首都圏のマンション価格が上がり続けている。当面、住宅購入は先送りしたほうがいいのだろうか。スタイルアクト代表の沖有人さんは「これからマンション価格がさらに上がることは間違いない。今が家賃地獄から抜け出す最後のチャンスになるだろう」という――。
夜明けの東京の街並み
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首都圏新築マンションの市場は縮小している

ウクライナ侵攻で世界的な平和が保たれないことが現実となった。世界情勢は不安定になり、エネルギー価格の高騰やサプライチェーンが不安定になっている。日本以外の先進国はインフレ率が7%以上に跳ね上がり、インフレを抑えるために金利を上げ始めている。日米の金利差から為替は円安になった。

しかし、日銀は金利を維持して円安を容認している。低金利政策の継続である。この金融緩和政策はデフレ脱却のために始まっている。しかし、日本ではなかなかインフレ率が上がらない。こうなると、世界の情勢の中で日本の不動産価格にも大きな局面転換が訪れることになる。

低金利の資金は不動産業に流れ、仕入れる用地価格を上げ、建築単価も上昇を続けている。通常の分譲マンションマーケットでは、分譲価格が1割上がると、供給戸数は1割減るもので、買い手の減少が見込まれる。ちなみに、2021年の首都圏の新築マンションの供給戸数は3万3636戸だったが、2001年は9万8217戸とざっと3倍もあった(不動産経済研究所調べ)。既に市場は1/3に縮小している。しかし、今年はコロナ禍でもっと広く、部屋数の多い家を求めるコロナ特需が終了しており、2022年は3万戸割れすると筆者は予測する。

マンション価格が上がるほど、分譲より賃貸が増える

というのも、ここ数カ月の住宅着工戸数では、賃貸マンションの供給が増え、分譲マンションがその分減っている。この10年で首都圏の年間の着工戸数ベースで分譲は7万戸から5万戸に減ってきており、賃貸マンションは4万戸から5万戸に増えてきている。

マンション開発を行うデベロッパーの考えからすると、仕入れた土地を分譲するか、賃貸にするかは変わることがある。そもそも土地を購入する際にいろんなケースで事業収支をはじいているが、開発までには時間がかかるので、情勢によってどちらにするかは流動的なのだ。

賃貸マンションが増える背景に世界的な金余りがある。お金は稼げる場所に流れていくものだ。賃貸不動産で稼ぐには利回りと借入金利の差が重要な指標になる。これをイールドスプレッドと言うが、世界的に日本はこれが大きく、お金を呼び込める状況にある。ここで冒頭に書いた日米の金利差が重要になってくる。米国で金利が上がると、イールドスプレッドは低くなるが、日本で金利が上がらないので、利回りが今の水準より低くなっても許容できるようになる。利回りが低くなるとは、賃料はほぼ一定なので物件価格が高くなるということだ。

賃貸マンション1棟の売却価格が高くなると分譲よりも採算が良くなる可能性が高くなる。つまり、マンション用地は自宅を買いたい人のためではなく、ファンドのために開発されていくのである。不動産は稀少になればなるほど、購買力のある買い手が持っていくものだ。