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SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」のキットが違法に取引されていることが報告される


SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」は記事作成時点で5000基以上展開されている人工衛星から、ユーザーが所持するStarlink用のアンテナなどに向けて信号を送信することで、インターネットサービスがない地域でもインターネット接続を可能にするというサービスです。しかし、イエメンやスーダンなどの一部の国や地域では、Starlinkを運用することが認められていないにもかかわらず、違法に入手したStarlinkシステムが展開されているとのことです。

Elon Musk's SpaceX Sees Starlink Black-Market Trade Grow Worldwide - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/features/2024-03-25/elon-musk-s-spacex-sees-starlink-black-market-trade-grow-worldwide


SpaceXがある国や地域でStarlinkサービスを展開するには、まずその国や地域の政府と協定を結ぶ必要があります。しかし、「既存の現地パートナーとの兼ね合い」「安全保障上の問題」などから、一部の国や地域では協定を結ぶことができず、Starlink用アンテナの出荷などを含む行為が禁止されています。

しかし、アフリカの地理空間やガバナンス、リスクの専門家であるマニュエル・ヌトゥンバ氏は「Starlinkサービスが提供されていないにもかかわらず、一部の人々が違法にStarlinkを使用しています」と指摘しています。海外メディアのBloombergの調査では、Starlink接続のためのキットが違法に取引され、アクティブ化された例が確認されています。


実際に、Starlinkサービスが提供されていないはずのイエメンでは、ある政府高官が「イエメン国内でStarlinkが広く利用されている」ことを認めています。この政府高官によると、多くの人々は、イエメンで提供されている低速で検閲の多いインターネットサービスを回避するために、違法に手に入れたStarlinkを使用しているとのこと。また、内戦が続くスーダンでは、通常のインターネットが数カ月にもわたって停止しています。そんな中、スーダンの準軍事組織「Rapid Support Forces」はStarlinkを軍需品の補給などに使用していることも報告されています。

オーストラリア研究所の国際・安全保障問題担当上級研究員であるエマ・ショーティス氏は、「Starlinkの違法取引は一般的に現地の民間企業が取り仕切っています。そのため、誰がStarlinkにアクセスし、どのように使用されているかについて、現地政府からの説明がほとんどないことが問題です」と語りました。


また、Starlinkのサービスがほとんど提供されていない中央アジアの国々では、2024年にカザフスタン政府が違法に取引されたStarlink端末の取り締まりを行っています。しかし、匿名のトレーダーは「この取り締まりは闇市場でのStarlink端末の価格が上昇しただけで、ほとんど効果がありませんでした」と暴露しています。

さらに、ウクライナとの紛争状態にあるロシア軍がStarlinkを前線で使用していることも報じられています。一方で、SpaceXのイーロン・マスク氏は「SpaceXが公式にロシアに対しStarlink端末を販売することはない」と主張しています。

ロシア軍がSpaceXの衛星インターネット「Starlink」をウクライナとの戦争の前線で使用していると報じられる - GIGAZINE


SpaceXはこれらの国や地域で違法にStarlink端末が取引されていることについて「SpaceXは、Starlink端末が制裁の対象国や無許可の当事者によって使用されていることを把握した場合、ただちに調査を実施し、使用が確認された場合にはその端末を非アクティブ化する措置を講じます」と宣言しています。

SpaceX does not do business of any kind with the Russian Government or its military.

Starlink is not active in Russia, meaning service will not work in that country. SpaceX has never sold or marketed Starlink in Russia, nor has it shipped equipment to locations in Russia. If…

— Starlink (@Starlink)


同様の動きは南アフリカでも活発になっています。記事作成時点で南アフリカ政府はStarlinkの国内での運営申請を承認していませんが、南アフリカには、Starlinkが認可されている周辺国のモザンビークで端末を購入し、違法に南アフリカの顧客に届けているあるプロバイダー集団が存在するとのこと。なお、南アフリカ政府は国民に対し、「違法にStarlinkサービスを国内で使用すると最大500万ランド(約4000万円)もの罰金が科せられる」との(PDFファイル)声明を発表しています。

アフリカの他の国の規制当局も同様の警告を発しており、ガーナの国家通信局は2023年12月、ガーナ国内でStarlin端末の販売や運営に関与する人物に対し「ただちに停止するよう」求める声明を出しています。ジンバブエでは、Starlink端末の販売に関与する企業に対し、規制当局が警告を発しています。


Bloombergによると、アメリカ政府は、Starlinkがアメリカの敵対国にわたらないように、Starlinkに適用されている輸出規制をさらに強化する可能性があるとのこと。あるセキュリティコンサルタントは「Starlinkに求められるのは、キットの電源が入った時に位置情報を入手し、アメリカの輸出規制に違反しているキットを使用不能にする措置を導入することです」と指摘しています。

アメリカ国務省の報道官は「Starlinkのような衛星通信サービスは、デジタルディバイドを撤廃するための重要なツールである一方、私たちは、SpaceXが各国でサービスを展開するためのライセンスを発行するための適切な措置を講じることを求めています」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1r_ut

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