つい先日まで結婚発表で日本全体が祝賀ムードだった

常勝を目指すアメリカ西海岸の大正義球団俺たちのドジャースと複数年合計1000億円にもなる巨額契約を結び、日本の野球少年のために全国2万の小学校に3個ずつ計6万個のグローブを配ったりして、世界のひのき舞台で大活躍を続けてきたスーパースター、大谷翔平さん。

シーズンイン直前に日本人女性とのご結婚まで発表され、日本全体が祝賀ムードに浸っておりました。あっ、普通にそういう感じだったんですね諒解っス。

パドレスとの開幕シリーズを前に、記者会見するドジャースの大谷翔平(右)。左は水原一平通訳=2024年3月16日、韓国・ソウル
写真=時事通信フォト
パドレスとの開幕シリーズを前に、記者会見するドジャースの大谷翔平(右)。左は水原一平通訳=2024年3月16日、韓国・ソウル

そこから急転直下、長年にわたり大谷翔平の活躍を支えてきた専属通訳・水原一平さんが、大谷さんの信頼をバックに横領に近い形でカネをつまみ、あろうことかカリフォルニア州では違法とされるスポーツ賭博(ベッティング)に7億円もの資金を突っ込んでいたことが発覚し大騒ぎとなったわけであります。それも、FBIが捜査してるぞとか、最近ではDHS(国土安全保障省)も捜査に参加って話が出てきて、単発の賭博事件じゃないんじゃないのって感じで騒動が大きくなってきました。大変だこりゃ。

あまりにも突然のことでしたので、シーズン開幕を控えたアメリカのスポーツシーンも騒然とし、日本のスポーツマスコミだけでなく連日テレビもネットも大谷翔平さんの突然の暗転に唖然とし、驚愕しました。どうなってしまうんでしょう。

横綱に求めた「強さだけでない人間としての品格」を体現

いままで実力でしのぎを削る世界最高峰のスポーツ界において、日本人はどっちかというとさえないポジションに甘んじてきたのも事実です。小さく華奢な身体、筋肉がついていくと一緒に脂肪も増えがちな日本人特有の遺伝的な身体性は、瞬発力とパワー、正確さのトライアングルの大きさが重視されるスポーツでは民族的に不向きとされてきたことも背景にあります。

それでも、戦前から競技人口が日本でもトップクラスの野球は、アジア人初のメジャーリーガー村上雅則さん、そして冒険的なメジャー挑戦が成功した野茂英雄さんを経て、イチローさんや松井秀樹さん、松井稼頭央さん、長谷川滋利さん、井川慶さんをはじめ、川崎宗則さんや中村紀洋さん、西岡剛さんら日本球界を支える選手たちがさらなる高みを目指して奮闘してきました。

いまでもダルビッシュ有さんや菊池雄星さん、鈴木誠也さんらが活躍する中でも大谷翔平さんの、文字通り頭ひとつ出た活躍には、ある意味で国民的人気をバックにヒーロー的な存在として崇め奉る信仰の対象となってきたのです。

何より、伝え聞く大谷翔平さんの野球に対するひたむきさ、ストイックなものの考え方には日本人的美的感覚にそった英雄観と相まって、憧れを超えたすごい何かがあったように思うんですよ。至宝の扱いというか、単に人気がある、実力がすごいというだけでない、特別な何か。伝わる人柄、人間性に対する無限の信頼感であって、かつて日本人が横綱に求めた「強さだけでない人間としての品格」を生まれながらにして体得しているかのような大谷翔平さんの完璧ぶりにみんな驚嘆していました。