テスラの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏は2021年11月末、従業員に宛てたメールで、2021年第4四半期の輸送費と配送費を削減するべく、納車急送費や残業代、臨時契約社員の採用などによってコストがかさむ事態を避けるよう指示を出しました。

また、四半期末に向けて従業員に死に物狂いで働いてほしいとは思っておらず、たとえ今四半期に納車が増えたとしても、翌四半期にはその数が急減することになるだけだと述べています。

四半期末に例のごとく駆け込みで納車を急ぎ、直後の四半期で納車数が急減することのないよう、仕事を急がずに安定した生産体制を整えてほしいというのが、マスク氏の従業員に対する指示だったわけです。

イーロン・マスク流「高パフォーマンスを実現させる秘訣」

高いパフォーマンスを実現させることにかけては名手であるマスク氏の天才的な手腕が、ここでも発揮されています。

マスク氏は、安定して管理しやすい生産工程を確立するようにと、従業員に求めているだけではありません。

仕事のスピードを落として業務を減らすよう声をかけ、従業員のプレッシャーを見事に取り除くことまでやってのけているのです。

ご覧の通り、マスク氏はどういうわけか、超人さながら難なく週120時間も働いてCEOの役目を果たす一方で、経営管理に対しては異なる姿勢で臨んでいます。

従業員の労働時間を増やせば、それに比例して職場の生産性も向上するわけではなく、むしろそれは逆効果であることを、マスク氏は理解しているのです。

マスク氏が実際にやろうとしているのは、テスラという職場の環境を適切に整え、生産性を向上させることです。そのために、従業員には気づかれない形で、心理的なブレインハックを活用しています。これは、誰もが使える手法です。

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