仕事のミスが多いとか、効率が悪いとか、あるいは、もの覚えが悪いとか――。

いずれにしても、仕事をするうえで障害になってしまうそれらの原因は、すべて「集中力」にあるのだと、『集中力がすべてを解決する 精神科医が教える「ゾーン」に入る方法』(樺沢紫苑 著、SBクリエイティブ)の著者は指摘しています。

たしかに集中力が低ければ、上記のような(それ以外にも)ことが頻繁に起こっても不思議ではありません。つまり、仕事がうまくいかないのは集中力が低いから。逆にいえば、集中力が高ければ、すべてがうまくいくということになりそうです。

集中力とは、脳科学的には「前頭前野」が司ると考えられます。「前頭前野」とは、脳の司令塔とも言われ、「集中力・注意力」「ワーキングメモリ」「考える」「判断する」「記憶する」「アイデアを出す」「感情をコントロールする」など、高次の認知機構を司る脳の司令塔です。

集中力が低い人は、思考力も低い。なかなか決められない(優柔不断)。集中力以外の高次認知機能も低い人が多いのです。(中略)つまり、本書でお伝えする「集中力を高める方法」を実践すると、集中力だけでなく、「思考力」「判断力」「記憶力」「感情コントロール力」「発想力・創造性」など、高次の脳機能を丸ごとアップすることができる。一言で言うと「頭が良くなる!」というわけ。(「はじめに」より)

だとすれば、集中力はもちろんのこと、仕事やプライベートに関するさまざまな悩みを解決できるはず。だからこそ著者は、「集中力がすべてを解決する」のは事実だと断言しているのでしょう。

ちなみに本書は「仕事に忙殺され、酒びたりの不健康な勤務医」だった著者が、絶好調の現在にいたるまでにしてきたことをまとめた一冊だそう。つまり自身の経験とノウハウに裏づけられているわけです。

きょうはPART2「出力 脳力を引き出せば、仕事の「スピード」と「質」は上がる 気持ちいいほどタスクを消化できる方法」内の「I時間術」のなかから、2つのポイントを抜き出してみたいと思います。

ウルトラディアンリズム時間術

人間の覚醒のリズムは、覚醒度の高い状態が約90分続き、そののち、覚醒度の低い状態が約20分続く。それが、1日で何度も繰り返されています。このリズムは、ウルトラディアンリズムと呼ばれます。(106〜107ページより)

覚醒度の高い状態とは、注意力・集中力が高い状態。つまり、ミスを起こしにくいわけです。

一方、覚醒度の低い状態とは、眠気が強く、注意力・集中力が低い、ミスをしやすい状態。したがって、そんなときには休憩することが大切。ただし何十分も休む必要はなく、5分でも10分でもいいそうです。

休憩すると、覚醒度は上昇に転じて、眠気もすぐになくなっていきます。ウルトラディアンリズムは、生物が持つ動かしがたいリズムですから、あらがうのではなく、このリズムに合わせて仕事をすべきです。

90分集中して、注意力が散漫になってきたり、眠気が出てきたら、15分ほど休憩を入れる。休憩をしないで仕事を続けると、ミスを引き起こす確率が飛躍的に高まってしまいます。(107〜108ページより)

ただしウルトラディアンリズムは必ずしも「90分プラス20分」ではなく、個人差が大きいものであることが最近の研究でわかっているのだとか。「プラスマイナス20分の誤差」など、人によってかなりの差があるため、さほど「90分」にこだわる必要もないようです。

「90分前後の仕事を続けると、脳のパフォーマンスは必ず下がってミスしやすい状況になるので、きちんと休憩を挟もう」ということを意識すればいいわけです。(106ページより)

時間帯・曜日決め打ち時間術

24時間、365日、常にミスが起き続けるわけではないので、ミスを減らすのは意外と簡単。しかし、ミスが起きやすい時間帯や曜日はあり、著者はそれを「ミスの魔の時間帯」と呼んでいます。

一方、集中力が高く、ミスをする確率がきわめて少ない時間帯もあるため、ミスできない仕事はそうした時間帯に行うべき。当然ながら、「ミスの魔の時間帯」には行うべきではないということ。

いずれにせよ、こうした「ちょっとした集中力の時間特性」を知って時間配分するだけでも、ミスはかなりの割合で防ぐことができるようです。

1日の中で最も集中力が下がる一番の「ミスの魔の時間帯」。それは「未明」です。明け方、午前3〜5時頃、徹夜をした経験のある方は、この時間帯に作業をしたことがあるでしょう。

この時間帯は、もちろん強い眠気に襲われます。集中力も極端に下がりますから、普段では絶対にしないような重大なミスが起きる可能性が高いのです。(110ページより)

本来であれば寝ている時間なので、認知機能がもっとも低下するのは当然。そのため、どれだけ注意を払ってもミスを防ぐのは無理だということです。徹夜での仕事は、「ミスを減らす」という観点からも、きちんと睡眠時間を確保するという意味からも、適切ではないわけです。

ウェブサイト「はたらこねっと」が行った、510人に対する「失敗談」に関するアンケート調査で、興味深い結果が出ています。

「失敗をしてしまうのはどんなときですか?」という質問に対して、最も多かった時間帯は、「午後(14〜16時)」が40%と圧倒的多数を占めました。

また、最も多かった曜日は「月曜日」(25%)、次いで「金曜日」(19%)、最も少なかったのは、「火曜日」(5%)です。(111ページより)

14〜16時は、昼食の満腹感と仕事の疲れが重なり、ちょうど眠気が出てくる時間帯。明らかに集中力が低下するため、ミスできない重要な仕事は避けるべきなのです。

1日の中で集中力の高い時間帯は、間違いなく午前中です。ですから、ミスをしてはいけない重要な仕事、高い集中力を要する骨太な仕事は、午前中に終わらせる。午後には持ち越さない。それだけで、仕事の効率は大きくアップします。

さらに、曜日で見ると失敗の4分の1は月曜日に起きるといいます。これは、かなり高い確率です。

土日に昼まで寝ていたせいで体内時計がずれてしまった、週の始まりなのでまだ仕事が本調子でない、もしくは、休み明けで仕事がたまっていて仕事量、作業量が多いということもありそうです。

一方で、「火曜日」の5%というのはとても低い数字です。火曜日に失敗することはめったにない、と言っていいでしょう。(111〜112ページより)

そこで、ミスが許されない重要な仕事は「月曜日」「金曜日」を避け、集中力高く仕事ができる「火曜日」にやるようにすべきなのでしょう。(109ページより)


2017年10月に発売された『絶対にミスをしない人の脳の習慣』を改題したうえ、加筆・編集した書籍。実践的な内容であるだけに、集中力に関することを筆頭とした、日常のさまざまな悩みを解決してくれるかもしれません。

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Source: SBクリエイティブ