ウォーレン・バフェットは、「正しい人材を雇うことが重要だ」という信念の持ち主です。
この件については、よく知られた以下のような名言も残しています。
以前、誰かがこう言うのを聞きました。「雇うべき人材を探す際には、3つの特質を兼ね備えた人を探すべきです。それは誠実さ、知性、そしてエネルギーです。そして、最初に挙げた特質(誠実さ)がないと、あとの2つがあることが命取りになります」と。
言われてみれば、本当にその通りです。(誠実さを)備えていない者なら、愚かで怠け者でいてくれたほうがましです。
これはまさに名言で、さらに深く分析する価値があります。
「オマハの賢人」の異名を持つバフェットが誠実さに最高の価値を置いているのは、誠実さがなければ、知性とエネルギーが間違った方向に導かれ、最悪の場合は有害になるおそれもあると考えているからです。
たしかに、採用時に考慮する要素として、スキルやIQ、職種に関する専門知識は重要で不可欠です。しかし、採用候補となった人は、これらに加えて、倫理的な行動や仕事における誠実さも備えている必要があります。
こうした人材採用のアプローチは、バフェットの長期投資戦略、つまり「信頼に足るリーダーシップがあり、倫理性の強い企業文化が育まれている会社の株式でポートフォリオを構成する」という戦略とも一致しています。
「誠実さ」を重視すべき理由
誠実で言行が一致している人は、自然に尊敬を集め、影響力を発揮するようになります。
雇い入れる側としては、こうしたタイプを望ましい人材と考え、面接し、採用すべきです。さらには、リーダーやマネージャーといった役割に昇格させる従業員も、こうした特質を持つ人を選ぶべき。
それなのに、採用面接において、応募者の誠実さを見極めようとする質問があまりおこなわれないのは、なぜでしょうか?
これには、いくつかの理由があります。
第一に、採用責任者が、「人の誠実さを評価すること」が、「企業の生産性や成功に不可欠な、具体的な結果に結びつき得る特質やスキル」で応募者をふるいにかけるのと同等の価値を持つ、という信念を持っているとは限りません。
また、誠実さを推定することは、実績評価プロセスを通じて人の能力を測定することよりもはるかに困難で、不確実だという事情もあります。
採用面接で誠実さを見極めることが、採用に関する決断にどれほどの価値をもたらすのか、いまいち確信が持てないという人もいるかもしれません。
誠実さがなぜそれほど重要な価値基準なのか、以下にその理由を挙げて説明しましょう。
信頼性:誠実さとは、正直で信頼できる性質を指します。適切な質問を投げかけることで、採用候補者が、これまで誠実さや信頼性で実績を残してきたかを推し図るのに役立ちます。
倫理的な意思決定:面接の質問を通して採用候補者の誠実さを評価することで、候補者が倫理的に難しい判断を迫られた時にどう対応するかも明らかになります。候補者の回答から、肝心な時に正しい判断ができる、信頼に足る人物かどうか伺い知れるからです。
企業文化との適合性:誠実さを強みとする人の考えは、間違いなく、雇い入れる側の企業の価値観や規範とも一致しています。このように価値観が一致していれば、軋轢が生じるリスクも減少します。
リスクの軽減:誠実さに欠ける従業員は、詐欺や不正行為、イメージの悪化など、雇い先の企業にかなりのリスクをもたらすおそれがあります。面接時に適切な質問を投げかけることで、要注意人物を特定し、これらのリスクを軽減することができるでしょう。
チームの活性化:誠実さを示すメンバーによって構成されたチームは、共同作業がよりスムーズになり、コミュニケーションも円滑で、共通の目標を達成しやすい傾向があります。