タイトルからわかるように、『お金の管理が苦手なフリーランスのための お金と税金のことが90分でわかる本』(廣岡 実 著、アスコム)はフリーランスに向け、お金と税金についてのあれこれを解説した書籍。
税理士業を始めてから28年になるという著者は、これまでに多くのフリーランスの人々の税務をサポートしてきたのだそうです。職種もカメラマン、漫画家、小説家、スタイリスト、ヘアメイクなど多種多様。つまり本書には、そうした活動によって培われたノウハウが凝縮されているわけです。
フリーランスは会社員に比べてお金の管理がとても大切です。
なぜなら、仕事が自由にできるのと同じく、お金の管理もあなた自身に任されているからです。儲けが出たら税金を支払わなければいけませんし、報酬がちゃんと振り込まれているかをチェックし、仕事に必要なものの購入・支払いもしなければいけません。(「はじめに」より)
したがってフリーランスになったら、「知らなかった」では済まされなくなるわけです。しかし現実問題として、お金に関する知識のない方だっているもの。事実、お金や税金のルールを知らなかったばっかりに、余計な税金を支払うことになったり、事業が伸びなかったり、廃業に追い込まれたりする人などを著者はたくさん見てきたのだそうです。
とくに会社員からフリーランスに転身したばかりの人は、税金のルールの違いに戸惑うケースが非常に多いのだとか。
そこで本書では、フリーランスとしてやっていくにあたって知っておくべきお金や税金の知識をまとめているというわけです。
きょうは3章「脱どんぶり勘定! お金の管理能力をつける」のなかから、2つのポイントを抜き出してみたいと思います。
ビジネスとプライベートのカードを分ける
どれだけフリーランスとして仕事のスキルが高く、仕事をたくさんこなせる人であったとしても、「いくら稼いで、いくら使っているのか」をわかっていなければお金の不安はなくならなくて当然。いわゆる「どんぶり勘定」ではお話にならないのです。
つまり、まずお金の出入りをしっかり把握することこそが、お金を管理する力のファーストステップだということ。
ところで著者によれば、フリーランスの人に意外と多いのが、ビジネスのお金とプライベートのお金をごちゃまぜにしていることなのだそうです。
領収書だけせっせとためて、確定申告の時期になってから慌てて仕分けする人も少なくないでしょうが、それではいつになってもお金の管理能力は身につかないわけです。
その原因は、ビジネスでもプライベートでも、同じ預金通帳やクレジットカードを使っていること。つまり、それではメリハリがなくなっても無理はないのです。
そのため個人で活動しているフリーランスは、クレジットカードと通帳はビジネス用と個人用とを分け、それぞれのお金の出入りはどうなっているかを確認する習慣をつけることが大切。
ビジネスの口座から、生活費などプライベートに使うお金を毎月一定額引き出し、その範囲で生活するように意識をすれば生活費の管理もできます。
この場合は、「事業主貸」という勘定項目で処理します。これは、事業主がその事業と関係なく個人に貸し付けました、という意味合いがあります。(94ページより)
事業主貸は生活費だけでなく、経費における家事按分を差し引く際にも使用するそう。
たとえば、携帯料金をビジネスの口座から引き落としている場合がそれにあたります。仮に毎月1万円携帯料金がかかっていて、ビジネスでの使用は8割だったとしましょう。
その場合、毎月2000円分はプライベートの使用になるので、年末に2万4000円分(2000円×12ヶ月)を事業主貸として計上すればいいわけです。
ビジネス用でも個人用でも、預金残高を眺めると「手元にある現金のありか」をしっかり把握できるようになるはず。
ビジネスは、なにかピンチに直面したとしても、手元に資金(=お金)があればなんとかなるものです。そのため、日ごろからお金の流れに敏感になり、せっせとためていくことが大切なのです。(92ページより)
資料整理能力を高めよう
また、同じく重要なのが資料の整理。
日々増えていく領収書などをごちゃごちゃにしている方も少なくないでしょうが、それではあとあと面倒なことになってしまうわけです。
したがってビジネスの領収書とプライベートのレシート類は、できるだけその日のうちに分けておくべき。また、いらないものはすぐに破棄してしまうこともお忘れなく。
ちなみに領収書をきっちりノートに貼りつけている方もいらっしゃるでしょうが、そこまで手をかけなくても、月ごとの封筒かファイルにまとめておけばOK。経理事務を税理士にお願いしている場合は、税理士の指示に従って分ければいいのです。
取引先に送った見積書、請求書などの資料も別途ファイリングしておきます。(95ページより)
もしかしたら、こういった資料の整理が苦手だという方もいらっしゃるかもしれません。「せっかく自由なフリーランスになったのに」という声も聞こえてきそうではありますが、事業が大きくなればなるほど、資料の量は増えて複雑化していくものでもあります。
だからこそ、面倒であっても早めに自分のルールをつくっておくべきなのです。そのほうがあとあと楽ですし、なにかと厄介な資料の仕分けも、毎日のルーティンになればそれほどの労力を感じることもなくなっていくものです。(95ページより)
今、会社員であっても、フリーランスのお金の稼ぎ方を知っていて損はありません。
そうすれば、いざという時に、働き方の選択をすることができるようになります。
それは、あなたの人生が自由になることでもあります。
「お金のことは苦手なんです」「税金の計算なんてやりたくありません」
などと言っている人は、一生働き方を変えることはできないでしょう。(「はじめに」より)
この文章は、心にとどめておくべきかもしれません。
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