道なき道を拓き、未だ見ぬ新しい価値を世に送り出す人「起業家」。未来に向かって挑むその原動力は? 仕事における哲学は…? 時代をリードする起業家へのインタビュー『仕事論。』シリーズ。

今回は、ソーシャルグッドマーケット「Kuradashiを通じてフードロスの削減を目指す株式会社クラダシ代表取締役社長の関藤竜也さんにお話を聞きました

フードロスをビジネスに。その原点は2つ

──はじめに「Kuradashi」について簡単にご紹介ください。

Kuradashiは、まだ価値があるにもかかわらず流通しなくなった食品、つまり「お蔵入り」した商品に価値をつけて再流通(蔵出し)させるプラットフォームです。

パッケージのへこみやリニューアルによるデザイン変更、賞味期限が短いなどの理由で廃棄予定になっていた食品などを我々が買い取って販売し、Kuradashiのユーザーは平均65%オフで購入できます

さらに購入金額の一部を環境保護、海外支援、動物保護、ウクライナ支援といった社会貢献活動団体に、ユーザーが寄付先を選択しながら寄付できるので、買い物をすることでフードロス削減だけでなく、社会課題解決に貢献することにもなります。

もったいないを新しい価値にしてフードロスの削減を目指す」という弊社の取り組みに、多くの方がご共感くださり、会員数は約44万人社会貢献団体への支援金も累計9,800万円を超えました。

新品でもなければ中古品(2次流通)でもない、1.5次流通という新しい流通の仕組みですね。

──エシカル消費のパイオニアですね。Kuradashiというビジネスモデル着想の経緯は?

フードロスをビジネスにしようと考えるようになった原体験は2つあります。

1つは1995年1月17日に起きた阪神大震災です。当時、僕は春に就職を控えた大学4回生でしたが、テレビで阪神高速が倒壊したあの衝撃的な映像が目に飛び込んできた瞬間、バックパックにとりあえず役立ちそうなものを詰め込んで家を飛び出したんです。

僕が住んでいた大阪・豊中市も3日間断水するほどダメージがありましたが、とにかく被災地で誰かのためになりたかった。しかし、まだ人のうめき声も聞こえるようながれきを前に、どうすることもできないという、人ひとりの力の小ささを知ったんです。

この体験が、「ひとりではムーブメントを起こせない、持続可能な仕組みをつくろう」というクラダシ創業の思いにつながっています。

──もう1つは?

震災と同じ年の4月に商社に就職し、1998〜2000年まで中国駐在を経験したことです。

中国がまだ「世界の工場」といわれていた時代、生産指示の通りにあがらなかった規格外の製品が大量に生産され大量に廃棄されているのを目の当たりにしました。

このように大量生産と大量廃棄を繰り返していては、将来的に資源は底をつき、大きな社会問題になることがリアルに感じられたんです。と同時に、「この問題は自分が解決しなければいけない」と強く思いました。

ちょうど僕が中国にいた2000年9月に、国連ミレニアムサミットで2015年を目標期限にする「ミレニアム開発目標」が採択されました。いわゆる「MDGs」(Millennium Development Goals)です。

そこで僕は、2014年に会社を設立しようと決めました。2015年には「MDGs」に続く、次なる「◯DGs」が掲げられるに違いないと確信していたからです。それが「SDGs」でした。

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「SDGs」を見越し、タイミングを待った14年間
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