お金のことを考えるとき、「○○円稼げば(あるいは貯金すれば)、△△を買える」という風にそのお金で何を買えるか考えることが多いはずです。

しかし、経済的安定や自立、老後の資金など、長期的な財産を築くことを目指して努力しているなら「何を買わないようにするか」を考えることも大切です。

そう聞くと「収入より支出を少なくすべき」という使い古された決まり文句が思い浮かぶかもしれません。まさにその通りではありますが、それ以上にできることがあります。

目に見えない豊かさを知る

Morgan Houselさんが執筆した『The Psychology of Money』は、お金に関してバカげた行動を引き起こしてしまう、「感情的・論理的な誤解」について、深く研究された8,000語にもわたる論文です。

この論文には、「リスクはあっても破産しないチャンスを探す」から「複利で増える資産は、貯金目標を達成するかよほど経済的にひっ迫しない限り、決して中断すべきでない」まで、お金に関する考慮すべきことがたくさん書いてあります。

しかし、私の頭に真っ先にインプットされたのは、目に見えないもので作られる「豊かさ」があることを説明していたところです。

20万ドルの車を運転している人を見かけたら、その人の貯金は車の購入前より20万ドル減ったことは確かです。でも、その車がリースだったら、話は別です。

(中略)

「豊かさ」とは目に見えないものです。買おうかなと思った車やダイヤモンドを買わないとき、改修を延期したり洋服の購入を見合わせたとき、ファーストクラスにアップグレードしようとして断られたとき、どの費用も目に見えないお金になって銀行口座の残高を増やしています。

しかし、私たちは普段そんな風にお金のことを考えていません。目に見えないものにストーリーをつけて考えられないからです。

The Psychology of Money』より引用翻訳

とは言え、「何も買わない」わけにはいきません。そんなことをしたら立ち行かなくなるからです。

また、「豊かさ」は、銀行口座と投資口座の残高だけで測るべきではありません。「豊かさ」の基準は人ぞれぞれ。

家族や友人やペットや機材をゆったりと乗せられるぐらい大きな車を持つこと、人を招いて一緒に食事できるぐらい大きなダイニングルームがある家を持つこと、年に何度か旅行できることが「豊かさ」だと思う人もいます。

豊かさのために、買わないものを決める

しかし、長期にわたって経済的に安定すると、旅行する習慣をこの先10年間続けやすくなります。結局それが、いくら稼げるか、そして何にお金を使わないかで決まります。

ですから、お金のことを考えるときは、近い将来何を買えるかという観点ではなくて、まだ使い道を決める必要がない資産として考えるようにしてください。そして買わないことにするものを決めましょう

福利を増やす、投資する

次に、複利がつく口座(CDラダー、インデックスファンドなど)に投資できる金額を決めます。それぞれの口座に、「頭金」「将来の旅行資金」「老後資金」などの用途を割り当ててもいいかもしれません。単純に「資産を増やすぞ」と自分に言い聞かせるだけでもいいですよ。

そして、複利が付き始めたら、貯金目標に到達するか経済的によほどの緊急事態にならない限り、解約しないことです。

――2019年9月3日の記事を再編集のうえ、再掲しています。

訳:春野ユリ