ウェブをブラウジングした場合のバッテリー最長駆動時間は10時間と、タブレットとしては申し分のないパフォーマンスです。

それに対して、MacBook Airのバッテリー最長駆動時間は、ウェブブラウジングの場合が15時間、「Apple TV」アプリで動画を再生した場合が18時間です。

MacBook Airのバッテリー性能は群を抜いているというほかありません。これに勝てるのは、重くて値段も高い13インチのM1 MacBook Proぐらいでしょう。

ディスプレイ

iPad Airのマジックキーボード
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スクリーンのサイズも、どちらのデバイスを選ぶべきかに大きく影響します。

パネルのクオリティは似通っているので、スクリーンをなるべく広く使いたいのか、それともより持ち運びしやすいデバイスがほしいのかが、最終的な決め手になります。

iPad Airには、10.9インチのIPSディスプレイが搭載されています。ピクセル解像度は2360×1640で、ppiは264です。

これに対して、MacBook Airに搭載されているのは13.3インチのIPSディスプレイで、ピクセル解像度が2560×1600、ppiが227です。

どちらのディスプレイも広色域ディスプレイ(P3)とTrue Toneをサポートしています。

しかしながら、最大輝度が500ニトのiPad Airのほうが、400ニトのMacBook Airよりも、少し明るいかもしれません。

M1ラップトップとM1タブレット:違いを知っておこう

決断の前に、そのデバイスで何をするつもりなのかをきちんと把握しておくことが大切です。

iPad Airは、モバイルベースのOSを実行するタブレットながら、メモやビデオ通話、メディア消費といったユースケースにおいては、MacBook Airを実力で上回っています。

とはいえ、ほとんどの人は、MacBook Airを選んだほうが無難かもしれません。便利さではこちらのほうが上なので、支払った金額に見合った最大限の価値を得られるでしょう。

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