日本がものづくり大国として復活するには、何が必要なのか。製造業の現場をYouTubeで解説しているものづくり太郎さんは「生産現場を理解していないコンサルタントを入れている企業も少なくない。彼らは“虚無“を売っているといってもよく、日本の技術進歩を停滞させてきた」という――。

※本稿は、ものづくり太郎『日本メーカー超進化論 デジタル統合で製造業は生まれ変わる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

会議で説明するビジネスパーソンの手
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低すぎる工場の生産性を高めたい

本稿では、これから私、ものづくり太郎が何をしていくつもりなのかをまとめながら、製造業の未来を考えていきます。

私がこれからやろうとしているのは、誰かがやらなければならないことです。誰かがやったなら、日本の製造業はガラリと変わります。おおげさではなく製造業の存亡がかかっていることです。

日本のメーカーがこれから世界と戦っていくためには何をしていくべきなのか? その道筋を示していきたいと考えているのです。

実をいうと、少し前までは自分で工場を開設することを予定していました。どうして工場をやろうと考えていたかといえば、目的の1つはやはり未来への道筋を示したかったからです。

日本の工場の生産性が低すぎることはここまでに解説しました。しかし、的確なデジタル化ができたなら稼働率はまったく違ってきます。

装置設計次第で生産性は大きく向上させられます。「百聞は一見に如しかず」ともいいますが、その様子を動画にして配信していこうと考えていました。

計画していた工場経営を中止した理由

工場を開設するというのは経営をすることです。当然ながら利益をあげることを前提にして、そのうえで工場をデジタル化する見本を示していくつもりだったのです。

なぜそこまでしようと考えていたのかといえば、ものづくり太郎は製造業に育ててもらった人間だからです。製造業に恩返しをするため、現場の変革をモデル化しようと考えていました。

しかし、工場経営はいったん中止しました。危機感が薄すぎる今の状況をかんがみれば、まず製造業界の上流を変えていくべきではないかと気がついたからです。

現場の効率を高めるのは重要なことながら、現場を動かす上流を変えることのほうが製造業全体には意味があることではないかと考えました。

180度、方向転換することにしたわけなので、工場は開設しません。もしかしたら、いずれ開設することもあるかもしれませんが、まず、本当の意味での案内人のような役割を果たしていこうと決めたのです。

少しおおげさに言えば、製造業界のアンバサダーのような存在になっていきたいと思っているのです。