ロシアの戦争は事実上失敗した

ウクライナ侵攻に関し、ロシアは敗北を回避する手段を失いつつあるとの指摘が出はじめた。

電光石火の首都キーウ陥落を目指したプーチンだが、ロシア兵の練度不足やウクライナ側の徹底抗戦など、複数の要因を受けて戦況は膠着こうちゃく状態に陥っている。英ガーディアン紙は英国防省による分析として、ロシア軍が投入した兵士の約3分の1をすでに5月中旬までに失ったと報じた。

2022年5月16日、ロシアのプーチン大統領は、ロシア・モスクワのクレムリンで開催された集団安全保障条約機構(CSTO)加盟国首脳会議に出席した
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
2022年5月16日、ロシアのプーチン大統領は、ロシア・モスクワのクレムリンで開催された集団安全保障条約機構(CSTO)加盟国首脳会議に出席した

同省の分析によると、ロシアは「継続的な高レベルの消耗」に苛まれ、兵力については「2月に投入した地上戦力(19万人)の3分の1を喪失した」とみられる。今後の展望については、「現状を鑑みるに、今後30日間でロシアが進撃の速度を劇的に加速することはないだろう」との見解だ。

首都キーウ陥落をねらう「特別作戦」に事実上失敗したいま、どう動いてもプーチン政権へのダメージは避けられない状況となった。プーチンにとって真の危機は、もはやウクライナを落とせないことなどではない。今後想定されるリスクは、ロシア軍の内部崩壊およびプーチン政権の瓦解がかいだ。

軍事大国・ロシアの威信失墜 

英シンクタンクのヘンリー・ジャクソン協会で研究員を務めるタラス・クジオ氏は、米シンクタンクのアトランティック・カウンシルへの寄稿を通じ、ロシア内部崩壊のシナリオはあり得るとの見解を示している。

クジオ氏は、初期のキーウ攻略でロシア側が「壊滅的な損失」と「驚異的な数の犠牲者」を招き、「主目的の達成に失敗した」と断言する。一方でウクライナ側は粘り強く防衛戦線を維持し、ゼレンスキー大統領の巧みな演説とフョードロフ副首相の積極的なIT活用により、国際社会からの支持を獲得した。