サンリオは東京都多摩市と大分県日出町の2カ所でテーマパーク事業を行っている。だが、開業以来、構造的な赤字が続いている。単純計算で来場者1人あたり3000円の赤字となっている事業を、なぜやめないのか。エンタメ社会学者の中山淳雄さんは「そこにはサンリオの長期的な戦略がある」という――。
サンリオピューロランド
サンリオピューロランド(写真=Kakidai/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

サンリオピューロランドは成功といえるのか

サンリオピューロランド(SPL)といえば、東京都多摩市に位置する、サンリオキャラクターのテーマパークである。

1990年12月にオープンした当時、日本初の「屋内型」で(世界では韓国ロッテワールドに次ぐ2番目の事例)、1960年設立のサンリオにとっては創立30周年記念事業でもあり、総工費650億円を賭けた一大事業であった。続く91年4月には大分県にハーモニーランド(HL)をオープンした。

折しも日本は1983年東京ディズニーランド(TDL)の大成功や1987年のリゾート法制定により、日本全国レベルでホテル・リゾート・ゴルフ場などとともに、テーマパークが乱立する時期である。

だがこの1980~90年代前半に建設された36ものパークのうち、事業継続しているのは17と生存率は半分以下。それも東武ワールドスクウェアや肥前夢街道など比較的小規模なものが多く、長崎オランダ村、ナムコ・ワンダーエッグ、新潟ロシア村など事業規模が大きければ大きいほど失敗事例も多い。

ハウステンボスのように3度所有者が替わり、経営再建をされ続けた事例もあり、かなり大型投資だったSPLは30年間以上維持継続ができているだけでも、「成功例」といえるレベルなのかもしれない。

30年でかかった費用は1320億円

だがよくよくその実績をみると、そんな生易しいものではなかった。赤字がとめどなく垂れ続けながらも、なんとか意地と本業の利益で持ちこたえてきた、といったほうが正しいかもしれない。

SPLは初年度195万人(入場者数は決算IR資料を基にしている。以下同)、これは順調な滑り出しだったといえるが、5年後には半減。

その後10年以上にもわたって売上・来客は減少を続け、コストカットで赤字幅こそ減らしていったが2008年にはSPL・HL合わせて101万人、売上62億、赤字14億円。

「ミラクルギフトパレード」をきっかけに123万人→152万人と集客が大きくあがったのが2015年。小巻亜矢社長の改革の下、「ぐでたま」「アグレッシブ烈子」など新規のライブキャラクターも登場し、ぐんぐん改善するなかで2017年度に悲願の黒字化達成。

2018年には来場者193万人と創業以来の数字にまで到達。こうして振り返ってみると、1990年からの32年間の運営において、黒字だったのは17~19年の3年間しかないのだ。

【図表1】サンリオテーマパーク事業の売上・営利率