ヒグマの走るスピードは凄まじい。山の上から麓まで、一瞬で降りてくるんだ。

数十年前のある日、池上さんの背中に寒気が走りました。山の中で、7〜8メートル先にいるヒグマを狙っていたら、ヒグマがスッ…と茂みに沈んだのです。

下手に背中を向ければ後ろから襲われる。かといって静止していても、ヒグマが茂みの中を移動してこちらへ来るかもしれません。

ヒグマの毛っていうのはさ、すごく柔らかいんだよ。音を消すんです。笹の音や風の音…茂みの中に沈んだらもう、気配を感じない。だから怖いんだ。

幸いこの時は、ヒグマがすぐに立ち上がりました。その瞬間に、喉元を狙ってその下の肺をドンッ! と撃ち、一命をとりとめました。

現在73歳の池上さんは、北海道・砂川市の猟友会で支部長を30年以上務める、地区一のベテランハンターです。砂川市は、札幌から北東へ80km。12月中旬でも腰の高さまで雪が積もるほどの豪雪地帯で、あたり一面が白で埋め尽くされていました。

砂川市を含め、北海道ではここ数年、市街地にヒグマが相次いで出没しています。そのたびに池上さんらハンターが出動し、地域住民を守っているのです。

戦後間もなく英語を学び、1970年代に複業を実現

池上さんは1949年、北海道上砂川町で生まれました。母親は教育熱心で、戦後間もない1950年代に、まだ幼かった池上さんに知人のもとで英語を習わせたといいます。

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Image/Source: はたわらワイド