スキンケア、脱毛、メンズメイク…男性も美容にコストをかける時代になりました。しかし、「ただ見た目がよければいい」ということではありません。

「身だしなみ」や「メンテナンス」の大切さ、あるいは「姿勢」や「所作」なども含めたトータルとしての見た目、いわば「人として美しく在る」ことは、人の心をつかむ人間的な魅力につながります。

この「美しく生きる。」特集では、ビジネスパーソンとして、また人として魅力的であるために必要な知識やノウハウ、ストーリーをご紹介します。

今回は美容師で、美容系ユーチューバーとして登録者数19.5万人を誇る宮永えいとさんにインタビュー。意外なことに「もともと人に見られることが苦手で、引きこもり気味だった」という宮永さんに「見た目」を意識するようになったエピソード、そしてビジネスパーソンにとっての「身だしなみの重要性」について聞きました。今回は前編です。

▼後編はこちら

「見た目PDCA」をガンガン回すためにこれだけはやってほしいケア&NG | ライフハッカー[日本版]

「見た目PDCA」をガンガン回すためにこれだけはやってほしいケア&NG | ライフハッカー[日本版]

好きな女の子から「キモい」と言われた少年時代

見た目と心はつながっている――。

宮永さんはそんな確信を持って、YouTubeチャンネル「オトナ男子LABO」や自身が運営する身だしなみブランド「RETOUCH」で発信を続けています。

小学生の頃、トゥレット症(チック症)を発症し、「5秒に1回は奇声を上げたり、人前で言ってはいけない言葉を発してしまったりする子どもだった」と語る宮永さん。

好きな女の子から「キモい」と言われ、人の注目を集めないよう地味に過ごすようになり、家でインターネット掲示板を眺めるのが一番の趣味だったそうです。

そんな13歳の頃、ネット掲示版のファッション板にハマってお気に入りのコーデやヘアスタイルを見つけては自撮りし、投稿するようになりました。

ネットでは顔も出ないし、僕の奇声を聞かれることもない。その頃の自分にとって、もっとも居心地のいい場所でした。

言ってしまえば、そこではお気に入りのファッションで身を包んだ“理想の自分”でいられたんです。現実の自分とは見た目も性格も違う「もう一人の自分」を演じるような感覚でした。

「見た目」は仕事や人生に深く関わっている

ある日、掲示板で知り合った仲間と「オフ会」をすることになります。架空の自分を演じていた宮永さんは「本当の姿がバレてしまう」と参加を躊躇しましたが、「ここで自分を変えたい」と決意。

服と髪型をいつもの「理想の自分」通りにバッチリ決め、勇気を振り絞って原宿のファッションオフ会へ向かいました。

参加してみると、いつもの症状が出ません。インターネット上で演じていた通りの自分で居続けることができ、不安を感じることもなく、心から楽しく過ごすことができたのです。

「こうなりたい」と思って作り上げた見た目に、心が追従してくれた。それで見た目と心はつながっている、そう思ったんです。その後、僕のトゥレット症は徐々になくなっていきました。

この出来事がきっかけとなり、もっと見た目を磨いて自分に自信をつけたいと思い、美容師になりました。お客様の髪をカットすると、そのたびに「髪型を変えたらプレゼンがうまくいった」「見た目を変えたら女性と自信を持って話せるようになった」などと感謝されます。

見た目は仕事や人生に深く関わっている、そう実感しています。

カッコよくなくていい。センスもいらない

ただし、見た目といっても、顔がカッコいいとか、スタイルがいいとか、宮永さんが言っているのはそういう見た目ではありません。最も大事にしているのは「身だしなみ」であり、「清潔感」です。

いわゆる“イケメン”でなくても、背が低くても、薄毛であっても関係ありません。きちんと手入れをして「ベストの自分」「本来の自分」を作れていればいいのです。

見た目と心はつながっていると言いましたが、もっと言えば本来持っている自分の魅力を引き出すために、きちんとした身だしなみ=見た目が必要ということなんです。

これはビジネスシーンにおいても当然良い作用を及ぼします。「(身だしなみによって)自己肯定感、魅力が上がる」→「その状態でクライアントや同僚に会う」→「よいコミュニケーションが生まれる」→「評価が高まり、また自己肯定感が高まる」というサイクルが生まれ、誰に対しても堂々と接することができるようになるのです。

10代や20代のころは、「モテる」ためにファッションや髪型に気を付けていた、そういう人は多いでしょう。年を重ねるにつれ、結婚したり、子どもができたりして、だんだん自分の見た目に気を使わなくなっていった…そんなことはありませんか?

それはそれで構いません。アラサー以降の男性にとって必要なのは「モテる」見た目ではなく、「人に対して自分を整える」、ビジネス的な観点の見た目。別にカッコよくなくていいんです。

身だしなみにはセンスも技術も必要なければ、顔の造形なんて全く関係ありません。知識を持って正しい手入れをすれば誰でも磨けて、かつ、すぐに結果が出る有用なビジネススキルなんです。

ほとんどの男性が「圧倒的に自分を知らない」

一方で、街で見かけるビジネスパーソンで「本当に清潔感がある、と感じる人はごくまれ」と宮永さんはバッサリ。

30~40代男性のほとんどは圧倒的に自分の状態を理解できていない、そう感じます。ライフハッカー読者の皆さんにお聞きしますが、ちゃんと毎日鏡で自分の顔をまじまじと眺めて、細部までチェックしていますか?

ビジネスもそうですが、最初にやるべきことは自分の現在地を知り、目指すべきゴールを定めることでしょう。これを自分の見た目にあてはめて考えている人はほとんどいません。

ビジネスパーソンにとって、顔は名刺といってもいい。名刺交換のとき、汚れていたり、よれたりしている名刺を出されたらどう思いますか? 僕なら積極的に一緒に仕事をしたいとは思わないでしょう。

どこに出しても恥ずかしくない名刺にするためには、まず自分の状態を知ることが第一歩なんです。

学生時代、鏡で自分の顔を見ていたら「ナルシスト」とからかわれた、そんな経験がある人もいるでしょう。それもあって「男が鏡をまじまじと見るなんて」と思われるかもしれません。

女性は真逆です。日々鏡とにらめっこしながら「見た目PDCA」をガンガン回し、レベルアップしています。男性に比べて女性で不潔な人が圧倒的に少ないのは、鏡を見る回数や時間の長さに反比例している、とすら思います。

現代のビジネスパーソンにとって、鏡をチェックして自分という商品を観察することは必要な作業です。青ひげが目立っているな、クマがひどいな…そんな発見をしたら改善するために適切に髭剃りをしたりスキンケアをしたりして、どんどん改善していきましょう。

日々チェックし続けることで、自分の顔に変化が見られるたび、自信が生まれてくることを感じると思います。

これだけはやってほしい身だしなみ10選

日々鏡を見て、自分の悪い部分、改善したい点を見つけたら、それに向けて行動を開始しましょう。宮永さんは、「大人男子としてこれだけはやってほしい身だしなみ10選」として、以下のような項目を上げています。

  1. 洗顔料で洗顔すること
  2. 化粧水と乳液で保湿をすること
  3. 髭を剃るか、整えること
  4. 歯を磨き、歯間ブラシをすること
  5. 髪の毛のメンテナンスとスタイリングをすること
  6. 爪の手入れをすること
  7. 髪の毛を乾かしてから寝ること
  8. 体の毛をトリミングすること
  9. 足回りに気を遣うこと
  10. 衣類の洗濯、管理をすること

当たり前と思われるような項目もありますが、「これが全部できている人は意外なほど少ない」と宮永さん。逆に言えば、これらができているだけでも周りのビジネスパーソンとは清潔感で差別化できる、ということです。

後編では、上記身だしなみで大切な部分の解説や、スキンケア、ヘアスタイル、ファッションで最低限押さえておきたいポイントについて教えてもらいます。

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宮永えいと

都内有名ヘアサロン勤務を経て、フリーランス美容師として独立。ゴートゥデイ(GO TODAY SHAiRE SALON)でサロンワークをこなす。その傍ら、「大人男子の身だしなみ」をテーマにYouTubeで発信し、チャンネル登録者数は19万人以上。2020年、株式会社CiiKを立ち上げ、身だしなみをアップデートするブランド「RETOUCH」を展開している。著書に『大人男子の「超」清潔感ハック』(KADOKAWA)。

Source: オトナ男子LABO, RETOUCH/Photo: 大崎えりや