ゴルフ界では、アマチュア資格を失いながらも統括団体のプロ資格を取得していない選手が多く存在する。女子ゴルファーの幡野夏生選手は、2018年のプロデビュー戦でホールインワンを達成し話題となったが、いまだプロテストには合格できずにいる。彼女の現在地に、ゴルフライターのコヤマカズヒロさんが迫った――。(連載第2回)
女子ゴルファーの幡野夏生選手
筆者撮影
女子ゴルファーの幡野夏生選手。JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)プロテスト合格のため、コーチと二人三脚で日々スイングの改善に取り組んでいる

フジサンケイレディスの初日に放った劇的な一打

2018年の「フジサンケイレディスクラシック」の初日、川奈ホテル富士コースの名物パー3、17番ホールでホールインワンを達成した選手がいた。その日、プロとしてレギュラーツアーのデビュー戦だった幡野夏生だ。

17番は大きく裾野が広がった砲台グリーンで、古くから難ホールとして知られている。1987年の「フジサンケイクラシック」、難度の高い右の崖下から放たれた尾崎将司の劇的なチップインバーディーが今でも語り草になっているのは、このホールが特別に印象的なレイアウトであることと無関係ではない。

この年、ホールインワン賞にかけられた賞金は800万円。幡野は一振りでそれを手中にした。

「壮大なドッキリかと思った」あのコメントから6年

このホールインワンを有名にしたのが、カップインした後の幡野が見せたリアクションの面白さだった。幡野は耳をつんざくような絶叫で、ピョンピョンと飛び跳ねながら、その喜びを表した。これまでのゴルフトーナメントでは、見ることのなかった天真爛漫な振る舞いが多くの人の印象に残った。

「壮大なドッキリかと思った」というコメントも面白く、インタビューの受け答えからもスター性を感じさせる存在だった。

しくもその日は幡野の父親の誕生日でもあり、名物難ホール、かつ高額賞金、そしてデビュー戦とそれらを重ねる運を持った選手が現れたことで、とりわけ記憶に残る一打だった。

それから6年、今も幡野夏生はギャラリーの目を惹き、楽しませることに長けたエンターテイナーだ。その明るいプレースタイルに魅了されるファンも多く、あえて言えば、とてもプロ向きの選手だと言えるだろう。

しかし、現在の幡野が過ごしているプロ生活は、あのホールインワンを達成した頃に思い描いたものからは遠ざかりつつある。