個人・法人のクライアントを相手にした国際エグゼクティブコーチ/企業研修講師として活動しているという『結果を出してサクッと帰る 神速時短』(ヴィランティ 牧野祝子 著、すばる舎)の著者は、「時間がない」と悩む方と接する機会がとても多いのだそうです。

とはいえ、かつては自身も同じように、時間に関する悩みを抱えていたのだとか。

そのため悩む時期も多かったようですが、そんななかで衝撃を受けたのは、“仕事では圧倒的な成果を出しつつ、プライベートも存分に楽しむグローバル企業のリーダーたち”の姿。

そこで、そうした方々のあり方に学んでいった結果、「仕事における時間の使い方」についての疑問を解き明かすことができたというのです。

「ひとりで仕事を抱え込み悩む時間を極限までなくし、周りを巻き込んで行動していく」

これが、彼ら・彼女らにあって、私たちにない働き方だったのです。

そして、さらに分析を進めると、この働き方は「開示→選択→決断→行動」という4つのプロセスに分けられ、それを「サイクル」のように回していることがわかりました。

私は密かに、これを「世界水準の『神速時短サイクル』」と名付けて、自分の働き方にも取り入れてみることにしました。(「はじめに」より)

その結果、時間を有効活用できるようになり、数年前に起業してからはコーチング事業で多くの個人・法人の顧客を抱えることに。さらにはプライベートも充実したのだそうです。

そこで本書においては、自身がグローバルリーダーたちから学んだ「世界水準の『神速時短サイクル』」を体系化し、実践しやすい時短術として紹介しているわけです。

きょうは第5章「[行動]人を巻き込み最短で結果を出す」のなかかた、「タスクみじん切り時短術」をご紹介したいと思います。

仕事は塊だから大きく見える

「大事なプレゼンの資料を用意しなければならないのに、終わるかどうか不安で、結局はまったく進んでいない」

こうした壁にぶち当たってしまうことは、誰にでもあるものではないでしょうか。大事で大きなタスクであればあるほど、精神的にも構えてしまいがち。そのため、なかなか手をつけられないうちに、ただ時間だけが過ぎていってしまうわけです。

しかし、そんなときは「タスクみじん切り時短術」が役に立つそうです。プロジェクトやプレゼンテーション資料の作成などの大きなタスクを、限りなく小さなステップに分割し、少ない時間でも着実に進めていくという方法。

必要以上に大きく見えてしまうタスクも、「みじん切り」にすれば、それほど恐ろしくないタスクになるというわけです。

たとえば、「大切なプレゼンテーションの資料をつくる」というタスクがあるとしましょう。そんなとき、「失敗できない」「でも、うまくいかなかったらどうしよう」というようにネガティブなことばかり考えていたのでは、プレッシャーに押しつぶされてしまっても当然。

そこで、みじん切りにしてみるのです。

・プレゼン資料の流れと、それぞれのセクションの内容を考える

・同僚や上司から意見をもらう

・それぞれのセクションに入れるデータや情報をまとめる

・自分で持っていない情報は、調べたり、他部署から手に入れる

・プレゼン前に同僚や上司などから第三者的な意見をもらう

(173ページより)

このようにすれば、大きなタスクも「やっぱりここは苦手」というものと、「これならできるかも」と思えるものに分けられるわけです。(171ページより)

分けるだけでこんなにラクになる

タスクの「みじん切り」をするメリットは、大きく分けて5つあるそうです。

1:ハードルが下がって、スタートしやすくなる

大きなタスクを前にすると圧倒されてしまい、着手することに抵抗を感じてしまいがち。でも複数のタスクにみじん切りにすれば、着手するハードルも下がって次に進みやすくなるのです。

2:細切れの時間に少しずつ進めることができる

多忙な現代のビジネスパーソンは、「きょうは資料づくりだけに集中しよう」などということができないもの。しかし、みじん切りで細かいタスクに分割すれば、会議の合間、外回りの合間、退社前の10分間などの“スキマ時間”を利用して一歩一歩進めることができるはず。

3:アイデアを「寝かせる」時間がとれる

デッドライン間際に1日かけてギリギリで作成した企画書よりも、みじん切りで少しずつ進めていった企画書のほうが高いクオリティが期待できるのは当然の話。みじん切りで進めた場合、必然的に何日もかけてアイデアを醸成する時間やひらめきが生まれる余地ができるからです。そのため、質も向上するということ。

4:みじん切りの切り口を他者と共有すればフィードバックがもらえる

せっかく提出できた成果物でも、「上司のイメージと違った」「組織が目指していた方向性と違った」ということになってしまったのでは元も子もありません。そこで、みじん切りの途中経過、すなわち「みじん切りの切り口」を情報共有するべき

「大きなまとまり」だと相手にとっても大きなタスクになってしまい、フィードバックも困難ですが、みじん切りされた途中経過であれば、相手が細かにアドバイスを送ることができるわけです。

5:人の力を借りるべき部分がはっきりする

自分ひとりで抱え込んでしまうのではなく、人の力を借りることも重要。しかも、みじん切りにすれば、「ここまでは自分ひとりでできる」「ここからは〇〇さんに聞いてみよう」という区分けができ、必要以上にひとりで抱え込まずに済むはず。

こうして考えてみれば、タスクの「みじん切り」をすることがいかに有効かがおわかりになるのではないでしょうか?(174ページより)


「時短術」といっても、ここで紹介されているのはよくある小手先のテクニックではなく、「働き方の根本、真髄の部分」にアプローチする考え方。そういう意味では、自分らしい充実した人生を送るための指南書でもあるといえそうです。

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Source: すばる舎