私が信じていた、あるいは信じたいと思っていた栄養に関する3つの思い込みをご紹介して、なぜこの思い込みを捨てようとしているのかご説明します。

思い込み①:特定の化合物を含む食品は身体に良い

かつて流行った「スーパーフード」のことを覚えていますか? 抗酸化作用が強いものは何でも健康に良いとされていました。

「スーパーフード」というバズワードは変わっても、そのコンセプトは変わっていません。たとえば、コーヒーや赤ワインはフラボノイドを豊富に含んでいるため、依然として健康に良いといわれています。

しかし、こうしたコンセプトは、多くの場合人間の生活から隔離された研究所で、たった1つの食品成分だけに着目して行なわれる研究から生まれる傾向があります

たとえば、赤ワインから1つの化学物質を抽出してマウスに与えると、マウスの血中の炎症バイオマーカーのレベルが若干低くなるかもしれません。だからといって、赤ワインを飲む習慣のある人が、まったく飲まない人よりも健康になるというわけではありません。

人間が食べるのは栄養素でなく食べ物です。そして、豊かな生活のなかでさまざまな物を食べ、血液化学物質のレベルを下げる可能性があるものは何かということ以外にもたくさんの考察がなされています。

「野菜を食べること」「偏りなくさまざまな食物を食べること」。そうしたことさえ押さえておけば、ベリーの種類を比べてどれを食べると健康に良いか議論するのは、時間の無駄です。

思い込み②:ケトダイエットで魔法のように痩せられる

ケトダイエットやその他の低炭水化物ダイエットは、ひところ大変な人気を博しました。

ロバート・アトキンスが提唱したアトキンス・ダイエットを覚えていますか? その導入フェーズは基本的に厳格なケトダイエットであり、1970年代まで遡ります。

1970年代初めには、特定の血液成分を生成できる程度に炭水化物の摂取量を減らすケトジェニック・ダイエットが、代謝に何らかの特別な影響を及ぼすと考えられていました。

しかしそれ以降、その仮説を検証する綿密な研究がいくつも発表され、低炭水化物ダイエットだけでなくどんなダイエットにも生化学的な利点はないことがわかりました。

摂取カロリーをほぼ同量に制限する限り、あらゆるダイエットは等しく効果を発揮するようです。

(言い換えれば、特出した効果を発揮するダイエットはないようです。正直なところ、ほとんどの人が長期的にはリバウンドして体重が元に戻ります。)

ですから、本当に重要なのは、継続できるダイエットを選択することであり、低脂肪ダイエット、低炭水化物ダイエット、その他のダイエットのどれを選んでも大差はありません

思い込み③:食事のタイミングはこの上なく重要

食事のタイミングが重視されるようになったのは、世の中が単に最適化しやすいものを求めていたからだと思います。

適切な内容の食事を適量食べるようにするのは大変かもしれませんが、食事のタイミングなら調整しやすいからです。あるいは、自分は真剣に運動に取り組んでいると思いたくて、運動後のことも時間をかけて完璧なプランを立てるのかもしれません。

低脂肪ダイエットと低炭水化物ダイエットは効果の点で同じぐらいのようですが、断続的断食と少量の食事を日に何度もすることを比較して、どちらが効果があるかを実証するエビデンスはありません

▼こちらもおすすめ

ファスティングは意味がない? 健康面へのデメリットも | ライフハッカー[日本版]

ファスティングは意味がない? 健康面へのデメリットも | ライフハッカー[日本版]

ですから、朝食を食べたいなら食べてもいいですし、食べたくないなら省いても構いません

▼こちらもおすすめ

「朝食が重要」はウソだった:研究結果 | ライフハッカー[日本版]

「朝食が重要」はウソだった:研究結果 | ライフハッカー[日本版]

運動前後の食事はダイエットの効果に影響を及ぼすというエビデンスはあるものの、何をどのぐらい食べるかということに比べれば、大したことはありません。

運動した直後に30gのタンパク質を摂取できなくても、筋肉が萎縮して死ぬわけではありません(私も、ジムで運動したあとに時計を見て、30分以内にシェイクを飲むようにした覚えがあります)。

▼こちらもおすすめ

運動後の「理想的」なタンパク質摂取量 | ライフハッカー[日本版]

運動後の「理想的」なタンパク質摂取量 | ライフハッカー[日本版]

運動のあと、タンパク質を摂取したほうが良い時間の幅は、数時間もあることもわかっています。ですから、運動するタイミングにこだわり過ぎる必要もありません

昼食と夕食の間に運動しても、軽く朝食を食べたあとに運動してそのあと2回目の朝食を食べても構わないのです。

──2020年1月15日の記事を再編集のうえ、再掲しています。

訳:春野ユリ/Source:National Library of Medicine, The Lancet Diabetes & Endocrinology