Appleは今週、2022年12月期の決算を発表しましたが、その内容は大半が悪いものでした。収益は前期から5%減少し、四半期としては2016年以来最大の落ち込み。利益は13%減で、iPhoneの販売は前年同期比で8%減でした。

専門家によると、Appleは二重苦を被っているのだそうです。まず、テック業界全体に影響を及ぼしているのと同様のインフレおよび不況の懸念があります。

そして、中国。新型コロナによる封鎖で、Appleは11月に同社最大の工場を閉鎖せざるを得なくなり、製品の製造能力が制限されました。この封鎖で中国での売上も減少し、同四半期は7%減となりました。

アナリストは、全体の売上が今期さらに4%落ちると予測しています。

それにもかかわらず、Appleの四半期報告書とそれに関するティム・クックCEOのコメントに、ある言葉が使われていないことが一際目立ちました。「レイオフ」です。

Appleとレイオフ

業界の流れ(昨年初めからテック企業各社で合計20万人が一時解雇されたと言われています)に逆らい、Appleは今のところ、レイオフを発表していない唯一の大手テック企業となっています。

実際、レイオフはAppleのやり方ではありません。1997年、周知の通りスティーブ・ジョブズがAppleのCEOに復帰し、製品ラインを削減することで集中を進めコストを削減した時以来、同社は話題となるような大規模なレイオフは行なっていません。

もちろん、これはAppleが今後もずっとレイオフを回避できるということでことはありません。もし同社がサプライチェーンの問題や収益低下に苦しみ続けるなら、選択の余地はないと判断することもあり得ます。

しかし、クックCEOがこれまで「レイオフ」という言葉を口にしていないこと、そしてAppleが最後に大規模なレイオフを行なってから四半世紀が経っていることは、クックCEOと前任のジョブズ、両氏のリーダーシップを雄弁に物語っています。

ここでは、Appleの例からあらゆるリーダーが学べることをご紹介します。

長期的な視点でリードする

Appleが減収を示唆した11月、クックCEOはインタビューの中で、Appleが採用を減速させており、まったく採用を行なっていない分野もあることを認めました。

しかし、次のように付け加えています。

私たちは、長期的な視野で投資することが重要だと確信しています。また、成功に近道があるとは思っていません。投資を行なってこその成功だと考えています。

この長期的な視点は、どちらの場合にも当てはまります。過去数年間、ほかの大手テック企業は急速な採用活動を行ない、今ではレイオフが必要だとしています。一方Appleは、当時採用を行なっていたもののペースははるかにゆっくりでした。

2019年秋から2022年秋にかけて、Amazonの社員数は100%増、Meta(Facebook)は94%、MicrosoftとGoogleはそれぞれ50%超増加しました。この各社は今、数万人の社員を一時解雇しています。

一方、同じ3年間にAppleの社員数はわずか20%しか増えませんでした。また、ほかのテック企業が技術者を惹き付けようと行なってきた、無料の食事などの贅沢な福利厚生も提供してきませんでした。

ブランドはもっとも貴重な資産。相応に扱う

AmazonやGoogle、Facebook、Microsoftの各社は自分たちのブランドを大事にしていない、と言いたいのではありません。もちろんしています。

しかし、Appleほど熱心に自分たちのブランドを大切にし、力を注いで守っている企業は、規模の大小を問わずほかに思いつきません。

そのアプローチは同社に大きな利益をもたらしています。Appleの顧客は、製品の「開封」動画をSNSに投稿し、時には非常に高価な同社の製品に喜んで追加費用を出すほどAppleブランドに傾倒しているのです。

レイオフがブランドを傷つけるということは否定できません。また、研究によれば、あまりコスト削減にもならないと言われています。

では、なぜ行なうのでしょうか。

1つは、ウォール街がレイオフを好むからです。たとえば、Metaがコスト削減を発表し、さらにレイオフを行なうことを示唆したあとで、同社の株価は23%上昇しました。

つまり、レイオフの問題は、自社のブランドと株価のどちらのほうが大事か、ということに尽きるのかもしれません。

Appleは明らかにブランドを重視しており、やはり長期的にはそれが正しい判断となるのでしょう。Appleの株価は、レイオフに触れずに決算報告を発表すると、約4%下落しました。しかし、株価はすでに一部持ち直しています。

周りに流されない

スタンフォード大学のジェフリー・フェファー教授は、最近のインタビューで次のように断言しています。

企業がレイオフを行なう理由を探るとすれば、その理由はほかの誰もが行なっているからです。

レイオフは模倣行動の結果であり、特に根拠があるわけではありません。

その通りかもしれません。最近行なわれたレイオフには、紛れもなく「猿真似」的なところがあります。

きっかけはTwitterです。同社の新オーナーであるイーロン・マスクが社員の大幅削減を行ないましたが、それにはTwitterに特有の理由経済全体とはあまり関係のない要因がありました。

それにもかかわらず、Twitterによる一時解雇が発表されると3ヶ月も経たないうちに、Microsoft、Google、Facebook、Amazonなど、多くのテック企業がレイオフを発表したのです。

Inc.comでの同僚のビル・マーフィー・ジュニアが気づいたように、そのうちのほとんどが社員のちょうど13%のレイオフ、あるいは12~14%ほどです。これが「まねっこ遊び」でないなら何でしょうか。

そして、「Think different発想を変える)」を長らくモットーにしてきたのがAppleです。長く勤めてきた忠実な社員を追い出す傾向が強まっている今、「発想を変える」というのは非常に良い考え方に思えます。

レイオフ以外にできることはないのか

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そして、そうした人たちから返信を受け、しばしば会話になることも。そこで分かったのは、たくさんの人がレイオフの影響を受けているということです。その理由は、社員を解雇しなければならなかったり、自分が解雇されたりしたことにあります。

経営者にとっても社員にとっても、レイオフはいつでもトラウマになるものです。ティム・クックCEOのように、本当に賢明なリーダーたちはレイオフを避けるためにできることは何でもするのです。

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Source: Alpha Street, The New York Times, The Wall Street Journal, 9 To 5 Mac, Stanford, INSIDER, Subtext

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