日本と中国の恋愛事情はどう違うのか。北京在住26年のライターの斎藤淳子さんは「子供たちは『人を好きになるのは非生産的で危険なこと』と幼いうちから教えられているため、中国には恋愛をネガティブに捉える考え方が根付いている」という――。

※本稿は、斎藤淳子『シン・中国人 激変する社会と悩める若者たち』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/tiero
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高校以下の学生の恋愛はタブー

恋愛と結婚が公的な空間に引っ張り出され制限された歴史を経た中国では今でも高校生以下の恋愛をタブー視する空気が強い。その証拠に中国には高校以下の学生の恋愛を表す特別の語彙ごいがある。中国ではこれを大人のノーマルな恋愛とは区別して「早恋」と呼ぶ。これは、基本的に非生産的でリスクが高い好ましからぬ行為で、場合によっては青少年の不良行為の一種と見なし、大人は忌み嫌う。

例えば、大学教授の陳さん(70年代生まれ、40代女性)もそんな見方をする人の一人だ。陳さん自身は大学院在学中に自由恋愛で今の夫と知り合い、結納金も受け取らずに2000年に「開明的」な結婚をした人だ。しかし、中学生の息子さんの恋愛観については以下のように述べる。

「高校までの恋愛? そりゃ、肉体的な行為はだめよ。そうねえ、勉強に影響がなければ、それ以外のことはいいけど、大学受験前で、(精神的に)セーブが効かなくなるのが心配だわ。やっぱり一番いいのは恋愛はしないことね」

正しい中国の青年期の過ごし方

このように、米国留学経験もありオープンで「開明的」な陳さんでさえ、高校生以下は恋愛はしないのが一番と考えている。無事に天下分け目の大学受験を経て、大学に入学した後は親も黙認するが、高校まではただひたすら黙々と勉強に打ち込むべきというのが、中国のほとんどの親や大人が長年共有している「正しい中国の青年期の過ごし方」だ。

そして、社会に出たら今度は180度変わって、さっさと相手を見つけて結婚して孫を生んでおくれと要求するのだから、子どもにしたらたまったものではない。

また、第3章(『シン・中国人 激変する社会と悩める若者たち』)で触れたBさんも高校3年生の時、好きな女の子がいて1年以上アプローチしていたが、そのことがある時担任にばれた。担任は恋心で成績が下がるのを心配してBさんの親を呼び出して彼の「早恋問題」について注意したという。

幸い、理解のあったお母さんはその時は彼にも何も言わずにいてくれ、彼の成績も下がらなかったので、その後は事無きを得たという。Bさんがその後、トップ校に合格したのは書籍で述べた通りだ。