砂糖や脂肪がたっぷりの超加工食品は健康だけではなく学習や記憶にも影響を与える可能性


糖分や塩分、脂質を多く含む加工済み食品である「超加工食品」に依存した食生活は健康に悪影響を与える可能性が指摘されています。この超加工食品が脳の活動にも大きな影響を与えているかもしれないことが、最近の研究で論じられています。

The New Science on What Ultra-Processed Food Does to Your Brain - WSJ
https://www.wsj.com/health/wellness/ultra-processed-food-brain-health-7a3f9827

バージニア工科大学健康行動研究センターのアレクサンドラ・ディフェリチェアントニオ氏らの研究チームは、被験者を2グループに分け、片方のグループには高脂肪・高糖分のお菓子を、もう片方のグループには脂肪と糖分が少ないお菓子を8週間与えて、脳の反応を比較する実験を行いました。

その結果、高脂肪・高糖分のお菓子を8週間食べた被験者は、脳でモチベーションや幸福感をつかさどる報酬系に関わる神経伝達物質であるドーパミンを生成する脳部位が対照グループよりも活発に活動していることがわかりました。研究チームは、高脂肪・高糖分のスナックを頻繁に食べる人は、高脂肪・高糖分のスナックのパッケージを目にするだけでも同様の反応を示す可能性が高いと論じています。


さらに研究チームは、被験者に簡単な学習課題を課した上で、特定の音を聞いたら関連付けられたボタンを押すように指示しました。すると、高脂肪・高糖分のお菓子を食べていた被験者グループは、期待される結果が得られなかった時に状況判断に関わる脳部位が活性化していたことがわかりました。

以上の結果から、研究チームは、高脂肪・高糖分のスナックが脳の報酬系に影響を与え、学習プロセスや認知プロセスを変化させている可能性があると論じました。


同様の実験結果は、マッコーリー大学の研究者が2017年に発表した論文でも報告されています。マッコーリー大学の研究チームは約150人の被験者を2つのグループにわけ、片方には飽和脂肪と砂糖を多く含む朝食を、もう片方には飽和脂肪と砂糖が少ない朝食を4日間にわたって与えました。そして両方のグループに学習能力や記憶能力を測るテストを受けさせた結果、飽和脂肪と砂糖を多く含む朝食を与えられたグループはテストの成績に低下が見られたとのこと。一方で、対照グループの成績には変化が見られませんでした。

超加工食品は学習だけではなく、メンタルヘルスにも悪影響を与える可能性が指摘されています。たとえば、超加工食品を30週間にわたってマウスに与えたところ、アルツハイマー病やうつ病、不安が悪化したという実験結果が報告されました。

高脂肪の食事を食べ続けるとアルツハイマー病・うつ病・不安が悪化する可能性 - GIGAZINE


さらに超加工食品がメンタルヘルスに悪影響を与えるという研究結果も発表されました。この研究では、超加工食品を多く含む食事を取る習慣は、うつ病や不安症、睡眠障害のリスクを増加させると論じられています。

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超加工食品が脳の活動に影響を与える仕組みについては解明されていませんが、ディーキン大学フード&ムードセンターのフェリース・ジャッカ所長は「腸内微生物叢(そう)を介している可能性が高い」と考えています。腸内微生物叢とは腸内に生息する微生物のコミュニティのことで、近年の研究で免疫機能やストレス反応、神経伝達物質の生成に影響を及ぼす可能性が指摘されています。また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で腸内微生物叢を研究するアルバナ・グブタ氏は、超加工食品に依存した典型的なアメリカ人的食生活を送ると腸内微生物叢の多様性が減り、有益な細菌の種類が少なくなる可能性があると主張しました。

ミシガン大学の心理学者で食物依存症の研究者であるアシュリー・ギアハート教授は、精神医学用語あるいは心理学用語として「超加工食品使用障害」という新しい精神健康障害を提案しています。ギアハート教授によれば、超加工食品使用障害の症状は、依存による激しい渇望が生まれたり、摂食量を減らそうとした時にイライラしたり興奮したりする状態が想定されているとのこと。

ディフェリチェアントニオ氏は「食事が報酬系を変化させ、精神的健康上の問題を引き起こす可能性があります。これは食事が実際にあなたの人生のすべてに影響を及ぼすことを意味します」とコメントしました。

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in サイエンス,   , Posted by log1i_yk

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