最近、友達に「すごく忙しくて大変!」と言われた時のことを思い出してみてください。
そう言われて、どんな言葉を返しましたか?「なんだ、あなたもなの?」と返した人はいませんか?
もしそうなら、あなたは、ある社会学者が「会話におけるナルシスト」と呼んでいるタイプの人間かもしれません。
そうした受け答えが、知らぬ間に人間関係に悪影響を及ぼしている可能性さえあるのです。
会話におけるナルシストになっていませんか?
人は誰かに同情を示す時に、自分の経験を引き合いに出しがちです。
「今朝、渋滞にはまって大変だった? じゃあ私が数カ月前に味わった、とんでもない渋滞の話を聞いてちょうだい!」と、つい言ってしまうものです。別に悪気はないのです。
あなたの気持ちはよくわかるよ、と伝えたいばかりにそう言っているだけなのですから。でも、相手の気持ちなんて、本当のところはわかりません。
それどころか、相手に自分の気持ちを押し付けることで、相手の気持ちを知らず知らずのうちに矮小化していることもあるのです。
著述家のCeleste Headlee氏も、そうした体験をした1人です。
シフトレスポンス(ずらし反応)は、NG
Headlee氏の体験は、著書『We Need to Talk: How to Have Conversations That Matter(私たちには会話が必要:意味ある会話をするためのハウツー)』に綴られています。
その抜粋が「HuffPost」に掲載されていたので、ご紹介しましょう(私自身はこの話を「Extraordinary Routines」の記事経由で知りました):
数年前、仲の良い友人がお父さんを亡くしました。彼女は職場の外にあるベンチに1人ぼっちで座り、微動だにせず、ただ地平線を見つめています。
憔悴しきっていて、私も何と声をかけたら良いのか、見当もつきませんでした。悲しみに沈み、心が弱っている人に、つい言うべきでないことを言ってしまうというのはよくある話です。
そこで私は彼女に、自分は父親を知らずに育ったという話をしました。私の父親は私が生後9カ月の時に潜水艦の事故で亡くなったので、私は父のことを何も知りません。それでも父がいなくてずっと悲しい思いをしてきたと伝えました。
私は友人に対して、あなたは1人じゃない、私も似たような経験をしてきたから、あなたの気持ちはわかる、と伝えたい一心でした。ところが、私が自分の話をし終えると、友人は私を見つめ、こんな辛辣な言葉を返してきました。
「わかったわ、Celeste、あなたの勝ちよ。あなたにはずっと、お父さんがいなかった。私は少なくとも、30年間、自分の父親と過ごす時間があったんですものね。あなたのほうが大変だったっていうことでしょう? たかが父親が死んだくらいで、私はこんなに取り乱すべきじゃないっていうことなのね」
Headlee氏が友人にかけた言葉は、社会学者のCharles Derber氏が「シフトレスポンス」(ずらし反応)と呼ぶものです。これは「サポートレスポンス」(支える反応)と相対する概念です。
シフトレスポンスとは、会話をしている相手に対し、話を続けるよう促すのではなく、自分自身の体験に話題をずらしてしまう行動です。
相手に必要なのは「サポート」すること
「シフト」ではなく「サポート」するための一番簡単な方法は、つい「実は私もそうなの!」と言いたくなる気持ちをぐっと抑えて、相手にさらに質問を投げかけることです。
以下に、Headlee氏が紹介していた実際の会話の例を挙げましょう:
<シフトレスポンス>
メアリー:私、今とても忙しいの。
ティム:僕もだよ。本当にいっぱいいっぱいなんだ。
<サポートレスポンス>
メアリー:私、今とても忙しいの。
ティム:どうして?何をしないといけないの?
<シフトレスポンス>
カレン:新しい靴を買わないと。
マーク:僕もだよ。今履いているのは壊れかけているんだ。
<サポートレスポンス>
カレン:新しい靴を買わないと。
マーク:そうなんだ? どんなタイプにするつもり?
特に相手が悲しみに沈んでいる時は、シフト的ではなく、サポート的な対応を取ることが大切です。
大好きな人が傷ついている時には、「お気の毒に」とか、「大変そうですね」といった言葉をかけるだけではとても足りないように思えるものです。
でも、悲しみを吐き出す場を与えてあげて、きちんと話を聞いているという態度を示すことのほうが、あなた自身の体験を語って、相手に自分の悲しみと無理やり比較させるよりも、ずっと心を癒す効果があるのです。
――2019年7月3日の記事を再編集のうえ、再掲しています。
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訳:長谷 睦/ガリレオ