ハードウェア

NVIDIAと日本の産業技術総合研究所が提携して構築を進める量子スーパーコンピューター「ABCI-Q」とは?


日本の産業技術総合研究所(AIST)は量子コンピューティング機能を提供するハイブリッドスーパーコンピューターを構築するプロジェクト「ABCI-Q」をNVIDIAと提携して進めています。ABCI-Qは早ければ2025年度から利用可能で、医薬品研究や物流の最適化などのアプリケーション開発が想定されています。

Nvidia to help Japan build hybrid quantum-supercomputer - Nikkei Asia
https://asia.nikkei.com/Business/Technology/Nvidia-to-help-Japan-build-hybrid-quantum-supercomputer


NVIDIA To Collaborate With Japan On Their Cutting-Edge ABCI-Q Quantum Supercomputer
https://wccftech.com/nvidia-japan-abci-q-quantum-supercomputer/

ABCI-Qは、AISTの量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)に富士通が構築したスーパーコンピューターで、将来的には量子ハードウェアとの統合が想定されています。

また、ABCI-Qには、Quantum-2 InfiniBandアーキテクチャで相互接続された500以上のノードに、データセンター向けGPUのH100が2000基以上搭載される予定です。さらに、ハイブリッド量子コンピューティング用プラットフォームのCUDA-Qが統合され、量子コンピューティングと古典コンピューティングという2つのシステムを用いたハイブリッドなプログラミングが可能になります。

量子コンピューターは、従来のコンピューターでは複雑すぎる計算を解くことができる反面、周囲の環境が少し変化しただけでもエラーを起こしてしまうという特徴があります。そこで、量子コンピューティング技術をスーパーコンピューターと組み合わせることで、この問題を解決し、これまで以上に複雑な処理に対し量子コンピューティング技術を適用できる可能性が期待されています。


NVIDIAのHPC および量子コンピューティング担当ディレクターのティム・コスタ氏は「研究者は、量子コンピューティングでの極めて困難な課題に立ち向かうために、高性能なシミュレーションを必要としています。CUDA-QやNVIDIA H100が、そのパイオニアであるAISTのような研究機関で導入されることで、量子コンピューティングは極めて重要な発展を遂げるようになり、開発が加速されるでしょう」と述べています。

G-QuATの堀部雅弘副センター長は「ABCI-Qを通じて、日本の研究者は量子コンピューティングについてより深く知り、実用的なアプリケーションのテストおよび開発を加速できるようになるでしょう。NVIDIAのCUDA-Qプラットフォームと NVIDIA H100により、量子コンピューティング研究の新たなフロンティアを探求する科学者を支援します」と語りました。


ABCI-Qは早ければ2025年度から有償での利用が開始される予定で、AISTによると、民間企業の研究者に対してクラウドシステムを介してABCI-Qに質問を入力、応答を受け取るシステムが導入されるとのこと。このシステムを民間に開放することで、量子コンピューティング技術のさらなる発展を図っています。

Nikkei AsiaはABCI-Q利用の一例として「最大積載量で複数回停車する予定のトラックに対して、二酸化炭素排出量を最低限に抑えた最短ルートの構築が可能になり、最適な輸送ルートを決定しようとしている物流会社に役立つことになります」と述べています。


2023年12月には、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが岸田文雄総理大臣と会談し、多分野にわたる連携強化や日本のニーズに応えるAI製品を安定的に供給することについて話し合っています。G-QuATが進めるABCI-Qの開発も、量子コンピューティングやAIなどの最新技術を生かして、民生産業での主導権を得たい日本の技術革新フェーズの一環とみられています。

また、NVIDIAとAISTは、ABCI-Qを使用した産業用アプリケーション開発分野でも協力することを報告しています。

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by log1r_ut

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