2019年に紹介した、Netflixのビル・ゲイツのドキュメンタリー『Inside Bill's Brain: Decoding Bill Gates』(邦題: 『天才の頭の中: ビル・ゲイツを解読する』)。

観たい観たいと思いつつ2年半が過ぎてしまいましたが、ようやく見れました。

3部から成るこのドキュメンタリーでは、タイトルどおり、読書習慣からアイデアを実現するまでのビルの仕事ぶりが垣間見られます。

映画の中で妻(現在では元妻ですが)のメリンダ・ゲイツさんが「マルチプロセッサー」と呼んでいるビルの頭脳の働きを3つのキーワードでまとめました。

キーワードその1:Synthesize

桁外れな読書量と、その膨大な情報を統合する

「Synthesize」とは、「総合的に扱う、統合する」の意味です。

ビルの非凡な多読習慣は、画面の向こうからひしひしと伝わってきました。

パート1では、オフィスのアシスタントがトートバッグに本を10冊以上詰めながら、出張中にビルが読み終えたら、次の本と詰め替えるのだと語っています。しかも1冊1冊がシリアスなテーマの分厚い本なのです。

また、元マイクロソフトのマーケティングディレクター、マイク・スレイドさんはこう述べています。

ビルが何かについて読むときは1冊だけ読むんじゃない。そのテーマで5冊ぐらい読むね。(中略)読むスピードがすごく速くて、情報を統合するのも素晴らしい。

また、友人のバーニー・ノウさんによると、ビルは休暇中に14冊読破することもあり、読書スピードは1時間に150ページほどなのだとか。

英語の本で150ページというのは薄めのペーパーバック1冊弱。

これまた桁外れ。そんなスピードで読んで内容は入ってくるのだろうかと思うのが一般人が抱く疑問ですが、バーニーさんはそれを見越したかのように、ビルは読んだ内容の90%は覚えていると語っています。

そういえば、ビルの読書習慣の中に「本にメモる」というのがあります。

ビル・ゲイツが実践している「攻めの読書術」 | ライフハッカー[日本版]

ビル・ゲイツが実践している「攻めの読書術」 | ライフハッカー[日本版]

メモしながら読むと既知情報と本の情報を結びつけられると言っていましたが、その様子もカメラが捉えています。

メモを書き込むのは情報統合だけではなく、情報を記憶するのにも役立っているのでしょう。

キーワードその2:Complexity

映画のあちこちで登場するのがこの言葉。「複雑さ」ですね。

メリンダさんはデイビス・グッゲンハイム監督から「ビルの脳はどんなものか?」と尋ねられてこう答えています。

(ビルの脳には)ものすごい量の情報量が存在しています。カオスです。彼は非常に多くのことに対応できるんです。複雑なことが好きで、それを解くのが生きがいなんです。

映画を観ていくと、彼女が言わんとすることが次第にわかってきます。

思考と整える「Think Week」の実践

ビルは、自然に囲まれた小さな家にひとりで滞在して読書や思考に費やす「Think Week」という習慣を大事にしています。マイクロソフト時代の1990年代にはじめたそうです。

ビルいわく、Think Weekは、

CPUの時間。いろいろなことについて考えるための時間だ。

メリンダさんは次のように述べています。

(Think Weekで)ビルが心を落ち着けると、彼は最高レベルで考えられるのです。頭の中にある信じられないほど複雑な思考、他人が思いつかないアイデアをまとめられます。

Think Weekを行なう理由、それは心を落ち着けて、思考を練るためです。

1週間を読書だけに費やせるなんて、なんて贅沢……と思うけれど、よく考えてみれば週単位ではなくとも、Think DayやThink Hourぐらいは可能ですよね。

そう思うと、読書や深い思考の時間がないというのは平凡な脳を持っている普通の人の言い訳に過ぎないのかもしれません(自省)。

お気に入り著者、シュミル教授との共通点

また、ビル・ゲイツを知る人の1人して、カナダ、マニトバ大学環境学部のバーツラフ・シュミル名誉教授が登場しています。

私はビル・ゲイツの2019年冬のおすすめ5冊の記事を書いたときにシュミル教授のことを知りました。

そのときには教授の著書『Growth』が選ばれていました。

「新作を待ち焦がれている『スター・ウォーズ』ファンと同じように、自分はシュミル教授の新著が待ち遠しいんだ」とビルが話していたのが印象的でした。

教授とビルの間には共通点があるようです。

(ビルは)知ることが好きで、複雑なことを理解したいと思っている。そして、私は書くことが好きで、複雑な世界を理解したいと思っている。

複雑なことを研究して執筆するのが好きな著者と、複雑なことを理解したいと思う読者。

グッゲンハイム監督からの「あなたの著書を全部読んでいる人は世界に何人いると思いますか」という質問に、教授は「誰もいないと思う。でも、ビル・ゲイツは一番それに近い人だ」と答えています。

キーワードその3:Curiosity

好奇心のかたまり

ビルを知る人たちは彼の「好奇心」についても触れています。彼は、若い世代に世界で活躍するためには好奇心が重要とアドバイスしていました。

ビル・ゲイツが重視する「好奇心指数」を伸ばすには? | ライフハッカー[日本版]

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パート3でビルとの出会いについて聞かれたメリンダさんいわく、「(マイクロソフトの社長という殻の)内側はとても優しくて心の暖かい、そして、すごく好奇心にあふれた人でした」と語っています。

また、前述の元マイクロソフトのマーケティングディレクター、スレイドさんはビルの本好きについてこう言っています。

ビルにとって何かを学ぶことは楽しいんだ。彼ほど学ぶことを楽しんでいる人には会ったことがない。

そう、好奇心は、彼を語る上でも欠かせないキーワード。映画では子ども時代にも触れられていますが、好奇心旺盛で学びが好きな子どもだったようです。

知識の蓄積を体現するビル・ゲイツ

ビルの頭脳の働きだけではなく、彼が読書や仕事をする環境も興味をそそります。

特に彼の自宅の書斎。

部屋というより図書館に近いかも?

そして、その知識だけではなく知識を現実の問題に応用する力、その能力を持っている人たちを集めて率いる能力。

読書は、知識を超えて、世界を変革する力を与えてくれると、画面からひしひしと伝わってきました。

Source: YouTube