26歳は、出世、転職、起業、結婚、出産、挑戦など、人生における多くの「選択」を迫られる時期。『26歳の自分に受けさせたいお金の講義』(安江一勢 著、すばる舎)の著者はそう指摘しています。

キャリアについても、考えを深める時期です。

大卒だと、会社に入って3年が経ち、できる仕事が増えてきた4年目。高卒だと、後輩や部下も増えてきた8年目。そろそろいまの会社での限界や伸び代、仕事の向き不向きなどを感じているときではないでしょうか?

とくに結婚や出産などを控えている場合には、これからのキャリアについてもより向き合わされている時期であると想像できます。

このような「人生の選択」をする際に欠かせないもの、それが「お金」です。(「PROLOGUE」より)

ところが、現実問題としてお金のことを学ぶ機会はそれほど多くありません。そこで、お金に人生を左右されないようにするためにも、お金を学ぶ必要があるーー。全国でも0.6%しかいないという「20代の税理士」である著者は、そう述べています。

そこで本書の出番です。

本書は「お金持ちになるための本」ではありません。

ただその分「幸せになるお金とのつき合い方ができる人」になるための本にしています。

難しくて、手のつけづらいお金の知識や考え方をできるだけ噛み砕いてお伝えする、20代のためのお金の入門書です。(中略)

また、あなたが20代でなかったとしても、ご自身のお金の使い方や考え方を見直すことができる1冊にもしています。

20代以外の方は、復習としてお読みください。(「PROLOGUE」より)

つまり実質的には、20代に限らず、あらゆる年齢層にフィットするということになるでしょう。きょうはそんな本書のなかから、第8講「仕事とキャリア」に焦点を当ててみたいと思います。


自分の年収は、周囲にいる5人の平均になる

いうまでもなく、年収を上げるために尽力することは大切です。しかし著者によれば、とくに気にかけるべきは自分が身を置く「環境」なのだそうです。なぜなら自分の年収は、周囲にいる5人の平均値で決まってしまうから。

アメリカの有名な起業家であるジム・ローンも「5人の法則」というものを提唱しており、この法則では「人は自分のまわりの5人の平均になる」と言っています。(198〜199ページより)

もちろん、「収入」についても同じ。つまり自分の年収は、(よくも悪くも)周囲にいる5年の平均年収になるということです。

たとえばいつも一緒に仕事をする人たちの年収が400万円だとしたら、その人たちの考え方や言動が、自分にとってのスタンダードになるという考え方。

だとすれば、年収1000万円の人たちに囲まれた場合、自分も年収1000万円を稼ぐだけの仕事をし、それが当たり前に行われる環境になるはずです。

大人であれば、自分の環境は自分で選ぶことができます。

あなたのまわりの5人は、あなたが選ぶ「スタメン」です。

監督になった気分で、1人ずつからでいいので、理想の自分になれるように一緒に過ごす人たちを選んでいきましょう。(198〜199ページより)

たしかに環境を変えるだけなら、それほど難しくはないはず。環境を変えたあとは一時的に違和感があるかもしれませんが、その違和感を乗り越えれば、ワンランク上を目指しやすくなるのでしょう。(198ページより)

35歳までに、いかにスキルを磨けるかが勝負

終身雇用はもはや過去のものとなりましたが、その反面で「転職」を意識する人の数は増加しています。当然のことながら転職する理由の大半は、「よりよい条件の仕事を探す」こと。つまり転職は、自分を磨くための手段であるわけです。

でも、具体的には、いつ、どのタイミングで転職をすればいいのでしょうか? このことを考えるうえで参考にしたいのは、転職市場でよくいわれる「35歳の壁」。20代から30代前半までは転職をするチャンスが豊富にあるのに対し、35歳からはそのチャンスが大きく減るというわけです。

その理由としては、雇用する側にとっても、年齢と経験から、その転職者を受け入れるリスクが高いことや、そういう人を受け入れるポジションが社内に少ないことが挙げられます。

つまり、35歳までが転職のラストチャンスだということです。(203〜204ページより)

とはいえ、優秀な人にとってはさほど影響がないのも事実であるようです。優秀な人材であれば、何歳になっても転職することはできるということ。そのため「35歳まであと10年」というタイミングにある26歳の時点で、ある程度のキャリアを考慮したうえで早めに準備しておくことが必要となるわけです。

あるいは35歳を超えても転職の選択肢を残しておけるように、早いうちからスキルを磨いておくことも不可欠。準備期間のあるうちに、できる準備をしておくべきなのでしょう。

転職のタイミングとしては「この会社で働いている未来の自分をイメージできなかったとき」をひとつの判断材料としてください。

年収などの条件で決めるとほぼ失敗します。お金のことで釣るしかない企業は、そういう社員たちが集まってしまうからです。

お金は最低条件だけを頭に入れて、転職を判断する際には、仕事をする環境や今後の伸び代など、お金以外の部分をこだわるようにしましょう。

そして、それらの条件がいまの会社を上まわったときだけにしましょう。(204〜205ページより)

つまり転職のいいところは、いまの仕事と比較しながら、次の仕事や会社を決められるところ。だからこそ、じっくりと考え、年齢やキャリアのことも踏まえながら選択するべきだということです。(202ページより)


お金について考えることは、人生を考えるということ。著者はそう記しています。26歳でお金のことを考えておくと、その後の人生がとても楽に、楽しく、幸せなものになるとも。精神的に余裕のある人生を送ってくためにも、そうした考え方に基づいた本書を参考にしてみるべきかもしれません。

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Source: すばる舎