アイアンマンやムーンライトなどMarvelコミックスのカラー表紙を制作する方法をアーティスト自らムービーで解説

マンガの表紙は、ショップやサイトで並んでいるときにまず表示されるもののため、作品の魅力を伝えるためにかなり重要な要素です。そんな表紙のカラーイラストを完成させるまでのプロセスと重要なポイントについて、Marvelのカラーアーティストであるレイチェル・ローゼンバーグ氏が解説しています。

How to Color a Comic Book Cover - YouTube


ムービーでは、チョコレートで有名な「m&m's」がMarvelとコラボした「Small town big trouble!」というコミックスのカラー表紙を題材にしています。

ローゼンバーグ氏によると、最初のステップは表紙の線画を受け取り、隅々まで線画をチェックすることだそうです。主にモノクロの絵で用いる「グレースケール」が含まれている場合はカラーに置き換える必要があるため、線画が白黒のみで描かれているか確認する必要があります。

線画に問題がない場合、線に合わせてオブジェクトを選択する「なげなわツール」でキャラクター、小物などパーツを選択し、色分けをするために塗りつぶします。

塗りつぶした後には、ツールによる選択が甘くて濡れていない部分やはみ出している部分などを鉛筆ツールで修正。

キャラクター全体を一色で塗った後は、キャラクターをパーツごとに塗り、塗るたびにパーツをレイヤー分けしています。ローゼンバーグ氏によると、この時は正確な色で塗る必要はなく、ランダムな色で塗り分けをすればOKとのこと。

塗り分けが正確にできていたら、次のプロセスでメインのカラーに変更すればOK。この時、塗り分けは暗めの色で作成してメインカラーは明るめに描くことで、作業の進度がわかりやすくなります。また、印刷をすると全体的にPC上で見るよりも暗めな印象になりがちのため、ローゼンバーグ氏はメインカラーは明るめになるよう調整しているそうです。

基本的な色を付けた後は、レンダリングの工程に入ります。レンダリングとは、線画にべた塗りしていたものに光の濃淡を調整したり、影を付けたりと加工することで、絵が立体的に見えるよう加工する作業のこと。

また、レンダリングは絵に質感を付けるためにも重要です。例えば、アイアンマンの場合は全身が金属製のアーマーとなっているため、周囲の光や効果を反射するメタリックな光沢が必要になります。

色塗りのプロセスは人によって異なります。ローゼンバーグ氏の場合は自身が元々油絵を専門に学んでいたため、テクスチャ化されたブラシを使用する絵画的なアプローチを好んで使っているそうです。

次に、ロボットの目や胸元の光、太陽光で輝く部分、ガラスの光沢など、特殊効果をつけていきます。

特殊効果については、他に「ムーンナイト」を例に挙げると、夜間のシーンが多いためグロー効果を使ってぼかしの入った光を多く演出しています。このような特殊効果による演出で、クリエイティブなカラーイラストに仕上げています。

ローゼンバーグ氏は「『絵が完成した』と感じることは難しいです。どこまで工夫し、何を試みたのかは、決して完璧に終わることはありません。そのため、確認すべきなのは『すべてのオブジェクトに触れたかどうか』です。すべてのオブジェクトにハイライトやシャドウなどを追加し、すべてがレンダリングされているかを確認したら、仕上げのステップに入ることができます」と話しています。最後のステップは、イラストにサインを入れることです。

ローゼンバーグ氏は、12年間Marvelコミックスの色塗りを担当しているとのこと。ローゼンバーグ氏はマンガのストーリーを伝えるために、カラーアーティストが重要な役割を果たすことができると述べた上で、「読者が私の作品を見たとき、表紙イラストが読者を魅了して、作品に対して何か感情を抱いてくれることが理想的です」と語りました。