エッセイ

子供を愛する事と一人の時間を欲しがる事はなんの関係もないので、安心して旦那に押しつけてください

Threadsでこのようなコメントを見つけて、深い憤りを感じてしまった。軽く見逃せばいいとわかってはいるのだけれど、それだけではこの気持ちはおさまらない。

あまりにも冷たいこの言葉。少なからず傷ついた人がいたのだとしたら、僕が代わりに「鼻くそと一緒に軽く放り投げてやれ」と伝えたい。「好きで決断したんだから我慢しなさい」なんて道理はないのだから。

正論という刃は鋭すぎる

SNSだから目にすることができたが、よくよく考えれば、このような思想は実はどこにでもあるのかもしれない。口に出さないだけで、心のなかには唱えたことがある人の数は、実際には多いのかも。

 

「好きで子どもを作ったんだから、……」

 

「……」にはどんな言葉でも置換される。

「面倒を見るのが当たり前」
「愛するのが当然」
「文句なんて言うもんじゃない」

なんだっていい。

でも、こんなものは子育てをしたことがない人の空想論でしかない。

「子ども」というのは、実際に抱きかかえてみればわかるが、これほどまでにわけのわからない生き物はいないのだぞ。そこんとこ、わかってくれとはいわないが、正論という刃を突き刺すのはやめてくれ。

ブラックな自分がいることも間違いない

正直なことをいえば、子どもをひっぱたきたいと思ったことはある。何度もある。——いや、軽く頭をひっぱたいたことは、実際にあったよ。

顔を見たくないと思ったこともある。一緒の空間にいるだけでイライラが止まらなくなり、寝室に駆け込んでは枕に向かって大声を張り上げたこともある。

我ながら子どもじみていると自覚しているが、自分が不機嫌であることを知らしめるような言葉や態度をとってしまうことも。

日々、大人げないなと思う。反省ばかりだ。

けれども僕は「自分の子どもを煙たく思ってしまうなんて、親としてどうなんだ……」などという風に、自分のことを自分で責めたりはしない

「ブラックな自分」がいることは自覚しているし、その存在を否定したりはしない。ブラックに染まり切って、ダークサイドに落ちないようにだけは気をつけているが、そういう一面を持っているんだと認識するのは、悪いことではないと思っている。

だって、そう思ってしまったのだから。

そもそもの大前提として、僕は娘を愛している。大好きだ。家族が大好きで、妻と娘のためなら命を投げ出すことも苦ではない。本音でそう思っている。

娘が好きで好きで仕方がない親バカな自分もいれば、どうしようもなく煙たく感じてしまう自分もいる。「子ども」という存在を野暮ったく感じてしまうことだってある。

両方の気持ちが同じ場所にあっていいし、どちらも嘘ではない。そういうときもあるというだけなのだ。

「ひとりになりたい」と思う心は、いたって普通である

「好きでやってることなんだから」を枕詞にして、逃げ場を奪うようなセリフを吐くような人がいるが、そんなものは気にしなくて良い。

好きで選んだ仕事なんだから、文句を言わずに死ぬ気で働けというのだろうか。そんな無責任な言葉に、あなたが責任を感じる必要はない。

好きなものだって、四六時中好きでいつづけることはできないのだ。

ましてや子どもなんて、なにひとつ自分の思った通りに動かない奇天烈な生き物だ。3秒目を離したら死んでしまうかもしれないようなものと、ずっと一緒にいることのストレス。すり減る神経。その大変さは、妻を間近で見つづけてきたからわかる。

それにくわえて「世間」という第三者の監視の目。好奇の目。子どもと一緒に外を歩けば「あの人はちゃんとお母さんやれてるのかしら」「子どもは幸せだろうか」って、知らない人から査定される。

そんな毎日の中で「身にまとっているすべてを捨て去り、たったひとりの時間・空間がほしい」と望むことの、何が悪いというのだろうか!

誰にも邪魔されないず、ただひたすらにコーヒーを味わえる30分が、どれだけ貴重なものか。それは何物にも代えがたいほど、貴重な一瞬であることを、僕は知っている。

それについて、自分の子どもを愛しているかどうかなんて関係ない。どれだけ愛していようが、自分ひとりの時間は尊ぶべきものであり、尊重されるべきものである。

あなたは今日、自分の旦那に子どもの世話のすべてを押し付けて、コーヒーを飲んでいい。なんなら、そのコーヒー代は旦那に払ってもらおう。
男は黙ってうなずいていろ。余計なことはなにひとついわず「いってらっしゃい」とだけ言うのだ。

関連キーワードからさらに見る

\ この情報をシェアしよう! /

  • この記事を書いた人

ばんか

Webディレクターとしてサラリーマンをやりつつ、個人でブログや執筆活動をするパラレルキャリアを実施中。 ITツールを日常で活かす方法を広く伝え歩くことをミッションとした「ITツールエバンジェリスト」です。AllAboutやYahooクリエイターズプログラムでも活動中。

-エッセイ
-,