人手不足が深刻だ。東京商工リサーチの調査によると、2023年に人手不足を理由に事業を継続できなくなった企業は158社にのぼる。特定行政書士の横須賀輝尚さんは「特に運送業、建設業、介護事業などの分野で人手不足が深刻だ。しかも、ホワイト企業ほど採用に苦労しているという実態がある」という――。
輸送トラック
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ホワイト企業ほど人材確保に苦労している

「人手不足倒産」という危機が現実のものとなってきました。国立社会保障・人口問題研究所による最新の推計では、日本の人口は今後50年間で約3割減少するとされています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)。この人口減少は、労働力市場にも大きな影響を及ぼし、すでに多くの産業で人手不足が深刻化しています。さらに東京商工リサーチの調査によると、2023年に人手不足を理由に事業を継続できなくなった企業は158社に上ったという事実もあります。

一方で、昨今のコンプライアンス意識の高まりも相まって、労働環境の改善や従業員の満足度向上を目指し、「ホワイト企業」と称される組織も増加しています。これらの企業は、働きがいも働きやすさも追求しており、理論的には多くの求職者からの関心を集めやすいはずです。しかしながら、実はなぜかホワイト企業ほど人手を確保することに苦労しているというパラドックスが生まれているのです。

これは一体、どのような矛盾なのでしょうか。そして、ホワイト企業が直面するこのジレンマの背景には、どのような事情があるのでしょうか。本稿では人材不足に悩む業界にフォーカスしつつ、この背景を明らかにしていきます。

採用に成功している企業はデジタル化やSNSの活用が得意

日本の人手不足問題は、多くの業界での大きな課題となっています。特に、運送業、建設業、介護事業といった分野では、この問題の影響が顕著に表れており、企業は日々、人材獲得のための様々な施策に奔走しています。2024年問題として知られる、運送業界の労働力不足は、この中でも特に深刻な状況です。運輸業界は常に人手を必要としていますが、近年ではその需給ギャップがさらに拡大しています。

人材を確保している企業は、その成功の秘訣として、従来の採用手法に加えて、より積極的なアプローチを採用しています。例えば、業界に特化した専用の求人サイトを立ち上げることで、求職者に対し直接的にアピールを行っています。さらに、X(旧Twitter)やTikTokなどのSNSを利用し、社内の雰囲気や実際の業務風景を積極的に公開することで、企業文化への理解を深め、求職者の興味を引きつける工夫をしています。これらの取り組みは、特に若年層の求職者に対して高い効果を発揮し、彼らが自分の働くイメージをしやすくすることに繋がっているのです。