31歳無職の男性は59歳会社員の父親と58歳のパート勤めの母親と暮らしている。男性は大学中退後、バイトを少ししただけで働いておらず、「親亡き後も生活していけるか」とFPに相談。試算で80代まで何とか生き延びることができることがわかったが、父親がFPに「あんたは一生働かないで、遊んで暮らすことを勧めているのか」と激怒した――。
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31歳無職の息子「将来の状況を診断してください」

「ひきこもりの本人です。仕事はしていません。将来の状況を診断してください」

佐藤卓也さん(仮名、31歳)からの相談依頼はメールで届きました。

筆者はファイナンシャル・プランナーとして、ひきこもりの将来の家計状況のシミュレーションを多く手掛けています。依頼のほとんどは両親からのもので、「自分たちが亡き後も、子どもが生活していけるのか」というものです。現在の貯蓄や家計状況を伺って、将来の状況を分析していきます。その結果を報告し、必要であれば改善策を提案しています。

時にはひきこもっている本人から相談をいただくことがあります。インターネットで見つけてメールで申し込んできます。ご本人からの依頼の場合も基本的には同じように分析しますが、私のシミュレーションでは親とひきこもりの子の家計を1つのものとして計算していきます。親の財産額が必要ですし、毎月の家計を把握しているのもたいていは親です。本人からの依頼だと、そのあたりを把握できないことが多く、正確な分析が難しいのが現状です。

私は、依頼者の卓也さんにそんな状況を説明し、できる限り把握してみるように伝えました。わからない部分については“仮定”で分析するということも併せてお話ししました。

後日、オンライン会議システムを使って卓也さんと面談すると、割と詳細に調べていました。父親(59歳・会社員)とは折り合いが悪いのですが、母親(58歳・パート)とは良好で、家計診断をすることを説明すると、協力してもらえたそうです。今に至った経緯も話してくれました。