東大寺大仏…15mの仏の目線と掌の上に乗った気分

デジタルアーカイブとVR(バーチャル・リアリティー)の技術を使って仏教の文化財を保存、公開する動きが加速している。そのトップランナーは、印刷大手の凸版印刷である。

同社はこれまで東大寺大仏や高野山など、国内外の第一級の宗教遺産を、超高精細の解像度でVR化してきた。VRでは、現地では確認できない部位やアングルも自由自在に観察することができる。また、地震や台風などの災害の多いわが国において、デジタルアーカイブによる「保存」は急務となっている。文化財のデジタルアーカイブとVRの技術の最前線に迫った。

東大寺大仏
写真=iStock.com/photo
※写真はイメージです

東京都文京区小石川にある凸版印刷本社の内部には、最先端のVRシアターが設置されている。ここで同社は取引先向けにVR作品の上演を行っている。

(※同VRシアターは土・日・祝日に印刷博物館の施設として一般向けにVR作品の上演。2023年3月27日より工事のため当面の間、休室。また、東京国立博物館TNM&TOPPANミュージアムシアターや、DMC高野山が運営する高野山デジタルミュージアムのVRシアターも一般公開中)

同VRシアターは、大きくカーブを描いたスクリーンが特徴だ。それによって、視野角のほとんどを占めることができるため、映像空間の中に入り込んだかのような臨場感が得られる。

ナビゲーターの案内で、「東大寺大仏の世界」と題する映像が流れ始めた。映像は大仏殿を俯瞰ふかんするように上空に上がると、浮遊感が感じられる。さらに堂内へと入り、座高15メートルもある「仏の目線」から内部を見回す。一般参拝ではあり得ない角度からの映像だ。来場者からは、どよめきの声があがる。

昔、万博パビリオンなどで3Dメガネを掛けると、立体的に映像が飛び出てきて驚いたものだが、VRシアターではそんな特殊なメガネは必要ない。

プログラムでは、コントローラーを操作して(一般公開ではコントローラーを使用しない)「自分」を好きな場所に移動させることもできる。たとえば、蓮弁や掌の上など。ぐっと細部に寄ることができるので、細かな彫刻や遠くの建築意匠などが手に取るように観察できる。

このVRシアターで「予習」をしておけば、現地を訪れた際にはより深い学びを得ることができそうだ。トッパンVRは東大寺の他にも、興福寺、唐招提寺、日光東照宮といった国内の宗教施設、海外では故宮博物院(中国)、ナスカの地上絵などのさまざまなラインナップがある。

凸版印刷 小石川VRシアター VR作品『故宮VR 紫禁城・天子の宮殿』
凸版印刷 小石川VRシアター
VR作品『故宮VR 紫禁城・天子の宮殿』
製作・著作=故宮博物院/凸版印刷株式会社