マッチングサービス市場が急成長するなか、企業対企業、BtoBのマッチングサービスにおいてもさまざまなビジネスモデルが登場しています。

高瀬雅代さん(フロンティア株式会社 取締役兼 広報・マーケティング部部長)が取り組むのは、“人”に重きを置くビジネスマッチングエージェント「Ready Crew(レディクル)

遺伝子機能解析の研究を経てビジネスの世界に入り、プライベートではポールダンスの大会で4位入賞経験もあるというアクティブな一面も持つ高瀬さんに、自社のサービスにかける思いや、日々実践されている働き方について伺いました。

高瀬 雅代

大学は薬学部を専攻し、卒業後に薬剤師国家資格を取得。修士課程を経て東京大学大学院医学部博士課程へ進学、遺伝子機能解析を専攻。医療機関で働いた後、外資系広告代理店でプランナーとしての経験を積み、さらにITメガベンチャーで金融事業(証券、保険)の立ち上げやグロースに従事し、マーケティング業務のほか、広告審査や企画設計などのコンプライアンス業務も担当。2021年4月に執行役員としてフロンティアに入社し、2022年10月取締役に就任、今に至る。

ビジネスマッチングで「挑戦できる環境」をつくる

東京大学大学院医学部から医療機関、外資系広告代理店を経て、フロンティアに参画した高瀬さん。「企業の挑戦をサポートする」という「レディクル」の理念に共感し、広報とマーケティングに携わるようになりました。

「レディクル」は、企業と企業をつなぎ、新しいビジネスの機会を創出するビジネスマッチングエージェントサービス。原型となったサービスから数えて、今期で14期目を迎えます。

施策の課題を抱える企業に対して、エージェントが要件定義も含めてヒアリング。「レディクル」独自の4万のネットワークから、発注と受注の両側面でwin-winとなるよう、最適な協業先を紹介します。

要件にマッチした発注先のピックアップから商談の設定までエージェントが行なうので、パートナー企業(発注先企業)を効率的に探すことができます。

費用は発注先にあたるパートナー企業から活動費や広告費としていただき、発注元の企業様からは一切費用をいただかないというのも特徴です。

ビジネスにおける情報格差をなくし、日本の企業や産業を活性化することが弊社のゴールなので、中間マージンが発生しない仕組みにしています。(高瀬さん、以下同)

BtoCの商材の情報が口コミを介して広がっていくのに対して、BtoBの商材や、個々の企業の情報はなかなか表に出てこない、と高瀬さん。

新しいチャレンジをしたくても、自社に合ったパートナー企業が見つからなかったり、コスト都合が合致しなかったりして、思うようにチャレンジできない企業は規模を問わずたくさんあります。

そこに第三者として、中立的な立場でエージェントが介在することで、フラットな目線で要件に合う会社を紹介でき、相場観やスケジュール感をお伝えすることもできる

さらに、紹介するパートナー企業が持つ実績や、発注した企業からのフィードバック、生の声も聞くことができます。

根底にあるのは、企業が健全に挑戦できる環境をつくっていきたい、という思いです。

Image: Ready Crew(レディクル)
Image: Ready Crew(レディクル)

レディクルが「会う」ことにこだわる理由

昨今のビジネスマッチングサービスというと、マッチングアルゴリズムを介在させ、プラットフォーム上で簡略に企業同士をつなげるサービスをイメージされる方が多いかもしれません。

しかし「レディクル」は、“人”が介在するビジネスモデルを重視しているそうです。

アルゴリズム重視のマッチングの場合、自社のニーズ・要件が明確に言語化されており金額も小規模の場合は便利なのですが、そうでない場合もあります。

また発注先が信頼できる企業なのか、実績はあるのかを見極めるリテラシーが不十分な場合は、自社だけでパートナー企業を見つけ出すのがなかなか難しいこともありますよね。

そう高瀬さんは話します。そのようなアルゴリズムだけで解決が難しい課題に、「レディクル」は取り組んでいます。

一般的に課題解決は新たな課題を生むように、デジタルやテクノロジーだけでは解決できない課題は必ずあります。

そのデジタルとデジタルの隙間というか、ポケットのようなところに新しいニーズがあるという気づきが、サービスの基盤にあります。

「レディクル」のキャッチコピーは、「合う会社と、会う」。近年のDX化の流れやコロナ情勢においても、Web会議などを積極的に取り入れつつ、“会う”コミュニケーションを大切にする方針を貫いてきました。

ビジネスマッチングでは、いかに効率的に合う人・会社を見つられるかが大事、と高瀬さん。納期や予算、イメージなどを一社一社丁寧にヒアリングし、担当者同士の人柄やセンスも含めて、フィーリングの合う企業をつなげるのが「レディクル」のこだわりなのです。

Image: Ready Crew(レディクル)
Image: Ready Crew(レディクル)

仮説を立て、分析する。ルーツは「研究者マインド」

そんなレディクルで活躍されている高瀬さんですが、その働く姿勢の根底には、学生時代に培った研究者としての経験が結びついているそうです。新しい仕事に取り組むときは、仮説を立て、成功と失敗の指標まで設定したいタイプだと語ります。

まずは目的と全体フローを洗い出し、どこが進行するうえで障壁になるか、時間を必要とするかを見定めて、最初にそこを潰します。

一段落したら結果を分析し、次の新しい仮説を立てる。そこまでやると、すごく気持ちがいいんです(笑)。

おおよその全体のフローが見えないと一歩を踏み出せないのは弱みでもありますが、それができる働き方をしたいと思って選んできた道が、今の仕事につながっています。

研究者としてのキャリアを生かしながら、仕事に取り組んでいる高瀬さんですが、今は自身のみならず、メンバーのキャリアも預かる立場。そんな高瀬さんは、どのようにメンバーのキャリア構築を考えているのでしょうか。

個人的に常に気にしているのは、メンバーが自分のキャリアをどう育てていくか、ということです。

前述のとおり、サービスが「企業が健全に挑戦できる環境」の実現をめざしているように、マネジメントとしても「メンバーが健全に挑戦できるスキルや実績、考え方」をつけてあげたいという想いがあります。

可視化された実績やスキルがあれば、今後の人生において必ずプラスになりますし、考え方も、仕事だけでなく何をするにもベースや人格形成に寄与する重要な要素だと思います。

フロンティアは「メンバーがきれいに咲ける場所を探すために、業務を整理し、 ときには部署を新設するなどして、適正に合わせて人を配属している」そうです。性別や年齢に囚われず、自分の強みを生かして働けるように、というスタンスからも、“人”を基盤とするフロンティアの精神が感じられました。

高瀬雅代さんの仕事術と哲学

高瀬さんはどのようにして、普段の業務をこなしているのでしょうか。最後に、その仕事術を一問一答形式で伺いました。

──仕事やオフを充実させるために実践している時間術は?

実はめんどくさがり屋なんですよ、仕事以外はスケジュール管理なんて絶対しません(笑)

以前は「Trello」というプロジェクト管理アプリを使っていましたが、最近は手書きに戻っています。

5mm方眼の「ロルバーン」のノートを見開きで三分割にして、左ページにToDo、右ページの上段にToDoに付随する課題、右ページの下段にミーティングメモをまとめています。

コンサルタントの方のYouTubeでこのやり方を見て、「いいな」と思って真似しはじめました。

高瀬さんの実践する3分割ノート術
高瀬さんの実践する3分割ノート術

──日々のインプットのしかたは?

トレンドの大きな流れを見るために、日本経済新聞の月曜日の朝刊は必ずチェックしています。

日経の月曜の朝刊って、雑誌の中吊り広告のような感じでタイトルがずらっと並んでいるんです。その週の世の中の関心のトピックと、政治・経済の方向性を合わせて知っておけば、「国の政策がこんな形で民間に降りてきているんだな」といった把握ができるので便利です。

この方法は、多忙なのにトレンドに非常に詳しい人から教えてもらいました。知らないジャンルの知識をつけたいときは、いちばん簡単そうな本から読んで、そのなかに何回も出てくる単語があると次はそのことについて書かれている本を読み、最後はそのジャンルの最新トレンドについて書かれた本を斜め読みする方法も真似して実践しています。

──体調管理のコツは?

趣味でポールダンスをしています。

ダンスは世界共通言語だから、コミュニケーションツールとして最適。医療系の方もいればエンジニアのようなシステム系の方、学生さん、官公庁の方もいて、いろいろな人に出会える異業種交流会のような側面も魅力です。

自分を表現することはもちろん、見る人が求めるものを含めて設計するところがおもしろいし、チームで一つの作品に取り組んでつくりあげていく感動が癖になる。普段使わない脳の領域を使うためにダンスをしているという感じです。

──仕事でやらないと決めていることは?

がんばりすぎないこと。「寝ないで、休まずに頑張ればなんとかなるんじゃないか」と自分を鼓舞させて、やりきったあとに糸が切れて、体調を崩して休職した経験があります。それ以降、無理なものを無理してやろうとすることはやめて、周りに相談したり、現実的に、自分ができる範囲と理由を伝えたうえで、交渉することを心がけています。

──高瀬さんの働き方の哲学とは?

難しいですね…。ひとつ思うのは、キャリアは誰かに与えてもらうものじゃない、ということ。

どこかの会社に入ったら階段が用意されているというよりは、自分がそのとき何を感じて、どうしたいかを考えて、歩んできた道のトレイルがキャリアになる、という感覚があります。

私が考える一番いい方法は、楽しみながらうっかり続けてしまうこと。仕事を「仕事」と考えると、楽しさを持続できない気がしてしまうので、人間として深みを出すための生活の一部だと捉えること。そうすると必然的にプライベートにも生きますので、仕事は自分という人間の器を広げるためのツールの一つと考えるようにしています。

Photo: 島村緑/Source: Ready Crew(レディクル)