「教育をお金であきらめない世界」の実現を目指し、2020年に学費あと払いのISAモデルを支払い方法の1つとして採用したエンジニア養成学校「CODEGYMを開校した鶴田浩之さん

10代で起業した経緯や、30代に情熱を注ぐと決めた教育事業について語ってもらった前編に続き、鶴田さんご自身の働き方やプライベートについてうかがいました。聞き手はライフハッカー[日本版]編集長・遠藤祐子です。

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「13歳でプログラミングを独学、高1で親の収入を超えた」コードジム 鶴田浩之インタビュー | ライフハッカー[日本版]

「13歳でプログラミングを独学、高1で親の収入を超えた」コードジム 鶴田浩之インタビュー | ライフハッカー[日本版]

24時間、仕事のことを考えている

──鶴田さんはどのような1日を送っているのですか? 起床時間は?

最近は子どもの寝かしつけで一緒に寝てしまうことも多いので、朝5時くらいには目が覚めて、考え事や仕事をはじめることが多くなりました。コロナ禍で都心から離れた場所に越して、家庭菜園をするようになってからは、朝は野菜のお世話をしながら事業構想を練ったりする、大事な1人の時間になっています。

8時ぐらいに妻と2歳の娘が起きてくるので、それにあわせて朝食をつくったり、娘を保育園に送ったり。そこから1時間ぐらい二度寝することもあります。

子どもが産まれてからは夜も早くなって、20時以降は生産性も上がらないので、仕事はしないように意識していますね。

在宅勤務で家族との時間も増えましたが、やっぱり経営者というのは時間労働ではないので、考えごとは24時間体制ですね(笑)。

(※編集部注:この取材のあと、8月に第二子が誕生し、鶴田さんは二児の父になりました)

──休みの日はどんな過ごし方をされていますか?

家庭菜園とメダカのお世話、あとやっぱり一番は長女と遊ぶことですね。おてんばさんで、よくしゃべるようになりました。電車が見える公園に連れていって、一緒にシャボン玉をして遊んでいます。

一番の趣味でライフワークになっているのが料理です。1週間に10食以上はつくっていて、週末は3食すべて僕がつくることもあります。冷蔵庫にあるものだけでつくるのもけっこう得意です。

ネットなどでレシピを調べることもありますが、見るのは材料だけで、あとは経験値とトライアンドエラーでおいしくするという感じ。知らないことはリファレンスを参照しながら自分のやり方で調整する、というところがプログラミングと似ていますね。

料理もそうですが、僕はよくプログラミングの学習をピアノなどの楽器の習得にたとえます。ピアノは、いくら理論の本を読んでも楽譜を読んでも、うまくは弾けません。先生に週1回のレッスンを受けても、ちゃんと自分で練習しなければダメです。鍵盤に毎日さわることが何より大切ですよね。

だから率先して台所に立っています。努力をしないとうまくならないのもプログラミングと同じです。そして、好きだから夢中になって、気づいたら上達するというのも似ていますね。

植物の強さに癒やされ、活力をもらっている

──経営者として働くなかで、心が折れるときはありますか?

それはもう、毎日折れています(笑)。気合を入れたサービスが滑ったりとか、投資家からお見送りの連絡があったりして、日々一喜一憂しています。起業してからずっと長いジェットコースターに乗っている気分です。

そんなときは、植物や野菜を見て癒やされています。日に当てて、水さえあげていればとりあえず育ってくれるじゃないですか。昨年収穫したこぼれ種から芽が出たりしていると、強いなあって勇気をもらいます。

今年はチャレンジとして、ナスとトウガラシの越冬栽培に成功しました。日本では普通は冬には枯れてしまいますが、実は多年草なんです。

そう考えると、子どもとか学生とか植物とか、何か「自ら成長するもの」から元気をもらっているのかもしれませんね。

──運動の習慣はありますか?

少し前から、いわゆるWeb3界隈で話題のムーブトゥアーンのブロックチェーンゲームをはじめて、毎日50分ぐらい散歩しています。NFTのスニーカーをいくらかで買って、それでちゃんと歩くと、レートは日々変わりますが、1日3,000円ぐらいのトークン(ブロックチェーンで発行される仮想通貨)が付与され、いわゆる「稼げるゲーム」といわれています。

最初に買ったNFTスニーカー以上に稼げることもあって、副業にしている人もいますが、仮想通貨は価格変動が激しく、本業に集中できなくなるので、僕はチャートは2週間に一回くらいしか見ていません。今は歩いた距離や時間の運動記録アプリだと思って使っています。

出社するときは、1駅分歩いてから電車に乗るなど、歩くことが趣味になりました。リモートワーク社員と1on1で通話する際も、歩きながらやると会話が弾みますね。ジョブズもよく歩きながらミーティングしていたと聞いて、なるほどなと思いました。

高校生のときはバドミントン、大人になってからは誘われてトライアスロンに挑戦したこともあります。今は時間を見つけては登山、ソロトレッキングをしています。

──愛用のガジェットは?

月並みですけど、Macですね。高3のときに使いはじめたユニボディからずっとMacbookです。スマホは iPhoneですが、先日 Googleからのギフティングで「Pixel 6 Pro」をいただいてから魅了されてしまい、Google関連のサービスを使うときと、子どもの写真撮影には、完全に Pixel派になってしまいまいた。

あとは、ガジェットではないのですが、昨年、日本市場で一度大きく値下げされたタイミングで、TESLAの「モデル3 ロングレンジモデル」を買いました。

僕はここ数年、物欲がぜんぜんなくて。前編で、10代のときに2回インドに行ったとお話ししましたが、そのときに「事業に失敗したり破産をしたりしたとしても、僕はどの国の水準でも幸福を感じられるな」って思ったんですよね。

ですが、テスラだけは違いました。「物欲」として明確に欲しかったんです。2011年、テスラが日本にまだ十数台しかなかったとき、知人2人がオーナーで、一度乗せてもらったのですが、ビックリしました。

ガラケーからスマホに変わったぐらいの、不可逆というか、驚きと感動があって…。ここ7〜8年で唯一湧いた物欲かもしれません。

さまざまなジャンルとのセレンディピティを大切に

──情報収集はどのように行なっていますか?

以前はRSSリーダーに20媒体ぐらい登録して、それこそライフハッカーやギズモードなどもよく読んでいました。今は、キュレーションされた情報が入ってくるようにツイッターのタイムラインを整理するくらいでしょうか。

コードジムの事業には長く集中したいと思っているので、最近あえてノイズとなる情報をシャットアウトしているというところもあります。トレンドをウォッチするよりも、読書とか、古典的な手法が今後も増えそうです。

──自分の能力を伸ばすためにしていることは?

本はジャンルを問わずなんでも読みますね。一見すると自分には関係がないとしてしまいがちなジャンルから受けるインスピレーションやセレンディピティ(偶然の出合い)を大切にしているので、生命科学や物理学、人類史など、幅広く教養として読むようにしています。

──やらないと決めていることはありますか?

タバコはやらないですが、それじゃつまらないし…何かあるかな。事業で借金はするし、お酒もたくさん飲みますしね(笑)。

強いて言うなら「評論家にはならないようにする」ということでしょうか。自分が関わって変えられる世界だったら、意見はします。でも僕のフィールドじゃなければ、あまり口はつっこまないようにしていますね

政治とかはまさにそうで、僕には起業家としてイノベーションを目指したり、雇用も生み出したりして世の中を良くしていくという役割があると思っているので、自分が貢献できない分野にコメントすることはほとんどありません。

──ビジネスで成し遂げたいことは?

EduTech、FinTech、HRTechの3分野にまたがる新しい世界観を手がけているようなものなので、事業をつくるというより産業をつくりたいという思いが強いです。僕が関与しなくなったあとも、つくったものが持続可能に残り続けることを目標にしたいと思っています。

あと最近、自分の中で整理されはじめたのは、1年でユニコーンの実現を目指すよりも、30年間、増収増益の会社をつくりたいということです。

個人的野心としては、1億人に使われるサービスをつくりたいですね。一般消費者向けのプロダクトで起業した人間なので。今は社会的な意義のもと、教育事業に集中していますが、また何年先か10年先か、どこかでプロダクトに戻るタイミングがあったら、挑戦したいです。

1000万人に使われるサービスまでをつくったことはありますが、1億人というとグローバル規模ですし、これは未知の領域。それだけ世界にインパクトを与えられるということだと思うので、死ぬまでにやってみたいことの1つです。

あとは、個人的には兼業の漁師か農家になりたいですね。1日4時間だけインターネットで仕事して、あとは魚釣りをしたり野菜を育てたり。ほかには、世界の実業家がそうしているように僕もいつか宇宙には行ってみたいです。

挙げはじめると、やりたいことは際限なく出てきますね。先のことはわからないので、目標はすぐに更新されてしまうかもしれませんが、結局は僕が教育という転職を見つけたように、昔からやりたいなと思うことに立ち返るのでしょうね。

教育事業で世の中を良くすることに情熱を注ぐこと。それが当面のミッションですね。

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「13歳でプログラミングを独学、高1で親の収入を超えた」コードジム 鶴田浩之インタビュー | ライフハッカー[日本版]

「13歳でプログラミングを独学、高1で親の収入を超えた」コードジム 鶴田浩之インタビュー | ライフハッカー[日本版]

鶴田 浩之(つるた・ひろゆき)

1991年、長崎県生まれ。13歳のときからWebサービスをつくり始め、16歳で起業。慶應義塾SFCに入学後、20歳のときに株式会社Labitを創業。リクルートグループ、Gunosy、KADOKAWA等に事業譲渡/M&Aを経験後、2017年に株式会社メルカリに参画。メルカリの新規事業の創出を担うグループ会社、ソウゾウ執行役員に就任。2016年、渋谷・道玄坂に新刊書店・コーヒースタンド「BOOK LAB TOKYO」をオープン(2018年にインフォバーングループへ営業譲渡)。2019年に株式会社LABOTを設立し、2020年より日本初「出世払い」を支払い方法の1つといて採用したオンラインのエンジニア養成学校「CODEGYM 」を展開している。

※株式会社LABOTは、2022年9月に、株式会社CODEGYMに商号変更を予定しています。
※株式会社LABOTは株式会社メディアジーンの投資先です。

Source: コードジム(1, 2)/Photo: YUKO CHIBA