Googleとその親会社Alphabetは、検索からAI、自動運転車、ライフサイエンスまで幅広い領域でイノベーションを起こそうとしています。これに携わる17万人の優秀な従業員を統括するのがCEOのサンダー・ピチャイ氏です。

創設者のラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏をはじめとする多くのメンバーが、同氏に信頼を置いています。リーダーとして支持される理由はどこにあるのでしょうか?

ピチャイ氏は今年5月に開催されたGoogle I/O 2022の舞台裏で、アメリカのインフルエンサー、ジャスティン・エザリック氏のYouTubeチャンネルに出演しています。

そこにはピチャイ氏の人柄や仕事に対する姿勢が現れ、リーダーに求められる条件へのヒントが散りばめられていました。本記事では、ピチャイ氏に備わったリーダーとしての資質やマネジメント手法を探っていきます。今回は前編です。

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「AIで世界を変える」Google・ピチャイCEOのモチベーションが枯渇しない理由 | ライフハッカー[日本版]

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評価の高さは謙虚さと情熱から

インタビュー動画を観るとすぐに伝わってくるのが、ピチャイ氏の内省的な人柄です。エザリック氏の質問に応じるピチャイ氏の丁寧で穏やかな振る舞いがとても印象的。

競合テック企業には、トップダウン型で企業を引っ張るリーダーも多い中、ピチャイ氏にはまた違ったリーダー像が垣間見えます。

2004年にプロダクトマネージャーとしてGoogleに入社したピチャイ氏は、Chromeの開発チームを率いてマネジメント手腕を発揮しました。それ以来、経営陣やメンバーからの信頼を積み重ね、2015年にはGoogleのCEOに、2019年にはAlphabetのCEOに就任しています。

ペイジ氏とブリン氏がAlphabetの経営から退く際に発表したファウンダーズレターには、ピチャイ氏を後継者として指名した理由が示されていました。

ピチャイ氏が“テクノロジーに対する謙虚さと深い情熱”により、ユーザーやパートナー、従業員に恩恵をもたらしていること、Alphabetの“テクノロジーを通じて大きな課題に取り組む能力”について理解し尽くしていること、が評価されたことが読み取れます。

企業のミッションと個人のミッションが一致

ピチャイ氏の“テクノロジーに対する謙虚さと深い情熱”は、エザリック氏によるインタビューにも表れていました。

エザリック氏が「キャリアの中で最も重要でインパクトを感じたこと」を尋ねるとピチャイ氏は、「AIに投資しプロトタイプを試し、聴覚障がい者や難聴者、言語の理解できない人に提供したこと」と答えています。

こういった瞬間にテクノロジーの素晴らしさを実感し、仕事への情熱の源となっていると明かしています。

また、自身も情報へのアクセスの限られた環境で育ったピチャイ氏。

今でも世界中の地を訪れ、そこで暮らす人々のテクノロジーへの渇望を肌で感じ取ってはアクションに繋げています。たとえば、ピチャイ氏が注力するインドでの安価で高性能なスマートフォンの開発や、アフリカでのプロダクト開発センターの設置といったものがそれです。

Googleは情報を世界中の人に届けることをミッションとして掲げていますが、これがピチャイ氏個人のミッションと完全に一致。GoogleおよびAlphabetの能力にレバレッジを効かせる方向に働いているのでしょう。

メンバーの価値観と能力を活かすボトムアップ型マネイジメント

従業員ひとりひとりに裁量を持たせる、オープンなカルチャーが有名なGoogle(全従業員が自分の関わっていないプロジェクトや従業員のソースコード、OKRにまでアクセス可能)。スタンフォード大学でのインタビューでもピチャイ氏は、「Googleは全従業員をもとに成り立っている」と話しています。

でもAlphabetの企業規模で、ピチャイ氏は多様なバックグラウンドを持ったメンバーをどうマネジメントしているのでしょうか。

インタビューの中でピチャイ氏は、独自のマネジメント手法を明らかにしています。

ピチャイ氏は、組織が大きくなるにつれて課題意識や価値観といったコンテクスト(背景、状況、場面、文脈)の共有が難しくなっているのに気づきました。透明性は重要でも、それだけでは不十分。そこでピチャイ氏は、組織をより小規模なチームに移したといいます。

自発的な取り組みを最重要視

インタビューにてエザリック氏が求めた「困難に立ち向かう若者へ向けてのアドバイス」の回答に、ピチャイ氏のマネジメント手法の本質が浮かび上がります。

ピチャイ氏は、リソースを投入すべき“好きなこと”(ピチャイ氏にとってに聴覚障がい者や難聴者、言語の理解できない人にAIテクノロジーを提供するなどかそれにあたりそうです)に取り組んでいるときはそれが実感できるはずなので、先が見えなくても“最善を尽くして取り組む”ことがすべてだと力説。

AlphabetやGoogleでも、従業員の自発的な取り組みを最重要視しているはず。

ピチャイ氏自身、プロジェクトマネージャー時代にChrome開発の提案をシュミット氏に退けられたのは有名な話。それでも自分が正しいと信じ、密かに小さなチームを作ってChromeの開発を進めたことで、ご存じシェアNo.1のブラウザが生まれました。

スタンフォード大学のインタビューにてこのエピソードを語った際にピチャイ氏は、「献身的な人々と情熱的な人々がセットになれば、最終的にどうなるか予測できなかったとしても達成できる」と述べています。

従業員の価値観と能力に信頼を置き、これを最大限に活かそうとするマネジメント手法は、自身の経験に裏打ちされて確立されたものかもしれません。

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Source: YouTube/ iJustine, The Keyword, YouTube/ Stanford Graduate School of Business