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「AIは人間より高性能だが一部のテストでは人間の方が優秀」「高性能AIの学習コストは数百億円」などをまとめたスタンフォード大学のレポート「AI Index Report 2024」が公開される


AIの研究開発は急速に進んでおり、「日常会話もコーディングも可能なAI」「高品質な画像を生成できるAI」「ロボットを高精度に動かせるAI」など高性能AIが続々と登場しています。そんなAIの現状をまとめた「AI Index Report 2024」をスタンフォード大学が公開しました。

AI Index Report 2024 – Artificial Intelligence Index
https://aiindex.stanford.edu/report/

スタンフォード大学はAIの能力や研究状況などをまとめたAI Index Reportを2017年から毎年公開しています。2024年4月15日に公開されたAI Index Report 2024には、2023年までのAIに関する膨大なデータを分析した結果が掲載されており、ページ数は502ページに及びます。レポートの要点は以下の通り。

◆01:AIは複数の課題で人間に勝るが、すべての課題で勝るわけではない
◆02:最先端AIの開発では学術機関よりも企業がリードしている
◆03:AIの学習コストが非常に大きくなっている
◆04:特筆すべきAIモデルの多くはアメリカ発で、中国が続く
◆05:AIの安全性に関する標準化された評価基準が欠如している
◆06:生成AIへの投資が急増している
◆07:AIは労働者の生産性を高める
◆08:AIによって科学の進歩が促進されている
◆09:アメリカにおいてAIの規制が急増している
◆10:世界中の人々がAIの影響を意識している

◆01:AIは複数の課題で人間に勝るが、すべての課題で勝るわけではない
言語処理性能や画像処理性能を測定する9種類のベンチマークで人間とAIのスコアを比較した結果が以下。横軸は測定した年を示し、縦軸は人間のスコアを100%とした場合のAIのスコアの割合を示しています。なお、ベンチマークは複数のAIを対象に実行されており、各ベンチマークで最も高いスコアを記録したAIの値が採用されています。グラフを見ると、単純な言語処理や画像認識といったタスクでは人間よりもAIの方が高いスコアを示していることが分かります。一方で人間社会の常識に基づく判断能力が問われる視覚常識推論(VCR)ベンチマークや競技レベルの数学(MATH)では人間の方が高いスコアを保っています。


◆02:最先端AIの開発では学術機関よりも企業がリードしている
スタンフォード大学がまとめた「2023年の特筆すべき機械学習モデル」のうち、企業によって開発されたモデルは51個、企業と学術機関が協力開発したモデルは21個、学術機関が開発したモデルは15個でした。


◆03:AIの学習コストが非常に大きくなっている
特筆すべき機械学習モデルの学習に使われたマシンの処理能力(FLOP)をまとめたグラフが以下。学習に使われるマシンの処理能力は上昇傾向にあり、企業のモデル(ピンク)の方が学術機関のモデル(青色)よりも高性能なマシンで開発されていることが分かります。


機械学習モデルの学習コストをまとめたグラフが以下。マシンの性能向上やモデルの複雑化に伴って学習コストは増大しており、GPT-4の学習には7800万ドル(約121億円)、Gemini Ultraの学習には1億9100万ドル(約295億円)もの費用が投じられています。


◆04:特筆すべきAIモデルの多くはアメリカ発で、中国が続く
特筆すべき機械学習モデルの開発国はこんな感じ。アメリカは61個のモデルを開発し、中国は15個、フランスは8個、ドイツは5個のモデルを開発しています。


◆05:AIの安全性に関する標準化された評価基準が欠如している
AIは人間に対する脅威をもたらすこともあり、すでに「チャットAIを悪用した詐欺」や「画像生成AIを悪用したディープフェイクの拡散」といった事件が発生しています。AIが原因となった事件の発生件数をまとめた以下のグラフを見ると、事件発生件数が増加傾向にあることが分かります。


スタンフォード大学はAIの安全性を正しく評価するために「標準化されたAI評価基準」が必要だと論じています。

◆06:生成AIへの投資が急増している
全ジャンルのAIに対する民間投資の総額は、2021年をピークに減少傾向にあります。


一方で、生成AIに限ると民間投資の総額は2023年に急増し、252億3000万ドル(約3兆9000億円)に達しました。


◆07:AIは労働者の生産性を高める
以下のグラフは、複数の企業にコストと収益について尋ね、「AIによってコストが減ったと回答した割合」と「AIによって収益が増加したと回答した割合」を業種別にまとめたものです。すべての業種で半分以上の回答者が収益が増加したと回答し、サービス業と製造業では半分以上の回答者がコストが減ったと回答しました。


◆08:AIによって科学の進歩が促進されている
2023年にはアルゴリズム改善AI「AlphaDev」や、新素材発見AI「GNoME」といった科学を前進させる能力を持ったAIが発表されました。

AlphaDevはGoogle DeepMindが開発したAIで、人間では発見困難な手法を用いてアルゴリズムを改善することができます。AlphaDevの詳細は以下の記事にまとめています。

DeepMindが深層強化学習を利用してアルゴリズムを改善するAI「AlphaDev」を発表、すでにソートアルゴリズムやハッシュ関数の高速化に成功 - GIGAZINE


GNoMEもAlphaDevと同じくGoogle DeepMindによって開発されたAIで、「化学的に安定した構造」を効率的に発見可能です。2023年11月にはGNoMEを用いて220万種類もの結晶構造が発見されたことが報告されています。

Google DeepMindがAIツールを使って220万種類の新しい結晶構造を発見、これまで発見されてきた数の45倍以上 - GIGAZINE


◆09:アメリカにおいてAIの規制が急増している
2016年時点ではアメリカのAI関連規制は1件だけでしたが、2023年には25件の規制が新たに制定されました。


◆10:世界中の人々がAIの影響を意識している
以下は、AIが自らに与える影響に関するアンケートの結果を2023年(青)と2022年(赤)で比較したグラフです。「AIについてよく理解している」と回答した人は2022年の64%から2023年の67%に上昇し、「AIを用いたサービスは今後3~5年で私の生活を変化させる」と回答した人は2022年の60%から2023年の66%へ上昇しました。


なお、AI Index Report 2024の全文は以下のリンク先で閲覧できます。

AI Index Report 2024
(PDFファイル)https://aiindex.stanford.edu/wp-content/uploads/2024/04/HAI_AI-Index-Report-2024.pdf


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in ソフトウェア, Posted by log1o_hf

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