晩婚化が進んでいる。40代での出産はキャリア女性にとって有望な選択肢となるのか。『こんな世の中に誰がした?』が話題の社会学者・上野千鶴子さんと『少子化 女“性”たちの言葉なき主張』を上梓した雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんの対談をお届けしよう――。

40代での出産は1つの選択肢に

【上野】海老原さんは新著の4章で妊活について、頁数を数えましたけど、50ページも割いていらっしゃる。これは全体のほぼ5分の1にあたります。どういう意図なんでしょうか。

【海老原】働く女性、特に30代の女性が抱えやすい悩みのひとつに妊娠・出産があると思います。その背景には、2000年を過ぎたあたりから沸き起こってきた、女性識者や行政による「早く産むべき」論があるのではないでしょうか。20代で産むべきという風潮の下で、その年齢を過ぎた30代・40代女性は焦燥やあきらめを感じさせられています。そんな女性たちに、私は「今は40代でも出産可能なのだからあきらめなくていいんだよ」と伝えたいと思っています。

雇用ジャーナリスト 海老原嗣生さん
写真=本人提供
雇用ジャーナリスト 海老原嗣生さん

【上野】40代での初産はリスクが高いといわれています。すでに出産経験のある女性は40代でも産みやすいかもしれませんが、初産の場合は違うでしょう。

【海老原】私は、40代だとどのくらいの希望者が出産までたどりつけるか調べてみました。女性の妊孕率(子どもを産む力)は年齢とともに低下しますが、30歳を100とした場合、40代前半では70~75程度への低下でしかありません。実際、大正~昭和戦前期の女性では、40代を通した出生率が0.4程度ありました。それも、初産だと思われる35歳以上の晩婚者層で出生率が高くなっています。

【図表1】妻の結婚した年齢別 40歳以降で出産した平均人数

高齢出産のリスクをどう考えるか

【上野】戦前の40代出産者には、出産経験のある経産婦のほうが多かったのではないでしょうか。それに、もし40代の初産者が多かったとしても、今の産科学でもやはり40代での初産のリスクは高いとされています。もうひとつ、高齢出産では障害児出産リスクが高くなります。リスクというと確率ですが、当事者にとってはゼロかイチかですから大問題です。

【海老原】しかし、そこは皆さんに正しい知識を持ってもらうべきだと思います。リスクが高いと聞くと、ダウン症児の出産可能性が2分の1ほどもあるように思いがちですが、データを見るとその可能性は40歳で90分の1です。この確率を知ったうえで判断してもらうことが大事ではないでしょうか。現在では、生まれてくる子どもの障害の有無を事前に調べる方法もあります。さらに進んで、人工授精の段階で、子宮に戻す卵子を選ぶ着床前診断も可能になりました。