ここ最近の株式市場は、下落傾向です。

S&P500は価値の20%超を失い、ハイテク株ではそれよりはるかに激しく下落しているものもあります。Netflixは暴落し続けており、Amazon株はほぼ40%下落しました。

お先真っ暗ですか?そうかもしれないし、違うかもしれません。

米国は第二次世界大戦以降、約14の下落相場を切り抜け(「下落」の定義にもよりますが)、そのうち景気後退に至ったのは約半分だけです。以下に8つの示唆に富む歴史的下落相場と、そこから学び得るいくつかの教訓について示します。

しかし、大局的に見れば、これらの下落相場で一貫しているのは1つの非常に重要な教訓です。それは、たぶん心配することはない、ということです。

1929年の暴落と世界大恐慌

1929年10月のロンドン。トレーダーがウォール街の暴落中に、ニューヨーク株式市場の変動を見守る。
1929年10月のロンドン。トレーダーがウォール街の暴落中に、ニューヨーク株式市場の変動を見守る。

米国史上最大かつ最悪の下落相場である1929年の恐慌と、世界大恐慌の幕開けとなった最悪ケースのシナリオを見ることにしましょう。1929年10月に恐慌が始まり、市場は3年間じり貧状態になり、1932年までには価値の90%を失いました。

その結果生じた経済的後遺症は、本当に文明を揺るがす出来事でした。

米国では、経済は50%縮小し、全銀行の三分の一が破綻し、失業率は25%を超えました(そうだすると、今の状況は悪いでしょうか?)。

1945年になって経済はようやく大恐慌前の水準を回復しました。

世界大恐慌から何を学ぶことができるでしょうか。それは、状況はそれほど悪くはならないだろう、ということです(少なくとも同じようにはならない)。

現在、私たちがいる金融世界は異なっています。貨幣はもう金に裏打ちされていません

ですから、流動性は確保されています。銀行預金は連邦政府により保証されています。大恐慌後のように国際貿易を制限したり、増税することで不況に対応することは考えにくいです(私たちはそこまで愚かではないと、少なくとも私は思います)。

実際、米国政府と連邦準備制度理事会は大惨事を阻止するためにかなりうまく協調しています。

下記の2008年および1987年の救済措置を見てください(すぐに説明します)。

1966年の「ベビーベア」

世界大恐慌が最悪の場合のシナリオだとすれば、1966年の「ベビーベア」相場は、最良の場合のシナリオといえるかもしれません。

2月9日の94.06の高値から市場は下落し始め、8月29日74.53の低値になりましたが、急速に回復しました。7カ月後には、94超に戻りました。好況から不況、そして回復に至る全サイクルは約450日で発生しました。回復にかかった期間は平均の約半分です。

ベビーベア相場から何を学ぶことができるでしょうか。

それは、何が株価の下落を引き起こすのか分からないことがあるということです。ベビーベア相場の原因に関する理論があります。ウォール街がベトナム戦争に過剰反応したとか準備制度理事会が通貨供給を引き締めたとか。でも実際に断言できる人はいません。

The “bear-free” 1990年代の「ベビーフリー」

1990年代は1920年代以降で下落相場が全くなかった唯一の10年です。株式の価値が20%下落しそうになったことが数回ありましたが、この特別な数字に達したことはありません。上げ相場がこの全10年間を支配したのです。

ビル・クリントンに感謝すべきでしょうか?グランジの出現でしょうか?断言するのは難しいです。

この時期の繁栄は新たに出現した技術に刺激されたものであり、この技術が絶え間なく拡大する経済を推進し、だからこそ、みんながこの成長の波に永遠に乗れるという約束でますます多くの人が「株買い」をしたのです。

いい時代は絶対終わらないように思われたのです!ずっと…。

1990年代のベアフリーから何を学ぶことができるでしょうか:「悪いことは二度と起きない、そうでしょう?」(咳ばらい)

2000年のドットコム暴落

2000年の暴落に至るまで何年も、意気揚々のベンチャー資本家がハイテク企業に資金を投入し、投資家はハイテク企業株に資金を投入したのです。すると、ますます大勢の「一般人」も投資を始めました。

もうけ話を逃したくなかったのです。

しかし、状況全体が悪化するときは、暴落とともに急速に悪化し、その後は痛々しい位に緩やかになります。市場が底値を打つまでにかかった2年半は耐えがたいものでした。

ドットコム暴落から何を学ぶことができるでしょうか:資産バブルでお金を稼ぐことができる人たちはいますが、あなたがこの人達のうちの一人になる可能性は高くありません。

普通の人が加熱した市場で手っ取り早く稼ごうとしたり、誇大広告に基づいて株式を買うのはほぼ間違いなく誤った考えです。

株式の価値を現実的に理解する方法を学んでから株式に投資しましょう。あるいは、専門家にあなたの資金を扱わせるほうがましです。

1970年代のスタグフレーション、低迷、下落相場

1970年代の状況は悪化していました。インフレーションは制御できなくなりました。失業者数は多く、財政赤字は膨れ上がっていました。

ガソリン価格は1ガロン当たり1ドルに近づきました。カーター大統領は、これを「信認の危機」であると、全米で放送された演説で非常に暗く述べていますが、演説を読まなければ信じられません。国家の低迷の真っただ中での景気後退は、1973年から1974年にかけての株式市場の暴落と下落相場ではじまりました。

1970年代の経済不振の正確な原因を確定することは困難ですが、少なくとも部分的には米連邦金利が低すぎたので経済がドルであふれ、これによりインフレーションが、そしてその次には「スタグフレーション」が発生したことにより引き起こされたと多くの人が考えています(スタグフレーションは失業者数とインフレーションの両方が高止まりする期間と定義されています)。

最終的な回復は、全体としては連邦準備制度理事会が方針を大転換し、連邦金利を急騰させたことにより達成されました(ある期間は、フェデラル・ファンド・レートは驚異的な21%に達しました)。

1970年代の景気後退から何を学ぶことができるでしょうか:それは、経済の治療には病気とほぼ同じように痛みを伴うけれども、耐え忍ばなければならないことがあるということです。

インフレーションを抑えるためには、連邦準備制度理事会は経済を景気後退に突入させ、失業率を10%以上に急上昇させました。

おまけの教訓:あなたが大統領であるなら、ニクソンのようになってはいけません。将来は自己破産を宣告するような経済学のバックグラウンドがない財務長官を任命してください。

1987年の「ブラックマンデー」暴落と下落相場

ブラックマンデーが起こると分かっていた人はほぼいません。好景気の1980年代は盛り上がっており、強欲は善であり、この10年の前半の景気後退は大部分忘れられていました。

しかし、性質が異なる経済的要因(レバレッジド・バイアウトに影響を及ぼした税制法案、多額の貿易赤字)が同時に発生したことで比較的小規模の市場不安が生じ、これにより雪だるま式にさらなる悪化を招きました。

1987年10月19日の月曜日、世界各地の金融市場で底が抜けました。米国市場では1日で22%以上下落。急落は非常に深刻であったため、コンピューターシステムが売り注文をすべて処理しようとして機能停止を起こし、国際金融システムが崩壊するのではないかと金融業界人は不安になりました。

しかし...そうはなりませんでした。1週間以内に、米国市場は、半分以上の価値を取り戻し、2週間足らずで完全に回復しました。景気後退はありませんでした。全くもって不快なウォール街の1週間でした。

ブラックマンデーから何を学ぶことができるでしょうか:それは、アラン・グリーンスパンがスーパーヒーローだということです

連邦準備制度理事会が動いて資金を放出し、金融機関が崩壊しないことを保証し、私たち一般人すべての日々の経済に対する影響を最小限に抑えたため、大惨事は全体として回避されました。これは、新聞を読まなければ気づかなかったでしょう。

2007年から2008年の大不況

2000年代後半の不況は、世界大恐慌以来最悪となりました。連邦議会の委員会はその後、不動産担保証券のパッケージ化や販売の規制がなく、証券会社が過剰なリスクを引き受け、消費者借入が過剰であった(特に不良住宅ローンへの投資)ことが主に不況の原因であったと断定しました。

多くの人は不況が発生している時点ではそのことが分かりませんでした。当然のことです。しかし、状況は非常に悪化していたため、連邦準備制度理事会は貸出をほぼ8兆円に拡大し、金利をほぼゼロに下げなければなりませんでした。

大不況から何を学ぶことができるでしょうか:2007年のことを思い起こすと、空が落ちるような感じがしませんでしたか?特に高い失業者数と住宅差し押さえの巨大な波を特徴とする下落相場を乗り切ろうとしている人にとって、すべての下落相場はそんな感じがするものです。

しかし、苦境は最後には過ぎ去ります。2009年までに価値の半分を失った株式市場は回復して2013年までには新たな高値をつけました。そして上がり続けています。

国家としては、この混乱は金融機関を規制することの重要性についての苦い教訓を理論的に教えました。

大不況により1930年以降で最も包括的な市場改革セットであるドッド・フランク法の可決をもたらしました(苦すぎる教訓は受け入れられませんでした。ドッド・フランク法の多くは2018年に廃止されました)。

2022年の下落相場

進行中の世界的な健康危機により生じた不確実性と、サプライチェーン危機やパンデミック刺激策により加速したインフレーションを抑える連邦準備制度理事会の利上げとの組み合わせ—これらが現在の不況の原因である可能性が最も高いです。

間もなく景気後退の期間に入るかもしれませんが、経済がこれからの数カ月や数年の間に著しくは縮小しないという期待を抱かせる根拠はあります

株式市場以外の経済指標は、比較的健全です。株式市場が住宅ローン利率の引き上げに応じて最近減速しているものの、失業者数は依然として低く、住宅需要はまだ強固です。幸運を祈りましょう。

2022年の下落相場から何を学ぶことができるでしょうか:まだ何もありません。将来のことは誰にも分かりません。

Source: NorthWestern, Barron's, NPR, 844, Marrota, Time, Britannica, The Motley Fool, CNBC