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「政治家がソーシャルメディアで一般人をブロックすると違憲になる可能性がある」と合衆国最高裁判所が認める


近年は政治家や政府職員がSNSアカウントで私的あるいは公的な発信を行うケースが増えており、それに伴って「政治家らが一般人をブロックすることは憲法違反ではないか」という声が上がっています。新たにアメリカ合衆国最高裁判所が、「政治家による一般人のブロックが違憲になる場合とそうでない場合がある」と裁定し、判断基準を通達しました。

US Supreme Court sets test for when officials who block social media critics can be sued | Reuters
https://www.reuters.com/legal/us-supreme-court-throws-out-rulings-public-officials-blocking-social-media-2024-03-15/


Public officials can block haters—but only sometimes, SCOTUS rules | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2024/03/public-officials-can-block-haters-but-only-sometimes-scotus-rules/

Supreme Court defines when it’s illegal for public officials to block social media critics - The Verge
https://www.theverge.com/2024/3/15/24101983/supreme-court-public-officials-block-critics-social-media-lindke-v-freed

ほとんどのSNSには関わりたくないユーザーを「ブロック」する機能が搭載されており、自分に対して攻撃的だったりしつこかったりする相手から、自分のアカウントを見えなくすることができます。時には政治家や政府職員のアカウントが一般人をブロックすることもあり、日本でも河野太郎デジタル行財政改革大臣はメディア関係者を含むアカウントをブロックしていることが知られています。

そんな中、「政治家や政府職員のアカウントが一般人をブロックすることは憲法違反なのではないか」という声も上がっています。これは、ブロックにより政治家や政府職員とオンライン上で意見交換する場から締め出されることが、憲法で保障されている「表現の自由」を侵害しているという主張によるものです。すでにアメリカでは、政治家や政府職員による一般人のブロックを巡る訴訟が起こされており、過去にはドナルド・トランプ元大統領に対して連邦控訴裁判所が「憲法違反」と判決を下したこともありました。なお、トランプ氏に対する訴訟は合衆国最高裁判所に持ち込まれましたが、2021年にトランプ氏が退任したため裁判は打ち切られました

2023年には合衆国最高裁判所が、政治家や政府職員のアカウントによる一般人のブロックが合衆国憲法修正第1条に違反しているかどうかを巡る、カリフォルニア州とミシガン州で提起された2件の訴訟を審理することに同意しました。

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カリフォルニア州の訴訟では、パウエイ市の公立教育委員会の理事2人が、保護者のX(旧Twitter)アカウントおよびFacebookアカウントをブロックしたとして訴えられました。理事らは、保護者が投稿に対して数十~数百ものまったく同じコメントを残したためブロックしたと主張しています。サンフランシスコの第9巡回区控訴裁判所は、保護者らの憲法修正第1条の権利が侵害されていると判決を下しています。

ミシガン州の訴訟では、ポートヒューロン市のジェームズ・フリード市長が、ポートヒューロン市在住のケビン・リンドケ氏のFacebookアカウントをブロックしたとして訴えられました。リンドケ氏はCOVID-19の対応についてフリード市長を批判するコメントを送ったところ、ブロックされてしまったとのこと。シンシナティの第6巡回区控訴裁判所は、フリード市長に有利な判決を下しています。


そしてアメリカ合衆国最高裁判所は2024年3月15日、「政治家や政府職員による一般人のブロックが憲法違反になるケースとそうでないケースがある」と裁定し、ブロックが違憲になるかどうかの判断基準について明らかにしました。

アメリカ合衆国最高裁判所は、憲法修正第1条による言論の自由の保護は、一般人ではなく政府関係者を規制するものであると指摘。そのため、政治家らによるブロックが憲法違反になるかどうかの判断で重要なのは、「アカウントの投稿が私人としての発言なのか、それとも国家を代表して発言しているのか」という点だとのこと。


公開された判断基準では、アカウントが「特定の問題について国家を代表して発言する実際の権限」を有しており、「ソーシャルメディアに投稿する際にその権限を行使すると主張している場合」に、一般ユーザーのブロックが違憲になる可能性があるとされています。これらの権限やその行使が明文化されていなくても、「ソーシャルメディアアカウントが自治体や省庁のオフィスによって管理されている場合」「政府職員が代理として政治家個人のアカウントに投稿している場合」「任期が終了した時にアカウントが別の役人に引き継がれている場合」など、国家の代表としての実態があれば公的なアカウントとして認められる可能性があるそうです。

合衆国最高裁判所は明確な基準を設定していないため、公的と私的両方の性質を帯びたアカウントで一般ユーザーをブロックした場合、憲法違反の責任を問われるリスクが生じます。しかし、公的なアカウントと私的なアカウントを完全に分離するか、「投稿は個人的な見解のみを表しており、国家を代表しての発言ではありません」といった免責事項を記載しておけば、憲法違反のリスクを軽減できるとのこと。

合衆国最高裁判所のエイミー・コニー・バレット判事はミシガン州の訴訟に言及し、「公人は常に時間に追われているように見えるため、すべての出会いが仕事の一部だと見なしたくなるかもしれません。しかし、彼らもまた憲法上の権利を持つ私人でもあるのです」と指摘。政治家や政府職員にも憲法修正第1条が保障する言論の自由があるため、フリード市長によるブロックが私的な立場で行われたものであれば、憲法修正第1条に違反したことにはならないと説明しました。


アメリカ合衆国最高裁判所は今回の裁定を行った上で、カリフォルニア州とミシガン州の訴訟を下級裁判所に差し戻しました。それぞれの訴訟において憲法修正第1条の違反があったかどうかは、下級裁判所が判断することとなります。

2つの訴訟の原告を支持しているアメリカ自由人権協会のエブリン・ダンフォース・スコット氏は、「この裁定は、憲法修正第1条がソーシャルメディア上で行われる言論について、政府による言論形成を依然として規制していることを強調しています。そして、ソーシャルメディアコンテンツの検閲やアクセスの制限、ある視点を別の視点より不当に高く評価したりする政府に対し、憲法上の責任を追求する方法を普通のアメリカ人に与えるものです」と述べ、今回の裁定を歓迎しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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