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「ChatGPT」などの自動生成AIは世界のGDPを7%増加させると同時に3億人の雇用に影響を与えるという調査報告、日本は世界で3番目に大きな影響を受けるとの指摘も


対話型AIの「ChatGPT」や画像生成AI「Stable Diffusion」などの「ジェネレーティブAI」の急速な発展により、セキュリティ専門家の40%以上が「2030年までにAIに仕事を奪われる」と予想していたり、全職業の80%がAIの影響を受けるという研究結果が示されていたりと、高すぎる能力が抱えるリスクもしばしば指摘されています。2023年3月末に報告されたアメリカの金融グループであるゴールドマン・サックスの調査によると、ジェネレーティブAIは大きなブレイクスルーを与えてアメリカとユーロ圏で行われる作業の4分の1を自動化し、世界の国内総生産(GDP)を7%押し上げるとともに、労働市場に「重大な混乱」を引き起こすリスクがあると指摘されています。

(PDFファイル)Goldman Sachs| Global Economics Analyst| The Potentially Large Effects of Artificial Intelligence on| Economic Growth (Briggs/Kodnani)
https://www.key4biz.it/wp-content/uploads/2023/03/Global-Economics-Analyst_-The-Potentially-Large-Effects-of-Artificial-Intelligence-on-Economic-Growth-Briggs_Kodnani.pdf

Generative AI set to affect 300mn jobs across major economies | Financial Times
https://www.ft.com/content/7dec4483-ad34-4007-bb3a-7ac925643999

画像生成AIの「DALL-E」や「DALL・E 2」などの登場後、プロンプトからかなり高精度に画像を生成できるStable Diffusionが次々に新しい機能を解放してAIイラストの投稿禁止著作権問題についての議論が盛んになったり、2022年11月に発表されたChatGPTがわずか2か月で「月間1億ユーザー」を達成したり、2023年2月にはGoogleがChatGPTのライバルとなる会話型AI「Bard」を発表したりと、近年で急激にジェネレーティブAIの発展が加速しています。OpenAIがGoogleの言語翻訳モデル「Transformer」を元にして作成した文章生成ツール「GPT-2」「GPT-3」はAIツールの急速な発展に大きな影響を与えましたが、2023年3月にはさらに後継版となる「GPT-4」が発表され、より一層の技術革新が見込まれています。

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OpenAIは「人類全体に利益をもたらす形で友好的なAIを普及・発展させる」ことを目的とした非営利法人のため、当初はデータセットやトレーニング方法について公開していましたが、OpenAIの共同設立者が「AIをオープンにするという理念は誤りだった」と述べ、GPT-4のデータは非公開としています。また、OpenAIはChatGPTなどのツールやサービスの使用について2023年3月23日に利用規約を改定し、これまでよりも明確かつ具体的な利用規約を示すなど、AIの危険性についても警戒する動きを見せています。

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そのような動きを受け、ゴールドマン・サックスは2023年3月27日にジェネレーティブAIについての調査報告を公開しました。報告によると、ジェネレーティブAIは10年間で世界のGDPを7%引き上げる恩恵を与える一方で、労働市場に「大きな混乱」をもたらし、主要な経済圏で3億人規模のフルタイム労働者の仕事が自動化の影響を受けると予測されるとのこと。論文の著者であるジョセフ・ブリッグス氏とデベシュ・コドナニ氏は、「人間が作成したものと見分けがつかないコンテンツを生成し、人間と機械の間のコミュニケーションの障壁を取り除くジェネレーティブAIの能力は、潜在的に大きなマクロ経済効果を持つ大きな進歩を反映しています」と述べた上で、アメリカとヨーロッパの仕事のうち約3分の2がある程度AIによる自動化にさらされていると指摘しています。以下のグラフは、職種ごとにAIの自動化で影響を受けやすい仕事をゴールドマン・サックスが調査したもので、ここでは特に仕事を奪われるリスクが高い職種として、事務系タスクと弁護士が挙げられています。


論文によると、労働者の約63%が「自分の仕事量の半分以下しか自動化されず、仕事を続けながら、より生産的な活動に時間を割くことができる」というプラスの効果を得ると推測されています。また、肉体労働や屋外での仕事を行う約30%の労働者は、他の機械による自動化の影響を受けることがあっても、AIの影響はほとんど受けないと考えられています。

しかし、残りの7%の労働者は、従来行っている業務の少なくとも半分がジェネレーティブAIに取って代わられる可能性がある「代替に弱い職種」に就いているとのこと。さらに、世界レベルではいまだ手作業の占める割合が大きいため、AIが仕事に与える影響は約20%にも及ぶとゴールドマン・サックスは予測しています。

論文ではAIが仕事に与える影響について、国別の数値をグラフで示しています。このグラフによると、最も高い影響を受けるとされている香港は約30%近い数値となっています。また、日本は約25%で3番目に位置しています。


OpenAIとペンシルバニア大学の研究者が大規模言語モデル(LLM)による分析を含めて行った研究では、アメリカの労働者の約80%が「少なくとも10%のタスクをジェネレーティブAIによって実行される可能性がある」と指摘されています。その他の同様の研究も含め、ゴールドマン・サックスの試算は比較的保守的な結果と見られています。

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またゴールドマン・サックスは、AIへの投資が1990年代のソフトウェア投資と同様のペースで成長し続けた場合、アメリカ国内で行われる投資だけで、2030年までにアメリカのGDPの1%に近づく可能性があるとも指摘しています。

なお、ゴールドマン・サックスの試算は「AIが中小企業の税務申告や複雑な保険請求の評価、犯罪現場の調査結果の文書化などの仕事をこなせるようになる」ということを想定して算出されている一方で、裁判の判決や重症患者の状態確認、国際的な税法の研究など、より繊細な業務にAIが採用されることは想定していません。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1e_dh

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