「創業者ができる最高のことは引き算だ」(Tobi Lutke CEO)
カナダの大手eコマース「Shopify(ショッピファイ)」のCEOが、年頭あいさつメールでこのように述べ、3人以上集まる定例会議の全面撤廃を発表しました。
MetaやTwilioが会議禁止の曜日を設けたのを見習って、水曜をミーティングフリーデー(会議禁止の日、ノーミーティングデーとも)に指定したほか、大人数のチャットも禁止して業務連絡だけに制限。
50人を超える大会議は週1木曜だけにして、6時間のタイムリミットが来るとボットが強制終了する徹底ぶりです。
また、これらに該当しない会議については、誘われても堂々と断るよう全社員に命じました。
「断れない」を鶴の一声で解消
あるアンケートでは、従業員が会議に割く時間は平均週18時間ほどで、辞退したい会議が31%なのに、実際に断る会議は14%だけ。
残りの会議は出たくもないのに無理やり出させられていて、重要でもなんでもない会議に貴重な人員を割かれることで、世の大企業が被る不利益は年間約1兆ドル(約130兆円)にものぼることがわかっています。
ところがリモートワークの影響で、会議の時間は伸びるばかり。
パンデミックの最初の2年で会議の時間は3倍に伸び、週例会議の回数は2倍以上に増えたというデータもあるほど(Microsoft社が31カ国3万1000人を対象に行なった調査結果「2022 Work Trend Index」より)。
パンデミックは一段落したけど、悪しき慣習というものは、増えることはあっても減ることはありません。そこでトップダウンでカットというわけです。
Bloombergが入手したメールの中で、CEOはこう語っています。
人は引き算より足し算に流れやすいものだ。誘いに乗れば、その場は良くても、ほかがなおざりになる。
何かにYESと答えることは、同じ時間にこなせたそれ以外のことすべてにNOと答えることにほかならない。
あれもこれも足し算を続けていくと、消化できることが少なくなっていって、しまいには現状維持で満足する人間が増えてしまう。
コロナ篭りの時はZoomと並ぶ急上昇株だったShopify。昨年は株価が75%も下落し、社員1万人中1000人のレイオフを断行しました。
会議を減らして、残った社員でなんとかまわしていこうというわけです。
会議はディープワーク阻害要因
ハーバード大学が2014年に行なった調査では、ある大企業が週例会議に費やす時間は年間30万時間という恐ろしいものでした。今はもっと長くなっていても不思議じゃありませんよね。
Lutke CEOがいうように時間はゼロサムで、あっちを取ればこっちに時間は取れません。
誰にも邪魔されずに集中しないと終わらない作業のことを英語で「Deep Work」といいますが(命名したのはジョージタウン大学のCal Newportコンピュータサイエンス教授)、会議だらけの日はDeep Workができないので、どうしても社員はその穴を埋めようと朝早く出社したり、夜遅くまで残ったり、週末にまわしたりしてしまいがち。
これを問題視する中間管理職は洋の東西を問わず存在します。
会議の7割は、はじまる前に終わっている
いったいどれぐらいの会議が「無駄な会議」(コミュニケーション、協力、やる気を減退させるだけの会議)なのか。
ノースカロライナ大学が多業種の上級管理職182人に行なったアンケートでは次のような数字が出ています。
会議のせいで自分の仕事が終わらない:62%
会議は生産性と効率にマイナスになる:71%
会議があると深い考えがまとまらない:64%
チームの距離を縮めるせっかくのチャンスを無駄にしている:62%
(Source:Harvard Business Review)
会議で仕事の能率が落ちるくらいなら、やらないほうが会社のためですし、上級管理職も7割は薄々そう感じているってなわけです。
ミーティングフリーデーを設けるだけでも違いは出る
昨年10月に同大が発表したデータによれば、ミーティング全廃で削減できるコストは、従業員100人規模の会社で年間250万ドル(約3億3000万円)、5000人以上の会社で年間1億ドル(約132億円)。
すっかりコスト食い潰しの悪しき慣習という認識になっちゃってて、「ぎっしり会議で埋まってる予定表がステータスシンボルだったのは昔の話で、今はリーダーシップと判断力の欠如の証明と化している」(Forbes)という手厳しい意見も。
いきなり全面撤廃はムリでも、ミーティングフリーデー(その曜日は全社員がカレンダーをブロックして会議を入れないようにして、集中力の要る作業にお互い没頭する取り組み)は、週休3日制より生産性向上に効果があるとフィル・リビンEvernote共同創業者は言ってます。
会議がマンネリ気味の企業は、今年トライアル的に導入してみるのもいいかもしれませんね!
執筆:satomi/Source: Shopify, Microsoft, Bloomberg, Harvard Business Review (1, 2), Forbes, Twitter
ギズモード・ジャパンより転載(2023.1.5公開記事)