新版 究極の鍛錬』(ジョフ・コルヴァン 著、米田 隆 訳、サンマーク出版)は、ロングセラーとして知られる同名書籍の新版。

2010年に発売された原著は大きな話題を呼んだので、記憶に残っている方もいらっしゃるかもしれません。結果的には20カ国以上で翻訳され、長きにわたって読み継がれることになったのでした。

そこで明らかにされていたのは、「世界的な業績をあげている人々はどこが違うのか?」という問題についての回答。徹底的な調査を重ねていった著者は、天才と呼ばれる人たちが、共通する原則に基づいて鍛錬を行っていたことを明らかにしたのです。

ちなみに著者は「フォーチュン」誌上級編集長であり、アメリカでもっとも支持されるジャーナリストのひとりとして広く講演・評論活動を行っている人物です。

「できること、できないことは不可思議な天賦の才能の有無によって決まるのではない」ということを研究が示していた。

「天賦の才能など存在しない」ということを示唆する研究さえある。その代わり、研究者たちが「究極の鍛錬」と呼ぶ、よく練られた一連の訓練法が、私たち自身の達成レベルをほぼ左右していることが示された。成功への過程は本来我々が自分でコントロールできるのだ。(「はじめに」より)

しかし、著者には気になることもあるようです。多くの人が本書のメッセージを受け入れ活用しているにもかかわらず、いまだに「天賦の才能が大事だ」という信念や「自分には才能がない」という思い込みに縛られている人もいるということ。

よりよいパフォーマンスや偉大ささえも、選択的努力の賜物だということが研究を通じ圧倒的に証明されている。私たちがこれまで考えていた以上に高いパフォーマンスを実現する能力は「究極の訓練」を行う私たち自身の手に委ねられているのだ。(「はじめに」より)

こうした考え方に基づく本書の第7章「究極の訓練を日常に応用する」のなかから、きょうは「仕事上で訓練する」という項目に焦点を当ててみたいと思います。根底にあるのは、いかなる状況でも可能な“自分の能力をよくする活動”は「自主調整」だという考え方です。

仕事の前に「きょうのゴールを決める」

自主調整のスタートラインは「ゴール設定」。といっても大きな目標を設定しなければならないわけではなく、きょう行うべきことに関する「身近な目標の設定」が重要であるようです。

たとえば、受注し、決済して利益を出す、新しいプロジェクトの提案書を書き上げるといった目標だ。これに対しもっとも素晴らしい業績を上げる者は、結果ではなく、結果に至るプロセスを目標に置く

たとえば、単に注文をとるというのではなく、顧客が語っていないニーズを見極めることに焦点を当てて目標を設定する。(255〜256ページより)

つまり重要なのは、特定した仕事をいくつかの要素に分け、いかにうまくできるようになれるかに焦点を絞ること

そしてゴールが設定されたら、次の事前準備は「その目標にいかにたどり着くか」計画を立てること。自分の行く先にどうたどり着くかを、曖昧ではなく正確にしっかりと考えるわけです。

なお、仕事の事前準備の段階で行う自主調整のなかでもっとも重要なのは、態度と信念だとも著者は述べています。

もっとも素晴らしい業績を上げる人たちは、研究者が自己有能感(自分はできるのだという感覚)と呼ぶ強い強烈な信念をもって望んでいるもの。そして同時に、努力は報われるという強い信念を持っているというのです。(255ページより)

仕事中に「メタ認知をする」

最高の結果を出す人は、自分自身のことを注意深く観察しているものなのだそう。

最高の結果を出す者は自分自身のことを注意深く観察しているのだ。実際のところ自分自身から抜け出して自分の精神で自分の身に今何が起こっているかを客観的に観察し、どのようになっていくか自分自身に尋ねている

研究者は、このことをメタ認知と呼んでいる。つまり、自分自身に関し知り、自分に関することを考える。達人はこうしたことを普通の人よりずっとうまく体系立てて実行する。メタ認知は彼らの確立した日課の一部となっている。(257〜258ページより)

メタ認知が重要なのは、状況が刻々と変化するから。メタ認知は訓練すべき機会を見つける役割を果たしており、さらには環境の変化に適応するのを助ける貴重な役割をも果たしているというわけです。(257ページより)

仕事のあとで「なぜ失敗したかフィードバックする」

結果に関し役に立つフィードバックのない訓練はない。

仕事で見つける訓練の機会も同様で訓練結果に評価がないかぎり役に立たない。これはどうみても自己査定と呼ぶべきものにちがいない。

なぜなら訓練活動は自分の頭の中で生じたことで、何をしようとし、その結果がどうだったかわかるのは本人だけだからだ。(259ページより)

自己査定でなにより重要なのは、「なぜ失敗したか」を見つけること。普通の人は、「失敗は自分がコントロールできないことによって引き起こされている」と信じている部分があるのだとか。たとえば、競争相手が幸運だったとか、課題が難しすぎたとか、生まれつき才能がなかったから、というように。

それに対して達人は、失敗したのは自分に責任があると考える。これは単に性格や態度の違いではない点に注意する必要がある。(中略)最善の結果を残す人々はとても具体的に技術ベースの目標を設定し、実現に向け戦略を決定する。自分たちが欲しいものを手に入れるにはどうすればよいのか明確に考え抜く。(261ページより)

だからこそ、うまくいかないときは、「失敗と、失敗の原因となった要素」をしっかりと結びつけることができるわけです。(259ページより)


「究極の訓練」と聞けば「難しそうだな」と感じられるかもしれませんが、本書は決して難解ではありません。それどころか実用性の高いものばかりなので、活用してみれば、努力することが楽しくなるのではないかと思います。

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Source: サンマーク出版